「すずめの戸締まり」御礼“お返し申す”舞台挨拶
- 公開後舞台挨拶
御礼“お返し申す”舞台挨拶
新海誠監督最新作「すずめの戸締まり」の大ヒットを記念して11月28日、東京・日比谷のTOHOシネマズ 日比谷にて「すずめの戸締まり」御礼“お返し申す”舞台挨拶が開催されました。
イベントには新海監督をはじめ、声優を務めた原菜乃華さん、松村北斗さんが登壇しました。事前に集められた質問に登壇陣が答える質疑応答では、芹澤朋也役で出演した神木隆之介さん本人からの質問が届くサプライズが! さらにサプライズゲストとして、ダイジン役の山根あんさんも駆け付けるなど大きな盛り上がりを見せたこちらの舞台挨拶の模様をレポートいたします。
新海誠監督
原菜乃華さん
岩戸鈴芽役
松村北斗さん
宗像草太役
新海監督
お忙しい中、わざわざ足を運んでいただき感謝いたします。二時間の映画を観た後でお疲れかと思いますが、三人で楽しい時間にできればと思います。どうぞ一緒に楽しみましょう。
原さん
本日はお越しいただきありがとうございます。こんなにたくさんの方がこの「すずめの戸締まり」という作品をご覧くださって、本当に感謝しかないです。本日は短い時間ですが、よろしくお願いします。
松村さん
ここに入ってきただけで、皆さんのこの作品に対する熱量とか、ふつふつとわき上がってくる思いをすごく感じて、それを受け取っています。このイベントのタイトルのように「お返し申す」――皆さんのこの熱量にお返しができるような時間にできたらと思います。
MC
昨日までの17日間で観客動員数460万人、興行収入62.2億円の大ヒットです。
新海監督
ちょっと数字が大きすぎてピンとこないですね。前にもお話したことがありますが、僕はデビュー作が50人の小さな劇場で上映された自主制作映画でした。あの時の50人の拍手でも、本当にその後の人生が変わるくらいのインパクトでした。それが、460万人…? 本当に分からないんですが、ここにいる方も二回目、三回目という方もいると思いますし、ここまで本作に付き合ってくださって心より感謝しております。嬉しいですよね?
松村さん
すごい数字なので、僕らもピンと来ないですよね。
原さん
来ていないです。
松村さん
嬉しい意味でピンときてないです。
やはり新海さんがこの作品にはこういう声が必要で、こういう画が必要で…と、かき集めたものに僕らも混ぜてもらった感じでした。僕も原さんもどっちかというと観客目線もあるので…。
原さん
そうですね。一観客としても、出演者の一人としても、本当に特別な作品なので、皆さんにとって特別な作品になっていると思うと嬉しいです。
松村さん
一人でも多くの人にこの作品が届けば良いなと一人の新海ファンとして思っています。
MC
今、日本全国を回りながらキャンペーンを行なっていますが、印象的な場所などはありましたか?
新海監督
北斗くんとは、つい最近は、博多でご一緒して楽しかったです。その前に、北斗くんと一緒だったのは神戸・大阪で、その前は菜乃華さんと一緒でしたね。
僕が印象深かったのが、公開から日が経つにつれて、特に東京から離れるにつれて、会場にいらっしゃる観客の層、年齢が幅広くなっていくのが日に日に分かりました。博多もそうですが、最後の宮崎とかは、70代の方から小学校低学年の方まで来てくださいました。こんな風に広がっていくんだというのが目に見えて、すごく幸せでした。
原さん
私は宮崎に深津(絵里)さんがサプライズで来てくださったのが…。
新海監督
深津さんが来てくださったんですよ。
松村さん
ウワサではかねがね。SNSで拝見しました。
新海監督
(SNSを)見ているんだね(笑)。
松村さん
僕ね、仕事の都合で行けないことが悔しくて、日々追っていますんで! 「気持ちだけは届け!」と思いながら。
新海監督
ありがとう。ときどきLINEもくださって…。近くにいてくれているんだと感じています。北斗くんがいない時はここ(※新海監督と原さんの間)に椅子を置いてね。
原さん
草太さんがいてくれると思って…。
松村さん
(SNSでみたので)深津さんのことも知っていました。
新海監督
びっくりしましたね。
原さん
びっくりしました! 輝いていました。まさか、またお会いできるとは思っていなかったので…。
新海監督
そうですね。完全サプライズでした。
松村さん
そうだったんですか? 全然事態が分かっていなくて…。
新海監督
そうなんです。そのためだけに宮崎に来てくださったんです。本作のスタート地点が宮崎ということで来てくださったんです。会場の皆さんもどよめいていました。印象深かったですね。
北斗くんは舞台挨拶はどうでした?
