「窓ぎわのトットちゃん」公開御礼ティーチイン付き舞台挨拶
- 公開後舞台挨拶
公開御礼ティーチイン付き舞台挨拶
女優、タレント、司会者、エッセイスト、ユニセフ親善大使などあらゆる顔を持ち、博識でありながら愛らしい人柄が広い世代から支持を集め、今もなおその姿をテレビで見ない日はない黒柳徹子さん。この度、自身の幼少期を自伝的に描いた「窓ぎわのトットちゃん」が初めて映画化され、公開後には絶賛の声があふれるなど大きな話題を呼んでいます。
12月14日、黒柳さんと八鍬新之介監督がTOHOシネマズ 六本木ヒルズで開催された公開御礼ティーチイン付き舞台挨拶に登壇しました。黒柳さんと八鍬監督はこの日、お客さんと一緒に場内で映画を鑑賞し、その後、黒柳さんにとって人生初となるティーチインイベントに挑戦しました。直接質問ができた人の中からは、黒柳さんとの対面に感動のあまり涙する人が続出。「窓ぎわのトットちゃん」や黒柳さんへの愛をぶつけると共に、黒柳さんが子どもたちと交流を図るなど、温かな雰囲気たっぷりとなったイベントの様子を詳しくレポートします!
黒柳徹子さん
原作
八鍬新之介監督
■八鍬監督が、真っ白なドレスを身にまとった黒柳さんをエスコートして登場し、大きな拍手を浴びました。
八鍬監督
ご来場の皆さん、「窓ぎわのトットちゃん」をご覧いただき本当にありがとうございます。私も、今日初めて徹子さんと、そして皆さんと一緒に鑑賞できたことをとてもうれしく思っています。
黒柳さん
私も、今日皆さんと一緒に観ました。いろいろなことを懐かしく思い出したり、また涙が出ました。あの頃の時代、世の中のことがとてもよく描かれていました。トットちゃんの明るいところはうれしいんですが、世の中がだんだん暗くなっていく時代だったものですから、そんなことを思い出してちょっと涙が出ました。あの本をどうやって映画にするのかなと思っていたんですが、今日(映画を)拝見してとても素敵でした。(八鍬監督に向かって)ありがとうございました。
八鍬監督
ありがとうございました。(会場:拍手)
MC
ここからは本作を観終えたばかりの皆さんと、徹子さん、監督で映画の感想を語り合う時間となります。映画を観ていて気になった点があれば、もちろん質問していただいても結構です。ちなみに徹子さんは、このような形でお客さんと直接お話ができるイベントというのは初めてだそうです。
黒柳さん
私、70年も芸能界にいるんですが、こういったイベントは初めてです(笑)。
MC
非常に貴重な機会となりますので、積極的に質問をしていただければと思います。
そして今日は一足早いクリスマスイベントとなります。壇上でコメントをしてくださった皆さんには、徹子さんからプレゼントがあるかもしれませんので、お楽しみに。ちなみに徹子さんにとって、クリスマスの印象深いエピソードはありますか?
黒柳さん
キリスト教の家だったものですから、教会に行ってクリスマスを過ごしていました。小学校低学年の頃は戦争中でしたが、教会ではいつもいらしている病気の方の家の窓の下に行って、クリスマスの歌を歌っていました。教会のコーラスグループに私も入っていましたので、副牧師さんに連れられてみんなと一緒に行きました。その日だけは夜遅くまで出掛けても良いという許しを得て、よその家に行ってみんなと一緒にクリスマスの歌を歌いました。私たちが歌い終わると、そのお家の方が窓を開けて、お湯の中に砂糖を入れた、甘いお湯を一杯ずつくださるんですね。戦争中ですから、食べ物もない時代なので、そのために取っておいてくださったんだと思います。それがとてもうれしくて、その晩は何軒もお家を回って歌いました。クリスマスというと、それが一番忘れられない思い出になっています。戦争が激しくない時は、呑気なクリスマスもやりましたが、すぐに戦争になってしまったので、子どもの時の楽しいクリスマスの思い出がないんです。本作の中には、戦争のこともとてもうまく、うまくと言うとおかしいかもしれませんが、きちんとお話の中に入っています。きっと戦争のことをご存知ない方も、何か感じることがあったと思います。
MC
それではお客さんからのご意見、ご感想を伺っていこうと思います。質問のある方は、手を挙げてください。指名された方は、ステージに上がって徹子さんの隣のソファに腰をかけてお話をしてください。
■「はい!」という元気な声を上げた子どもたちを始め、たくさんの手が挙がりました。その中で、お母さんと女の子二人(姉妹)のご家族三名が指名され、「やったー!」と大喜び。ステージに上がると、お母さんは、黒柳さんの大ファンのようで思わず号泣してしまいました。
MC
親子で本作を楽しんでいただけるというのは、うれしいことですね。
黒柳さん
とってもとってもうれしいことですね。
MC
お母さんは、涙が止まりませんね。お嬢さんから質問してもらいましょうか。お姉ちゃんは、今日「窓ぎわのトットちゃん」を観てどうでしたか?
