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映画『少年と犬』完成披露試写会

2025.02.20
  • 完成披露

完成披露試写会

ノワール小説の旗手として日本の文学界の先頭を走り続ける馳星周さんが2020年に発表、第163回直木賞を受賞し、現在までに累計発行部数50万部を突破している名作「少年と犬」(文春文庫)をベースに、実写化した映画『少年と犬』が3月20日より公開となります。
2月20日、本作の完成披露試写会がTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて実施され、主演の高橋文哉さん、西野七瀬さん、共演の伊藤健太郎さん、伊原六花さん、斎藤工さん、そして瀬々敬久監督が登壇しました。本作に参加した感想や、撮影現場での思い出などを披露し、さらに犬の多聞役を演じたジャーマンシェパードドッグのさくらもかけつけました。こちらのイベントの様子を詳しくレポートします。

中垣和正役

高橋文哉さん

中垣和正役

須貝美羽役

西野七瀬さん

須貝美羽役

沼口正役

伊藤健太郎さん

沼口正役

中垣麻由美役

伊原六花さん

中垣麻由美役

内村徹役

斎藤工さん

内村徹役

瀬々敬久監督

高橋さん

一般の方に観ていただくのは、今日が初めてなのでドキドキしています。楽しんでいければと思います。

西野さん

今日はたくさんの方に来ていただき、すごくうれしいです。短い時間ですが、本作への期待感を高められたらと思っています。

伊藤さん

すごく素敵な作品ができたと思っています。今日は短い時間ですが、本作の魅力をたくさん伝えたいと思っているので、最後まで楽しんでください。

伊原さん

今日、皆さんに本作が届いて、どういう感想をいただけるのか、すごくワクワクしております。

斎藤さん

今の時代は、「最初にその作品を観た人がどう思うのか」がとても注目されるので、皆さんに本作がかっていると言っても過言ではありません。観る前にプレッシャーを与えるつもりはありませんが、第一村人的な皆さんは、ヒヨコの目から見た親鳥のような存在です。本作を観て何か感じるものがあれば、ぜひ一緒にこの作品を育てていただければと思います。

瀬々監督

本作は、それぞれ事情がありながら生きている人たちと、犬との交流を描いた作品です。皆さんの日常にとても近いところで作った作品です。最後まで観て、何かを持って帰ってもらえればと思っています。

MC

ご登壇の皆さんは、既に完成した本作をご覧になったということですが、感想を教えてください。

高橋さん

僕の撮影期間は大体二カ月でした。その二カ月間の楽しかったことや、大変だったことの集大成が、一本の作品になっています。それを踏まえて、「やっぱり映画って素敵だな」「良いものだな」と、本作で改めて再確認することができました。重めの作品で、グッとくるシーンが多いイメージをお持ちの方が多いと思いますが、観終わると体がぽかぽかして、その温かさが皆さんの中に残り続けるような作品になっています。本作を観終わった時に、そんな作品をみんなで作ることができたという達成感を感じました。

西野さん

濃厚な撮影期間を思い出しながら本作を観ました。物語を知っているのに、観ているうちに引き込まれて、感動して、気が付いたら涙が出ていました。私も「映画って良いなぁ」「こんな素敵な作品に関わることができて、私は幸せだし、恵まれているな」と思いました。毎日が当たり前のように過ぎて、明日が来るのが普通に思えますが、「一日一日をもっと大事に生きていきたいな」と、観終わった後に改めて思いました。

伊藤さん

まず台本を読んだ時に、自分の中ですごく考えさせられる部分や、目頭が熱くなるシーンがたくさんありました。個人的には、自分が現場にいないシーンが多いので、「あのシーンやセリフが、役者さんを通して血が通うとどうなるのか」すごく楽しみにしていました。実際に作品を観ると「やっぱり役者さんの力ってすごいな」と改めて思いました。本作の内容も含め、いろいろ考えさせられる部分が多かったです。

伊原さん

私も、撮影期間はトータルで三日くらいの短い期間でしたが、「この現場にもっといたい」と思うような、刺激的な撮影現場でした。監督をはじめ、キャストとスタッフの皆さんがプロフェッショナルなので、「こういう現場で役者としてお芝居をしていきたい」と思う時間がたくさんありました。
実際に作品を観た時に、私が麻由美として必死に生きて見ていた世界以外を、新鮮な気持ちで観ることができました。「これはきっと観る人によって刺さるポイントや、共感できる人物が変わる」と感じました。皆さんの感想がとても楽しみな作品です。

