映画『少年と犬』初日舞台挨拶
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初日舞台挨拶
ノワール小説の旗手として日本の文学界の先頭を走り続ける馳星周さんが2020年に発表し、第163回直木賞を受賞し、現在までに累計発行部数55万部を突破している名作「少年と犬」(文春文庫)をベースに、実写化した映画『少年と犬』が3月20日より公開となりました。
3月20日に本作の初日舞台挨拶が、TOHOシネマズ 日比谷にて実施され、主演の高橋文哉さん、西野七瀬さんをはじめ、伊原六花さん、木村優来くん、宮内ひとみさん、瀬々敬久監督が登壇し、初日を迎えた気持ちや、劇中のシーンに絡めて「心にある大切なこと」を語りました。また、犬の多聞役を演じたジャーマンシェパードドッグのさくらもかけつけた、こちらのイベントの様子を詳しくレポートします。
高橋文哉さん
中垣和正役
西野七瀬さん
須貝美羽役
伊原六花さん
中垣麻由美役
木村優来くん
内村光役
宮内ひとみさん
内村久子役
瀬々敬久監督
■高橋さんがリードを手に、犬のさくらと共に登壇しました。
高橋さん
本作を観た直後なので、まだ瞳がうるんでいる方もいますね。皆さんのお顔を見て、「初日を迎えたんだ」と実感しています。すごくうれしいです。
西野さん
今日を迎えることを、とても楽しみにしていました。楽しい時間にできれば良いなと思います。
伊原さん
「いよいよこの日が来た」という感じです。完成披露から今日まで、あっという間でした。今日は皆さんと感想を共有しながら、いろいろな方に本作の魅力を届けられたら良いなと思います。
木村くん
今日は本作をご覧になっていただきありがとうございました。とてもうれしく思います。
宮内さん
私にとってもすごく大切な作品になりました。たくさんの方に観ていただき、愛してもらえたらうれしいです。
瀬々監督
本作は、かなりチャレンジングな話になっているので、びっくりされた方もいるかと思います。なので、ものすごく緊張しております。ご覧になった皆さんが、もし本作を面白くないと思ったら、それはすべて僕のせいです。
高橋さん
(「面白くない」なんて)そんなことはないです!
(今日は珍しく落ち着きがないさくらの様子を見て)初日を迎えられて、うれしくて、ボルテージが上がっているみたいです。
高橋さん
(さくらの様子を見て)初日を迎えてうれしくて、ボルテージが上がっているみたいです。
西野さん
アゲアゲですね。舞台に出る直前まで、六花ちゃんと遊んでいたもんね。
伊原さん
出てくる直前に、衣装のスカートをなめられて、ビチョビチョになりました(笑)。アゲアゲですね。
MC
初日を迎えた、今のお気持ちを教えてください。
高橋さん
撮影から一年が経ちましたが、撮影当時は、宣伝でこんなにたくさんの場所を周るとは思っていませんでした。西野さんとは、いろいろなバラエティ番組や生放送番組に出演しましたし、さくらは舞台挨拶にも一緒に出てくれました。さくらは本作の核となる多聞を演じてくれて、僕たちは、トリプル主演だと思っています。さくらも「今日は一緒に初日を迎えられてうれしいワン!」と言っています。
西野さん
初日を迎えられて、すごくうれしいです。皆さんに、こちらから押し付けるのは嫌だったので、これまでどういったことが届けたい作品なのかはあまり話さずに宣伝をしてきました。今日からは、皆さんの感想から「皆さんに何が届いたのか」を見ることがすごく楽しみです。
MC
お二人は、見ない日がないくらい、番組に出演されていましたね。
西野さん
バラエティ番組に出演することが少ないので、友だちからも「見たよ」って連絡をもらいました。
MC
監督、ようやく公開日を迎えた今のお気持ちはいかがでしょうか。