松村さん
最初に行った神戸・大阪はすごくスタートダッシュとして気持ち良かったです。作中で出てくる景色も見られて充実した日になりました。
新海監督
北斗くんが一緒の時は、北斗くんのファンも来てくれるじゃないですか。僕たちだけで作った作品だと届かなかったところにも作品を届けてもらえています。それに、ファンの方とはすごく親密な関係性が出来上がっているんだと感じました。会場の皆さんに「そういうことしない(笑)!」とか怒ったり、すごくキュートで良い関係がここにもあるんだと思って「良いな」と思っています。
松村さん
そう言っていただけて救われます。ありがとうございます。
新海監督
我々は明日は岡山と…。
原さん
広島です!
松村さん
(一緒に行けなくて)ごめんね。もちろんSNSに張り付いてますよ、はびこっていますんで、僕(笑)。
MC
本作について様々な疑問や解釈についての質問をいただいています。
事前にこの作品について気になることなどの質問を集めてみました。短い時間でしたが、全国から約1300件の質問が集まりました。それにお答えいただきたいと思います。
質問1
高校一年です。学問により舞台挨拶に行けなくて残念ですが、この機会に質問をさせてください。
草太さんは、鈴芽のことが好きなんでしょうか? 鈴芽は「好きな人」と言っていましたが、草太さん的には鈴芽のことは「命の恩人」と思っているのかな?と思いまして…。
新海監督
どう?
松村さん
僕ですか(笑)? じゃあ、僕の希望というか、「こういう未来があっても良いな」と思ったのは、「彼氏彼女」と言うとちょっとしっくりこない感じがしています。そういう恋心を超えた何か――僕らでは理解しえない強い絆で結ばれた、夫婦みたいなものならちょっと想像がつく二人だなと思います。「恋心より強い何かで結ばれた夫婦」だなと思い、その後のことを考えていました。
新海監督
遠い未来に二人が夫婦というのはちょっとドキドキする…。であれば、そういう未来があったら美しいなと僕も思います。
菜乃華さんは?
原さん
二人は人生のパートナー感があるとずっと思っていました。
新海監督
夫婦だね(笑)。
原さん
恋愛を超えた愛情、ないものをお互いに補い合える、「人としての大きい愛情」が強い二人なのかなとは思いました。
新海監督
「付き合ってください」って感じではなさそうですよね。僕も二人と同じような思いで、鈴芽にとって草太さんは憧れではあるんですよね。未知の相手というか、異性としてもそうだし、椅子になっちゃったりもするし、閉じ師としてもそうだけれど、人生の巨大な未知で、「あの人のことをもっと知りたい」「これって恋なのかな?」という気持ちは鈴芽にはあると思います。
草太って椅子になっちゃうじゃないですか? 椅子になった時はすごく心細いし、「この先の人生どうなっちゃうんだろう?」って思ったけれど、鈴芽は草太に触ってくれるし、ギュッと持って抱きしめてもくれる…。そのうち、椅子に座ったり乗ったりもする。草太はそれがすごく嬉しかったと思うんです。「動く椅子」っていうのは、結構気味の悪い存在だと思うのに、それに乗って「温かい」と言ってくれたり、時に「起きてよ!」と乱暴に扱ったり…。そういうのを含め、草太は鈴芽に眩しいものを感じて「あぁ、この子は特別なんだ」と思えて、そういう関係なのかなと思ったりします。
質問2
草太さんが扉を閉じる時の、祝詞のようなセリフは現代語訳するとどのような意味ですか? 元ネタはあるんでしょうか?
新海監督
元ネタは特にないです。神社であげられる祝詞のバリエーションみたいなものや、祝詞について簡単に調べた上で、この作品のために自分で考えました。
「かけまくもかしこき、ひみずのかみよ…」と何度も言うシーンがありますが、「ひみずの神」って一つには「火と水」という世界のすべて、あとは、「日が見えない」で「ヒミズ」なので、地下にいるミミズのことを表したりもしています。つまりは、「大地」そのものなので、そこの部分は大地そのものに呼びかけています。「うぶすな」というのは、土地そのものなので「遠い先祖である僕たちそのものよ」ということです。ずっと人間が借りてきたこの山や川を謹んでお返し申す――「人がいなくなってしまったので、僕たちはもうここにいることはできません。あなたたちにお返ししますので、鎮まってください」と大地に言っているイメージで祝詞を作りました。
草太さんがこの言葉を必殺技のように唱えているのは、鈴芽はちょっとうらやましかったと言っていましたね?