斎藤さん

映画ファンとして、犬を愛するものとして、「少年と犬」という題材に、原作や台本を読む前、また、作品を観る前は、少し構えていたところがありました。感動という、ある種人口的なものが、そこにあったら複雑だなと思っていました。本作をご覧になる前の皆さんにお話するのはアレですが、僕にとっては、人間と共存する生物の目線を介して、「人間という生き物がいかなるものなのか」「震災や有事の折に、あたりまえに共存してきた動物がどういう扱いを受けるのか」をこの作品に教えていただきました。
「犬と戦争 ウクライナで私が見たこと」(2025年2月21日公開)や、「Flow」(2025年3月14日公開)というラトビアの作品のように、人間がいなくなった後の動物たちを描いた作品もそうですが、今は何か言葉じゃない、言葉なき言葉を大事にするべき時代にいるのではないかと思います。

MC

瀬々監督、制作期間を経て、いよいよ皆さんにご覧いただく今のお気持ちはいかがでしょうか。

瀬々監督

今、この空間にすごく重い空気が漂っている気がします。(会場のお客さん:笑) 本作は一切そんなことはありません! 敷居を低く作っていますので、皆さん楽しんでください。
最初の高橋さんの登場シーンは、お馬鹿な感じもあります。僕が高橋くんに「チャーミングに演じて!」って頼んだんです。でも、「チャーミング」っていう言葉が高橋くんにはどうも通じていなくて…(高橋さんに向かって)通じていた?

高橋さん

そんなこともありましたね。僕が「チャーミングって何ですか?」と、尋ねたことを覚えています。

瀬々監督

そうそう(笑)! 僕らの世代だと、ショーケン(故 萩原健一さん)とか、松田優作がヒーローで、彼らは最初はおバカで入ってくるけれど、物語の最後には感動させる。高橋くんにはそういったヒーローになってもらいたかったんです。

MC

本作の撮影は、去年の3月から5月に行われたとうかがいました。高橋さんと西野さんは今回が初共演ですが、共演した感想をお願いします。

高橋さん

本当に楽しくやらせてもらいました。撮影現場は、ワチャワチャもピリピリもしていなくて、すごくフラットな環境でした。

西野さん

気が付いたら、仲良くお話ができるようになっていました。

高橋さん

何か困ったことがあったら、お話をしていましたね。

MC

どのようなお話をされていたんですか?

西野さん

雑談ですね。雑談がないと、距離って縮まらないと思います。

高橋さん

中身のない話なので、覚えていないです(笑)。

西野さん

雑談もしつつ、お互いの役が抱えているものが大きいので、「大変だよね」という話もしました。

高橋さん

お互いに「どういう気持ちでその場にいるのか」を確認することもありました。

MC

伊藤さん、伊原さん、斎藤さんにうかがいます。旅の途中で犬の多聞が出会う人々を演じられましたが、撮影中の印象的なエピソードはありますか。

伊藤さん

僕は、撮影が一日だけで、文哉くんとのシーンだけだったんです(笑)。なので、印象的なこととしては、文哉くんと一緒にお芝居をしたことです。「ナイスガイがいるな」と感じていました。大好きです。

高橋さん

僕も大好きです! 日数的には一日でしたが、すごく刺激的でした。沼口先輩のピリつく感じに、おびえながらのお芝居ができましたが、ご本人はすごく柔らかい方です。なので、そこに甘えさせてもらいました。

伊藤さん

うれしいですね。先日、プライベートでもお会いして、また距離を縮められました。これからもよろしくお願いします。

高橋さん

よろしくお願いします。

伊原さん

私の撮影は三日間でした。最終日が、手塚理美さん演じるお母さんと、和正と、多聞とのシーンでした。土手で震災のことを思い出しながら話をするシーンの撮影だったんですが、雨が降って、撮影スケジュールが何回か延びたんです。延びに延びた最後の日が、ちょうど3月11日(東日本大震災の日)でした。監督が「図らずも今日は3月11日ですね」と、耳元でボソッと言われて、私的にはグッとくるものがありました。

斎藤さん

僕はトータルで四日ぐらいの撮影でした。印象的だったのは、僕の息子・光役の(木村)優来くんと、多聞役のさくらが、カメラが回っていないところでも言葉を超えて通じ合っている姿です。それが、そのまま作品に映っていると思います。映画を作るというのは、大いなる虚構を作ることでもあるんですが、そこに「本当があった」と、現場で見ていて感動する瞬間がたくさんありました。

MC

西野さんは、クランクアップ時のコメントで、「思わず涙がこぼれた」という話をうかがいました。それだけ強い思いを込めて演じられたと思いますが、美羽役を受けた理由、そして、演じてみた印象を教えてください。

西野さん

最初は、難しい役なので「この役は自分にうまくできるかな」と思う気持ちがありました。でも、挑戦させてもらえる機会だと思って、「ぜひ挑戦したい!」とお受けしました。撮影期間中は、過酷なシーンもありましたし、怒涛だったので、毎日気が抜けなくて、悩み続けました。なので、全部の撮影が終わった時に、無意識に「解放された!」「やり切れた!」という気持ちがありました。

MC

高橋さん、今日はあと一人、大事な俳優さんが登壇されていませんね?