瀬々監督
本作には、特別な思いがあります。去年の三月に撮影をしたんですが、ちょうどその頃、父親が、劇中の柄本明さんのように肺がんで入院しており、「一カ月もたない」と言われていました。何とか生き延びて、六月に亡くなったんですが、その時にお坊さんが「人間にはどうしようもないことがある。それは老いであり、死である」と言っていました。多聞は、そこをつないでいきます。
そして、もう一つ、震災や天災は人間の努力ではどうしようもできないことです。本作では、その点においても多聞が僕たち人間を救ってくれます。僕にとって、大切な作品です。すみません! 暗い雰囲気にしてしまいました。
西野さん
皆さん、お話をちゃんと聞いていらっしゃるんだと思いますよ。
MC
伊原さん、本日は初めての上映後の舞台挨拶となりますが、本作を観て感動したポイントを教えてください。
伊原さん
この作品は、グッとくるポイントがたくさんあるので、一つに絞るのは難しいです。ラストシーンはもちろんですが、個人的には和正と美羽が一緒に大熱唱する歌のシーンがすごく好きです。それまでは、一緒に行動していても、お互いをちょっと敬遠していますが、そこから距離が縮まった感じが言葉なしでも伝わってきました。
高橋さん
ありがたいです。あのシーンは、絶妙な緊張感と緩さで撮影したことを覚えています。
西野さん
歌っていた曲と、あのシーンとのアンバランス感がありましたね。
MC
宮内さんは、震災に見舞われて、五年もの間言葉を発することができない息子を持つ母親という難しい役どころを演じられました。今のお気持ちと本作への思いをお話しいただけますか。
宮内さん
撮影期間はとても濃い時間を過ごしました。公開初日を迎えられて、すごくうれしいです。これまで母親役をあまりやったことがなかったので、「私で大丈夫かな?」という気持ちもありましたが、現場では夫役の斎藤工さんや、光役の優来くんに家族の愛をいただいて、演じることができました。さくらとのシーンも多くて、さくらも最高でした。
MC
本日、お隣には息子役の優来くんがいらっしゃいますね。
宮内さん
久しぶりに会ったね!
木村くん
(うなずく)
宮内さん
(優来くんは)緊張しているんだよね?
MC
まさに本作のタイトル通り、本日は“少年と犬”が舞台上に揃っておりますね。木村くんは多聞が目指すたった一人の少年・内村光役を演じました。木村くんは、多聞とのシーンが多かったと思いますが、さくらちゃんと会うのは久しぶりですか?
木村くん
はい。三カ月ぶりぐらいです。
MC
撮影が終わってからも会っていたんですか?
木村くん
はい。
高橋さん
何で会ったの?
木村くん
川とか山とかに行きました!
西野さん
(驚いて)そうなんだ!
高橋さん
日本のどこかで“少年と犬”が遊んでいたんですね。僕たちも初耳です!
MC
一緒に遊びに行ったんですか?
木村くん
はい!
■さくらが絶妙なタイミング鳴く。
高橋さん
「川、楽しかったなぁ」と言っています。
MC
撮影現場でのさくらはどうでしたか?
木村くん
撮影の合間に、引っぱりっこや、競争をしてとても楽しかったです。
MC
木村くんとさくらは何か通じ合っている感じがしますね。
高橋さん
優来くんの隣に来たら、急に共鳴し始めましたね。
西野さん
そうですね。撮影が終わってから遊びに行っていたことは知らなかったです。「本当に絆が生まれたんだなぁ」と思いました。
MC
お母さん役の宮内さん、息子さん役の木村くんが、さくらちゃんと遊びに出かけていたことはご存知でしたか?
宮内さん
(笑)。知らなかったです。
MC
本日は、宮内家の親子登壇となりましたが、改めて宮内さんから見て木村くんとさくらちゃんはいかがでしたか?