姉妹のお姉さん
トットちゃんが泰明ちゃんに「本を大人になったら返す」と言っていたんですが、それは結局どうなりましたか?
黒柳さん
よく細かいことを覚えていましたね。泰明ちゃんは本を返す前に死んでしまったので、あの本は結局、返せなかったんです。まだ私が小学校の低学年の頃のことでしたね。ちょうどあなたの妹さんくらいかしら? 妹さんは何年生?
姉妹の妹さん
二年生です。
黒柳さん
泰明ちゃんが死んだ時は、ちょうどあなたくらいの歳だったと思います。「また今度会った時に返す」と私は言ったんですよね。「死んでしまったらもう会えないかもしれない」ということを、あまりよく分からず「今度どこかで会った時に返す」と言ったんです。だから、そのままになってしまって、結局持って帰って、家にずっとありました。
姉妹のお姉さん
ありがとうございます。作品は、全部に感動しました。「続 窓ぎわのトットちゃん」と「窓ぎわのトットちゃん」の本があって、「続 窓ぎわのトットちゃん」はお父さんに買ってもらって読みました。「窓ぎわのトットちゃん」もとても面白かったです。とてもお気に入りです。
黒柳さん
どうもありがとう。
姉妹の妹さん
泰明ちゃんはどんな病気だったんですか?
黒柳さん
小児麻痺という病気です。お話ができることは良かったんですが、いろいろなところが動かなくなっちゃうんです。足もちゃんと動かないし、手、指も動かない。手を繋いでも、片方の手は大丈夫でも(泰明ちゃんの)右の手の指などは動かなくなっていました。小児麻痺というのは、そういう病気なんです。
姉妹の妹さん
聞きたいことがあるんですが、良いですか?
黒柳さん
良いですよ。
姉妹の妹さん
お母さんから、「徹子さんの頭には飴が入っている」と聞きました。今も入っていますか? (会場:笑)
黒柳さん
(まとめ上げた髪をゴソゴソと触る)
姉妹の妹さん
入っているの…?
■黒柳さんが頭から飴を取り出して、妹さんにプレゼントしました。(会場:笑&拍手)
姉妹の妹さん
ありがとうございます! うれしいです!!
MC
ちょっと(飴が)もらえるかなと思って質問したところもあるのかな(笑)?
姉妹の妹さん
それもちょっとあるかな。(会場:笑)
MC
お母さんはいかがですか?
姉妹のお母さん
うちの娘はすごく育てにくくて、毎日「トモエ学園に行きたい」と言うんです。もうトモエ学園はないのに(小学校)三年生の時に「電車の学校に通いたい!」と言われて、同じような学校がないかと探したりもしました。この本に出会った娘は、校長先生から「君は、ほんとうは、良い子なんだよ」と言ってもらったトットちゃんを見て、それを自分に重ねて「私も『君は、ほんとうは、良い子なんだよ』とずっと言われたかった」と言っていました。トットちゃんと自分を重ねながら成長している様子を見て、娘がこの本に出会ってくれて本当に感謝しています。
本作を通して、またいろいろと感じたこともあると思うので、帰って感想を聞くのが楽しみです。小さな頃に観た映画は、大人になってから観るとまた一味違って観えたり、今は勘違いしているところもきっとあると思うんですが、成長していくと共に、子どもたちも本作をそうやって観てくれたら良いなと思っています。本当にありがとうございました。
黒柳さん
(姉妹のお姉さんに向かって)あなたは何年生ですか?
姉妹のお姉さん
四年生です。
黒柳さん
監督に何か質問はありますか?
姉妹のお姉さん
何も考えていませんでした(笑)。(会場:笑) とにかく会えたことがうれしかったです。
黒柳さん
私と会えたことがうれしかったの? それは一番うれしいこと。私もお会いできたことが、とてもうれしいです。
姉妹のお母さん
戦争のシーンがありましたが、子どもたちは耳を塞ぎながら「ちょっと怖い」という印象で観ていたかもしれません。いろいろな年代の人が観る作品ということで、ソフトに描いた部分もあるのかなと感じましたが、そういった点で注意したことはありますか?