高橋さん

捜してきますね!

斎藤さん

(片野弥一役の)柄本明さんですか?

西野さん

来てくれるかなぁ?

■多聞役の犬のさくらが、リードを手にした高橋さんと一緒に登場しました。

MC

西野さん、ご紹介をお願いします。

西野さん

多聞役のさくらです。(会場のお客さん:拍手)

MC

高橋さんはさくらちゃんと会うのは久しぶりですか?

高橋さん

本作の宣伝活動で、先週一年ぶりに会いました。

MC

高橋さんにとって、さくらちゃんはどんなパートナーでしたか?

高橋さん

最高のパートナーでした。さくらのおかげで撮れた映像がたくさんあるので、感謝しかありません。

MC

たった一人の大切な人を目指して、五年をかけて、3000キロ旅をする多聞役のさくらちゃんです。多聞はオスの設定ですが、演じたのはメスのジャーマンシェパードのさくらちゃんです。西野さんも共演した印象を教えてください。

西野さん

すごく賢くて、「犬がこんなにお芝居ができるなんて、すごいな」と、毎回感心しながら一緒に撮影をしていました。何より癒されましたね。大型犬に触れ合う機会は今までなかったので、力も強いし、カッコ良いし、魅力たっぷりで、撮影の合間にはちょっと遊んだりもしました。

高橋さん

僕は、撮影の前にコミュニケーションを取る時間をもらいました。最初は一緒に歩くことすらままならなかったですが、時間が経つにつれて、一緒に歩くようになったり、今のように横にたたずんでくれるようになりました。一緒に遊んでくれたり、目を見てくれたり、徐々にコミュニケーションが取れるようになりました。人との関わりでは、コミュニケーションが目に見えて進んでいると分かることは多くないので、そういう意味でも良い経験をしたと思います。

斎藤さん

さくらは、自分を犬ではなく「人」だと思っている感じがありました。シェパードにしてはだいぶ高齢なので、寒い時期の撮影はハードだったと思います。でも、さくらが多聞になる瞬間を幾度も見ました。そのスイッチが入る瞬間を見て、同じ表現者として学ぶべきものがあるなと思うこともありました。子役もそうかもしれないですが、一気にチーム全体にリアリティが増して、作品の軸でいてくれたと思います。

MC

瀬々監督、多聞役のオーデションはいかがでしたか?

瀬々監督

実は、原作に合わせて、シェパードと和犬の雑種の犬を起用したんです。ところが、クランクインの二週間前に、その犬が降板してしまったんです。そこから慌てて探したんですが、シェパードの雑種を探すのは諦めて、シェパードを探したところ、さくらが僕らの前にヒーローのように現れました。本作同様、さくらが僕たちを助けてくれました。

MC

さくらちゃんのことを皆さんが褒めていますが、いかがですか?

高橋さん

(さくらちゃんにマイクを向ける)鼻息が…。(さくらの思いを通訳して)ありがとうございます。

斎藤さん

(さくらの思いを通訳して)「SNSで応援してください」と言っております! (会場のお客さん:笑)

MC

高橋さんは、撮影の終盤に多聞との重要なシーンの撮影があり、相当な集中力を保って撮影されたとうかがいました。

高橋さん

さくらと撮影を共にしていく中で、すごく寂しくもありながら、いろいろな感情に包まれるシーンでした。今、こうしてさくらがそばにいてくれることがうれしいです。
さくらがすごく僕の顔見てくれる…今日は人がいっぱいいるからびっくりしているのかな?

MC

さくらちゃん、お越しくださった皆さんの顔を見ていかがですか?

高橋さん

会場の皆さんを見ていますね…。(さくらの思いを通訳して)「SNSで応援してください!」と言っています。

MC

人間と犬の絆を描いた本作にちなんで、現在、犬との思い出を投稿していただく「わたしと犬キャンペーン」を行っております。ですので、皆さんにも、ぜひ犬との思い出を語っていただければと思います。絆だけでなくクスッとなるようなお話でも大丈夫です。

伊藤さん

犬は飼っていますし、大好きです。実家でも犬を飼っています。実家にいる犬はレオといって、19歳ですがすごく元気です。

斎藤さん

犬種は何?

伊藤さん

トイプードルです。90歳の祖母も元気なので、先日、祖母とレオが「どっちの方が長生きできるかね?」と話していました。「かわいい会話だな」とすごくほっこりした気持ちになりました。

伊原さん

私はもともと体が弱くて、喘息もあるし、動物や食べ物にもアレルギーがあったんです。でも、最近実家にワンちゃんが来たので、実家に帰る度に触れ合っています。

斎藤さん

犬種は何?