宮内さん
優来くんの繊細なお芝居や、人間と犬をつなげてくれるさくらの何とも言えない表情に、本作と私自身もとても助けられました。
MC
本作では、もう会えない人のことを思って「ここにいる」と胸に手を当てるシーンがあります。このシーンにちなんで、「皆さんの心にあるもの」を教えてください。
宮内さん
私の母が、撮影期間中に亡くなったんです。私は撮影現場と実家を行き来して、家族で最期を看取りました。その時に、母の強さや、母が私たち兄弟に向けてくれた愛を改めて感じました。母のありがたさもすごく感じました。
本作では母親役を演じていますが、私は子どもを育てた経験がないので、撮影中は、「子どもに対する母親の愛情とはどういうものなのか」をずっと考えていました。でも、それは母から教えてもらえたように思います。今回この作品に参加できて良かったです。母とはもう会うことはできないけれど、(ご自身の胸に手を当てて)私のここにいると思っています。
木村くん
僕の中には、大好きなお兄ちゃんや家族、飼っている二頭の犬がいます。あと、前に死んじゃった二頭の犬もいます。とってもかわいい犬で、よく僕のところに来てくれるので、うれしかったです。
高橋さん
優来くんが演じる光を見ていると、本当に優来くんと多聞の間でしか通じない言語があるんじゃないかと思いました。多聞を見る目線とか、すごい説得力を持って演じていたと思います。本作のタイトルである「少年と犬」を背負ってくれました。すごく素敵な作品ができ上がったのは、優来くんのワンちゃんが好きという、自分の中にある「ここにあるもの」をすごく大切にしてくれたからだと思います。
MC
木村くん、さくらちゃんとこれからも一緒に遊びたいですか?
木村くん
はい!
伊原さん
私の心にあるものは、「高校時代に過ごした時間」です。それが私の核になっているからです。高校時代にダンス部の活動で得たものを、大人になってお仕事をしていく上でも、大事にしています。
大人になると、「やらなくても良いかな」「これはちょっと苦手だから」と、選択肢が増えて何かを避けることもできると思います。でも、高校時代はそこで踏ん張って新しい一歩を踏み出してきました。その成功体験のおかげで、今も「知らない世界にも飛び込んでみよう」と考えられるにようになりました。
部活動では、体育会系ならではの厳しいルールもたくさんありましたが、それでも頑張れたのは、高校三年間ならではだと思います。今の自分にとっても、その経験は大きいです。今でも学生の皆さんと出会うことがありますが、一生懸命な姿がキラキラしていて、めちゃくちゃカッコ良いなと思います。
MC
ちなみに今でもバブリーダンスは踊れるんですか?
伊原さん
一応、踊れます。卒業してからも意外と踊る機会があるので、一生忘れないと思います。
西野さん
私のここにあるものは、「自分を大事にしようと思う心」です。もともとそういう考え方ではなかったんですが、今はそうなりました。もちろん誰かのためや、何かのためという言動力は大事だと思うんですが、最後の最後に決めるのはやはり自分なので、自分を大事にしていきたいと思います。直感を大事にすることで、自分を大事にしたいと思います。
高橋さん
僕のここにあるものは、「人であり、言葉」です。高校生の時に飲食のアルバイトをしていました。その時は、まだ芸能の仕事を目指していなくて、料理人を目指していたので、飲食関係で働いていました。でも、ある時から芸能の仕事に興味を持つようになって、職場のエリアマネージャーに相談したことがありました。その時に「好きなことを仕事にしたいと思う感情は、唯一周りの人を振り回して良いわがままだよ」と言われたんです。その時は、高校二・三年生でしたが、その言葉に「なるほど!」と思ったんです。自分がやりたい仕事を選ぶと、たくさんの人に助けてもらうことになり、「自分の感情だけで道を変えて良いのか?」と悩んでいた時だったので、その言葉に救われました。