八鍬監督
原作もそうだと思いますが、映画でも全ての世代の方がしっかりと観ることができる作品を目指していました。他にも太平洋戦争を舞台にしたアニメーション映画はたくさんあります。「窓ぎわのトットちゃん」に関しては、小さな子どもが戦争を知るきっかけになってほしいなと思いながら作ったので、凄惨な描写は少し抑えています。
姉妹のお母さん
(娘たちを見ていると)怖がりながらもちゃんと観ようとしている姿勢を感じられて、「この時代には楽しいこともあったけれど、こういうこともあったんだ」と、なんとなく肌で感じながら観てくれたのかなと思っています。親としても戦争を知るきっかけの一つとして、すごく良かったと思っております。ありがとうございます。
MC
ありがとうございました。徹子さんからクリスマスプレゼントがあります。
黒柳さん
みんなで分けてね。(会場:拍手)
■若いご夫婦が指名され、ステージに上がりました。黒柳さんグッズを身につけた女性は、対面に感激しきりで、涙を流しました。
ご夫婦の女性
小さな頃に「窓ぎわのトットちゃん」に出会って、そこからいろいろな場面でずっと勇気をもらっています。「窓ぎわのトットちゃん」をずっと心の宝物のようにしています。今回そういった作品が自分の心の中に増えて、本当にうれしく思っています。今日はお会いできて本当にうれしいです(感涙)。
黒柳さん
ありがとう。そう言っていただけて本当に良かったです。(八鍬監督に向かって)良かったですね。
八鍬監督
すごくうれしいですし、安心しました。原作が大好きな方には、ご自分の中のイメージがあると思うんですが、それでも納得していただける作品になっていればうれしいなと思っていました。
ご夫婦の女性
原作の「窓ぎわのトットちゃん」は私の大好きな作品です。黒柳徹子さんにとって、大切な映画や本などはありますか?
黒柳さん
「窓ぎわのトットちゃん」にも出てくる本ですが、「アンクル・トムの小屋」という本があります。捕まって、売られていく黒人の人の話なんですが、私は小さな頃にそれを読んですごく悲しかったんです。お金を出して人間を買うなんて…、しかもそこで一生働かなければいけないなんて「何ていうことだろう」と、とても悲しく思いました。そういう思い出があったので、この本のことも「窓ぎわのトットちゃん」にちょっと入れました。
ご夫婦の女性
私も明日、すぐに読んでみたいと思います。ありがとうございました。
ご夫婦の男性
僕も、妻の勧めで原作を読みました。本作を観るのも今日で二回目です。僕はもう大人ですが、原作も映画も「こんな大人になりたいな」と思うような登場人物がたくさん出てきます。どのシーンも、これから生きていく上で励まされているような気持ちになりました。
監督さんに質問ですが、原作には徹子さんによる「その当時は分からなかったけれど、今は校長先生の意図がわかる」という心の声が入っています。でも、本作では淡々と素敵なシーンが続いていき、そのシーンに込められた意図や徹子さんの思いは、本作を観ている側が考えるような仕組みになっていました。そこがすごく素敵だと思ったんですが、その辺りのこだわりについてお聞きしたいです。
八鍬監督
実はそこは、とても迷ったところです。最初は徹子さんご本人にナレーションをお願いできるか分からなかったのですが、“シーンごとに徹子さんのナレーションが入る”という構成も一度は考えてみたんです。でも、小説から映像にする意味を考えると、できるだけ言葉に頼らずに、映像と行動で描写するのが正しいかなと思いました。そこで最初と最後だけ、徹子さんにナレーションをお願いしました。
MC
ありがとうございました。では、徹子さんからのクリスマスプレゼントを受け取っていただきましょう。
黒柳さん
ご夫婦ですか? (うなずくご夫婦)あら、そうですか。良いご結婚で良かったですね。お若いのに結婚されて、うまくいって良かったです。お幸せにね。(会場:拍手)
■お母さんと女の子の親子が指名され、ステージに上がりました。
親子の娘さん
こんにちは。(黒柳さんに)トットちゃん、大好きだよ。
黒柳さん
私のこと大好き? 本当? どうもありがとう。そう言っていただくと本当にうれしい。
親子の娘さん
(黒柳さんに)ドレス、可愛いね。
黒柳さん
ドレス、可愛い? なるべく可愛くしようとしているのよ。(会場:ほっこりとした笑)
親子のお母さん
今は子どもを育てているので、教育というものにすごく興味があります。今日本作を拝見して、そういったところもすごく考えさせられることがありました。楽しいだけではなく、戦争も含めていろいろな要素が散りばめられているところもとても素晴らしい作品だと思いました。
まだ四歳ということもあって、娘はすごく自由奔放で、トットちゃんと重ね合わせてしまうところもあります。徹子さんが幼い頃は「困った子」と言われていたというセリフがありましたが、そういった時にご両親はどのように対応してくれましたか?