原さん
そうですね。「お返しします」と言う前に、草太さんが「お返し申す」のバリエーションを探っている時に新海監督が「決めゼリフっぽく」と言っていたんです。「天気の子」の「今から晴れるよ!」だったり、「君の名は。」の「入れ替わってる!」だったり、そういう作品の決めゼリフがあったら良いなと思っていたので、隣で聞いていてすごくうらやましかったです!
質問3
私は、「ダイジンなんてキライ!」と思っていましたが、悲しそうに歩く姿にジンと来ました。北斗くん、菜乃華ちゃんはダイジンについてどう思いますか?
原さん
私は“最推し”がダイジンなんです。あのかわいらしさゆえの怖さがあるし、あのかわいらしさだからこそ許せてしまうところがあって…。「やっと二人きり」って鈴芽の足にすり寄るしぐさや、表情の全てがかわいくて…。危うく許してしまいそうになる感じが愛おしいです!
新海監督
ダイジンね。こんなに皆さんに愛していただけるとは、意外でした。ダイジンは猫の姿を借りていますが、一応、神様のような存在なんでね。でも、みんな完全に猫として見ていて「猫ちゃん頑張れ」「猫ちゃんかわいそう!」とか言っていて、そうか、猫か…と(笑)。
北斗くんはどうですか?
松村さん
僕が面白いと思ったのは、ダイジンって鈴芽の17年がギュッと移されているようなキャラクターだなと…。もしかして、ダイジンが姿を現すきっかけとなったのは鈴芽の存在じゃないですか。なので「触れる人によって性格とかいろんなものが変わる存在」でもあるのかと思いました。人の影響を受けて、人の上にいる神じゃないけれど、人のものを吸い上げているように思えました。
新海監督
確かに、鈴芽じゃない人がきっかけをつくっていたら、また違う姿になっていたかも…。そんなイメージは何となく抱いていました。ダイジンって役割を負った神様のような存在ではあるけれど、鈴芽のとった行動によって「束の間の自由」を得ます。自分が果たさないといけない役割は分かっているけれど、「子どものような神様」のイメージもあります。自分を解放してくれた人が好きだし、もっと自由になりたいし、束の間の自由であってももっと遊びたいし、鈴芽と二人きりになりたいから「草太、邪魔」という気持ちで、一時的に草太を椅子の姿に変えてしまったんだと思います。
ある種ワガママで、人間から見たらどういう気持ちか分からない「気まぐれで自然なイメージ」が「気まぐれな猫」っていうイメージとつながって、ダイジンというキャラクターができました。
質問4
芹澤の車で移動中、懐かしい曲が流れていましたが、あれはどのような基準で選んだのでしょうか?
新海監督
あの曲は二人とも分かった?
松村さん
曲自体はもちろん。
新海監督
(二人とも)世代じゃないでしょ? どこで聴くんだろうね?
松村さん
音楽番組…いわゆる「懐メロ」ってジャンルで僕らは…。
原さん
耳にしたことはあります。
新海監督
そうか。芹澤のプレイリストは僕が選びました。芹澤はシチュエーションに合わせて、劇中でも「ゲストに合わせて(曲を)選んでるんだけどな」って言っていますが、その場を彼なりに和ませようとした不器用な思いやりなんでしょうね。
環さんは年上なので、ちょっと懐かしのメロディをかけておけば、「この人は好きなんじゃないか」って…。でも、環は40歳の設定なので、あの昭和の名曲は環からしてもちょっと上なんです。その辺の感覚は(原さんや松村さんたちのような若い世代の子には)ちょっとよく分からないと思うけれど、芹澤も同じような感覚で「大人ってこんな曲を聴いていたのかな」という解像度の低さで芹澤のパーソナリティを表したつもりでした。
すごく楽しい、演出をしていて楽しいシーンでした。神木くんにフルコーラスで歌ってもらったけれど、ちょっとしか使わないとか(笑)。
松村さん
ただ(神木さんの歌声を)聴きたいだけ(笑)。
新海監督
ちょっと歌わせてみたかった(笑)。でも、神木くんも古い曲なのでよく知らないわけじゃないですか。「けんかをやめて」(1982年リリース/歌:河合奈保子)とか、よくは知らないでしょ?
松村さん
「全部歌え」って言われたら…。
新海監督
神木くんも音程がすごくあやふやで、使えるテイクだけ使いました(笑)。
MC
最後の質問は東京都在住・芹澤朋也さんからの質問です。
質問5
僕の友人に俳優をやっている神木隆之介がいて、彼についてどう思いますか?
P.S. 2万円返します。
松村さん
チョケすぎ(笑)。
新海監督
分かりにくいですね(笑)。
MC
こちらご説明しますと、神木隆之介さんご本人からいただきました。「僕の友人の神木隆之介についてどう思いますか?」と直球質問が来ていますが皆さん、いかがでしょう?