それが、今も作品選びや、オファーをいただいたのにスケジュールの兼ね合いで難しいという時にも、生かされていて…。
(お話の間ずっと鳴き続けているさくらを見て)ごめんね。おやつがほしいんだよね。(登壇者の皆さん&会場のお客さん:笑)
■高橋さんが話を中断してさくらにおやつをあげる。
高橋さん
「自分の感情を大事にして何事にも向き合っていく」というのが、僕の胸に残っていることです。
MC
そのアドバイスをいただけたのが大きかったですね。
高橋さん
アドバイスをくれたエリアマネージャーの方は、一緒に働いていたわけではないので、連絡先も知らないのですが、「好きなことを仕事にできて良かったね」と思ってくださっていたらうれしいです。
■さくらが「ワンワン」と鳴く。
高橋さん
「うまく言葉にできないけど、私にもある」とおっしゃっています。
MC
本日は、初日をお祝いしてくす玉をご用意しました。くす玉の紐は三本あります。高橋さん、西野さん、そして骨がついた紐は、木村くんにお手伝いをいただいて、さくらちゃんに骨付きの紐を咥えて引いていただきます。
■MCの「公開おめでとうございます!」の声に合わせて、高橋さん・西野さん・さくらが紐を引き、くす玉が割られました。
MC
くす玉のたれ幕「『少年と犬』初日だワン!」を皆さんで読んでいただけますか?
高橋さんと西野さん
「少年と犬」初日だ(さくら:「ワン!」と吠える)(会場のお客さん:拍手)
高橋さん
息ぴったりでしたね!
MC
完璧でした! さすがですね!
それでは、さくらちゃんはここで、ひと足先に降壇となります。高橋さんからさくらちゃんに労いの言葉をお願いします。
高橋さん
さくらがここまで一緒に周ってくれるとは思っていませんでした。撮影中に「舞台挨拶も一緒にやりたいですが、許可が下りるかどうか」という話をしていたんです。でも、こうして初日にくす玉を一緒に割ることができて良かったです。さくらが多聞を演じてくれたこと、そしてさくら自身のかわいらしさのおかげで、本作をここまで盛り上げることができました。本当に感謝しています。
MC
さくらちゃん、ありがとうございました! (会場のお客さん:拍手)
最後に高橋さん、西野さんからご挨拶をいただきます。
西野さん
本作は、プロモーションでよく「奇跡の物語」と紹介されていました。皆さんも映画なので、フィクションだということを踏まえて、観てくださっているとは思いますが、それでも身近な話のように思える作品だと思います。「犬に癒してもらうこと、救われること」「出会いで人は変われるということ」は、多くの人が経験していたり、またはこれから経験することもあると思います。本作は、映画ですが、自分のことと、どこかつながっているような、そして寄り添ってくれる作品だと思います。今日からたくさんの方に届くこの作品を、ぜひ一緒に愛していただけたらうれしいです。今日は本当にありがとうございました。
高橋さん
本作は、約一年の撮影を経て、今日初日を迎えることができました。やっと皆さんにお届けできることに胸が高なりながらも、「皆さんがこの作品とどのように向き合ってくださるのか」すごく不安な気持ちもあります。
僕にとって、この「少年と犬」は、今後の役者人生において核となるだろうと、撮影中から思っていました。この作品の大きなテーマは、震災です。熊本や東日本、そして能登の地震もありましたが、被災地と被災地ではなくとも同じ日本で暮らす僕らにも、大小問わず傷が生まれていると思います。この国に生きている以上は「絶対に忘れてはならないことだ」だと思います。その責任を持って、僕はこの作品の主演を西野七瀬さんと務めました。
そんな中で一筋の光になったのが、さくらが演じた多聞です。皆さんの中にも、皆さんにしか見ることのできない光や希望があると思っています。その一筋の光を大切にしながら、この作品が皆さんの記憶に残り続けてくれたらうれしいです。改めて、皆さんと公開初日を迎えられてすごく幸せでした。本日はありがとうございました。