黒柳さん
うちではあまり「困った子」と言われなかったんですが…(と切り出しつつ、自由にソファに転がったりする娘さんを見て)ちょっとあなた、(会場:爆笑)お名前は?
親子の娘さん
エナです。
黒柳さん
そこにちゃんと座っていてね。お利口ね、ちゃんと座れるじゃない。座っていてほしいのは、あなたが寝転がるとみんなにお尻が見えちゃうの。(会場:爆笑)
(娘さんの視線が頭の方に向けられているのに気づき)飴? (会場:爆笑)
■黒柳さんは再び頭から飴を取り出し、娘さんにプレゼントしました。
親子の娘さん
(飴を受け取り)何で、頭に飴が入っているの?
黒柳さん
私はね、頭から飴が出てくるのが好きなの。
親子の娘さん
今、食べたいなあ。(会場:笑)
黒柳さん
食べても良いけれど、食べるとなくなっちゃうわよ。それでも良いなら食べちゃえば?
私は、子どもって本当にすごいと思うんです。みんなが思っているより、いろいろなことが分かっているんですね。今、この壇上に上がって来て、自由に質問をするのは、やっぱり小さいからこそできるんだと思います。もう少し大きくなってしまうと、恥ずかしくてあまり質問もできなくなるかもしれないですからね。
(飴に夢中な様子の娘さんを見て)どうしちゃったの? 飴に夢中? (会場:笑) 「飴を食べるとなくなっちゃう」と言ったから悩んでいるのね。でも食べたいなら、食べちゃえば?
親子の娘さん
食べたい。(飴を食べ始める)
MC
飴もありますが、徹子さんからもう一つクリスマスプレゼントがあります。
黒柳さん
これどうぞ。プレゼントです。
親子の娘さん
ありがとうございます。うれしかったです。飴も美味しいです。
■女性が指名され、ステージに上がりました。
女性
原作ももちろん読んでいるんですが、徹子さんの小さな頃の楽しいエピソードがいっぱいで、全部に感動しました。
質問ですが、子ども時代のエピソードを書き残そうと思われたきっかけは、どのようなものだったのでしょうか。
黒柳さん
私は日記もつけていなかったので、「窓ぎわのトットちゃん」を書く時は、その前に書いていたものなど何もなかったんです。ただ、小林校長先生のことを書いておきたかったんです。後の世になっても本を読んで「こういう先生が良いな」「こういう先生になろう」と思う方がいたら、どんなにか良いだろうと思いました。だから、「小林先生のことを書こう」と思った時に、「窓ぎわのトットちゃん」という題名が頭に漠然と出てきました。先ほどの女の子は、四歳でしたね。四歳ってあれくらいなんだと思います。私は四歳、五歳くらいの頃からいろいろと小学校のことなどを考えて、六歳ぐらいの頃には、小林校長先生のことが大好きでした。そんな先生のことを皆さんに知っていただかなければと思って「窓ぎわのトットちゃん」を書きました。本当は「窓ぎわのトットちゃん」というのは、どうでも良くて、校長先生のことが書きたかった。「私のこともついでに書いておこうか」と思って、自分のことは書きました(笑)。
女性
校長先生のお言葉もそうですし、徹子さんのエピソードも本当に多くの方に勇気と希望を与えていると思います。
黒柳さん
そうおっしゃっていただくと、うれしいです。私は初めて入った学校では、小学校一年生の時に退学になった人間なんです。割と良い進学校で、家から近かったのでそこに入ったんです。そういった進学校の先生からしてみると、私のような子どもは本当に困ったと思います。そこで母が自由が丘にあった、トモエ学園を探して来てくれました。そこで、小林先生に出会えて私は本当に運が良かったと思います。もし出会っていなかったら、「あなたはダメな人だ」と言われたまま大人になっていたんだと思います。そう言われていたらきっと、大人になってもダメな人になってしまったと思うんです。けれど小林先生から「君は、ほんとうは、良い子なんだよ」と言われたので、自分は良い子なんだと思い込んでいたんです。そういった意味では、前の学校を退学にならずに、いろいろな人からガミガミ言われていたら、今頃はひねくれた人間になっていたと思います。前の学校が私を退学にしてくださらなかったら、私はこうなっていないので、ラッキーだなと思います。
ただ、先生というものは、あまりいろいろなことを覚えていないんだと思ったことがありました。今から二十年ほど前に、私を退学にした先生からお手紙が来たんです。先生は、私を退学にしたことは全く覚えていませんでした。結核療養所のようなところに入っていらして、そこにいらっしゃる方たちと「毎日あなたのテレビを観ています」というお手紙をくださいました。その施設のことを調べてみたら、テレビが一つくらいしかなかったので、テレビをお送りしました。そして、先生にお手紙も書きました。先生が、私を退学にしたことを忘れているのは、それで良かったと思っています。先生はそこで幸せにお暮らしになったようでした。
MC
先生からのお手紙には、退学のことは全く記載されていなかったんですね。
黒柳さん
全然書いていなかったの! (会場:笑) 先生は私を退学にしたことは覚えていなかったと思います。だから、そのことについては書いていませんでした。忘れちゃうんじゃないの(笑)?