伊藤さん

すごく犬種を気にしますね(笑)。

斎藤さん

犬のイメージをしたくて…。(会場のお客さん:笑)

伊原さん

マルチーズとプードルです。

斎藤さん

大きさは4キロぐらい?(会場のお客さん:笑)

伊原さん

そうですね! これからもっと仲良くなれたらと思っています。

斎藤さん

僕の実家には、シュウという老犬がいました。おそらくサモエドと甲斐犬の雑種の犬です。僕が幼いころ、親が犬を信頼して、姉と僕とシュウを残して出かけたことがありました。その時に、僕がベランダから落ちそうになったところを、シュウが僕のオムツを咥えて布団に戻してくれたのを、姉が見ていたそうです。完全に家族の一員でした。シュウはその後、亡くなってしまうんですが、その後に僕が二階建ての屋根から真っ逆さまに地面に落ちる事件がありました。その時にも、下にシュウの犬小屋があったので、直にコンクリートに打ち付けられずに済んで、大事には至りませんでした。亡くなった後もシュウに守ってもらえた気がしています。
マスコミの皆さんが書きやすい、良い感じのエピソードだと思います。(会場のお客さん:笑)

西野さん

小さい時に、学校から帰ると、家に誰もいなかったので、犬をゲージから出して、冬だとストーブをつけて、二人で一緒にじーっと温まるのが、私の冬の日常でした。めちゃくちゃストーブが好きな子でした。

斎藤さん

犬種だけは教えて!(登壇者の皆さん&会場のお客さん:笑)

西野さん

ミニチュアダックスフンドです。毛色はレッドです。

斎藤さん

4キロぐらい?

西野さん

それぐらいだったと思います。

斎藤さん

犬種はマストで教えてください! (会場のお客さん:笑)

伊藤さん

マストなんだ(笑)。

高橋さん

僕の家にも、生まれた時から犬がいました。ちょっと大きい犬だった気がしますが、自分が小さすぎてあまり良く覚えていないんです。僕が小学校の低学年くらいの時に亡くなりました。その後に、「ワンちゃんがほしい」と親に言ったら、僕がまだ8歳だったので、「10歳になったら」と親に諭されました。しかも、親は「ペットを飼うことへの責任感を持たせないといけない」と考えたようで、「『お世話をする』と口で言うだけではなく、『誠意を見せなさい』」と言われました。なので、僕は「10歳から20歳までの誕生日とクリスマスプレゼントは何もいらないから、この子を迎えたい!」と言って、犬を飼うことを許してもらいました。今も実家で元気にしています。
だから、21歳の時に10年ぶりに誕生日プレゼントをもらいました。それまでは、18歳で上京してから、20歳までは毎年ワンちゃんの写真と、「誕生日おめでとう」「メリークリスマス!」というメッセージが送られてきていました。21歳になって、それがなくなってしまって寂しいです。

斎藤さん

へぇ~。で、犬種は?(会場のお客さん:笑)

高橋さん

マルチーズとトイプードルのミックスです。

斎藤さん

じゃ、3.5キロくらい?

高橋さん

ちょっと小さめの子なんです。

斎藤さん

3キロくらいかな。

高橋さん

白くてかわいいんです。

斎藤さん

ありがとうございます。

西野さん

覚悟を決めたんですね!

高橋さん

子どもなりの覚悟が、プレゼントを捧げることでした。

斎藤さん

そうなると、お年玉がだいぶ重要になりますね?

高橋さん

だいぶ重要でした(笑)! 犬は今も実家にいて、僕の宝物です。

MC

最後に西野さん、高橋さんよりご挨拶をお願いします。

西野さん

美和という役を、すごくもがきながら演じましたが、今の自分にできることは、全てぶつけることができたと思っています。皆さんの中に、何か伝わるものがあれば良いなと願っています。少しつらいエピソードもありますが、希望が見える話もありますので、一秒一秒を見逃さず観てもらえたらすごくうれしいです。今日は本当にありがとうございました。

高橋さん

最近、「この作品をどんな方に観ていただきたいですか?」と聞かれる機会が増えました。僕は、本作を観て「どんな方にも観ていただきたい作品だな」と思いましたし、「どんな方にも届く作品」だと思っています。人生は、挑戦と、失敗と、成功の繰り返しだと思います。本作が、皆さん一人一人の人生を振り返るきっかけになって、「この瞬間にこういうことがあったから、自分はこうしてここにいられる」「自分の当たり前が当たり前ではない」と感じてもらえたらうれしいです。
本作で描かれる強さや弱さ、そして儚さを、受け取っていただき、皆さんの中に閉じ込めて、「この作品が皆さんの中に残り続ければ良いな」と心から思っています。
ぜひ、最後まで目を離すことなく、本作を全身に浴びて帰っていただけたらと思います。本日はありがとうございました。