新海監督
「2万円返します」って言われても、貸していないよね。僕らに返されても…。
松村さん
僕らに返されてもね(笑)。これ直訳すると神木くんが「僕のことどう思います?」って聞いているってことですよね(笑)。
僕は、オーディションに参加することになって一番最初にアドバイスをもらいました。声優さんではない僕が、声優業に足を踏み入れるっていうのはどういうことか、教えてくれたのが神木くんでした。アフレコに入ってからもアドバイスをもらったので、コーチ的な感じではありますね。神木先生(笑)。学校で一番仲の良い先生って感じはありますね。優しいんですよ。
原さん
アフレコでお会いした時、すごく緊張してしまったんですが、すごく優しくて、好きなアニメの話をしたり「あのアニメのグッズ、僕持ってるんだ」などという話をしてくれたり…。あと、鈴芽って「あっ…」っていう声が多いんです。そのバリエーションで、息を吸うパターンと吐くパターンがあるんですが、そういう技術的な面でもアドバイスをいただけてとてもありがたかったです。
新海監督
僕が神木くんに初めて会ったのは「君の名は。」のアフレコの時でした。あの時、神木くんは「3月のライオン」(2017年公開/主演:神木隆之介)という映画を並行してやっていました。すごく疲れていて、アフレコの合間にスタジオでよく寝ていたのを思い出しました。今思えばずいぶん余裕だなぁ…って(笑)。もちろん、本人は必死なんだろうけれど、神木くんの底知れなさを思い出しました。
原さん
頼りがいのあるお兄さんです。
新海監督
僕にとって、神木くんは芹澤とどこか似ている感じがしています。芹澤ってあんなチャラい感じなのに、「あいつは自分のことを粗末に扱い過ぎ」って、本当に草太のことが好きなんですよね。そういう不器用な友情の示し方が似ているなって思いました。
この前、映画が公開されてしばらく経ってから、反響が心配で夜眠れずに大衆居酒屋のカウンターでお酒を呑んでいたんです。そしたら、たまたま神木くんと連絡を取って「監督、今何やっているんですか?」って…。「一人でカウンターで呑んでる」って言ったら、その場に駆けつけてくれて二時間くらい、僕は一人でカウンターで飲んで、神木くんはその横でラーメンを食べていました。そういう風に本当に友達を自然に心配してくれるところが芹澤っぽいと思います。
MC
さて、本日はお三方にも内緒で“ある方”にお越しいただいています。
山根あんさん
ダイジン役
山根さん
(ダイジンの声で)すーずめ! (草太に)お前は…邪魔!
■山根さんが登壇し、会場は大きな拍手に包まれる。
新海監督
久しぶりだね。
山根さん
お久しぶりです!
新海監督
嬉しい。来てくれて。
原さん
嬉しいー!
■山根さんから新海監督に花束のプレゼント!
新海監督
ありがとう。嬉しい、ビックリした! まさか会えるとは…。
松村さん
初めまして、宗像草太役の松村北斗です。
山根さん
初めまして、ダイジン役の山根あんです(笑)。
新海監督
そうか! 二人は映画の中だと敵同士だったからね。
松村さん
アフレコの時にはお会いしなかったんでね。
新海監督
そうだったね。あんちゃんの声を先に録ったんだよね。(椅子の姿の)草太に上に乗られるシーンで、すごく苦しそうな芝居もやってくれて、すごく良かったです。
山根さん
ありがとうございます。
原さん
アフレコの時、猫ちゃんの靴を履いていて、髪をふたつ結びにして猫の耳みたいにアレンジしていて…。アフレコ期間中、ひたすら、あんちゃんとの写真ばかりとんでもない量を撮らせてもらいました。時々見てニヤニヤしています。本当に嬉しいです。
松村さん
地の声がダイジンの声なんですね。
新海監督
そうなんです。全然加工とかしていなくて、あんちゃんの声そのままなんだよね?
松村さん
ここ(喉)にエフェクタ入れてるの(笑)? すごくね!
山根さん
あははは(笑)。
松村さん
笑っちゃうよね(笑)?
MC
あんちゃん、“生”北斗くんはいかがですか?
山根さん
「カッコ良い」としか言えません。
松村さん
えー! もう、やめてよー(笑)!
新海監督
良いなぁ(笑)。
でも、まさか東京で会えるなんて思っていなかった。しかも、みんなで…。嬉しいです。来てくれてありがとう!
山根さん
みんなに会えて嬉しいです。
新海監督
僕も嬉しいです。