女性
監督にもおうかがいしたいんですが、多くの方が原作を読まれていると思います。本作によって、原作をまだ読んでいない方にもさらに広く「窓ぎわのトットちゃん」が知られるようになると思うんですが、今回、映画にしたいと思われたきっかけを教えてください。
八鍬監督
社会ではいろいろな事件が起こりますが、自分の子どもたちが大人になった時に、泰明ちゃんやトットちゃんのように、他人に思いやりのある社会になっていってほしいと思っていました。その時に原作となる作品を探していて「窓ぎわのトットちゃん」に辿り着きました。意外と、思いやりの心って忘れていることだと思うんです。改めて、この作品をしっかりと映像化できれば、もう一度、思いやりについて捉え直していただけると思って企画しました。
MC
徹子さんからのクリスマスプレゼントを受け取ってください。(会場:拍手)
それでは最後に、質問をしてくださった皆さんと一緒に写真撮影をしたいと思います。
■質問者が全員ステージに上がり、黒柳さんを中心に賑やかにフォトセッション! 黒柳さんはうれしそうに、皆さんと会話を交わしていました。
MC
最後に、黒柳さんからご挨拶をお願いします。
黒柳さん
私が書いた「窓ぎわのトットちゃん」を「映画化させてください」という話は、出版されてすぐにありました。でも、私はどうしても読んでくださった方のイメージが一番良いだろうと思い、「これは映像にはしないんです」とずっと言ってきました。今回「これをアニメーションにしたい」というお話をうかがって、アニメーションだったらちょっと違うかもしれないと思いました。そこで(八鍬)監督の作品を観て「この監督なら大丈夫かもしれない」と思い、お願いしました。今日本作を観て、純粋なものがだんだん損なわれている時代に、純真なものや優しさ、そういったものがよく描かれていてうれしいなと思いました。監督にお礼を申し上げたいです。それはきっと観てくださった方もそう感じただろうと思います。お優しい方が多くて、先ほどステージにいたお一人の方が「100歳まで生きてくださいね」とおっしゃいました。それはとってもとってもうれしかったです。ありがとうございます。(会場:拍手) 生きるつもりでいます。100歳まで生きますので、皆さんも長生きなさってね(笑)。私がテレビに出たりしているのを観てくれたらとてもうれしく思います。ありがとうございました。(会場:拍手)
八鍬監督
映画が公開されてから、実はお一人のトモエ学園出身の方からお手紙をいただきました。その方は最後までトモエ学園にいたわけではなく、途中で国民学校に転校されたそうです。転校した先で教育勅語や、それまでトモエ学園になかったものを叩き込まれてすごく戸惑ったらしいんです。その方は戦争中、戦後も、自分がトモエ学園にいたことをその当時は恥ずかしく思っていたそうです。ただ、徹子さんが「窓ぎわのトットちゃん」を出版をされた時に「誇りに変わった」「本当に感謝しています」というお手紙をいただきました。本作もそうですが、きっと戦争中、戦後は、自由な教育について表立って言えないような時代だったと思います。本作も含めて、誰をはばかることなく、自由を描いた作品が上映できる時代が続くと良いなと思っています。
黒柳さん
皆さん、本当に本作を観てくださってありがとうございました。皆さんも「長生きしてください」とおっしゃった方と同じ思いだと思います。私は長生きしますので安心してください(笑)。
今、こういう作品を作る方は少ないと思うんです。これだけ穏やかで優しくて、子どものことをよく分かっている大人のことを描いているものは少ないと思います。どうぞ宣伝して、たくさんの方にご覧になるよう言っていただいて、ぜひたくさんの方に観ていただけるようにしていただきたいと思っています。今日は本当にうれしい日でした。ありがとうございました。(会場:拍手)