「屋根裏のラジャー」ジャパン・シネマ・オーケストラ

2023.12.06
  • イベント

ジャパン・シネマ・オーケストラ

「メアリと魔女の花」に次ぐスタジオポノックの長編アニメーションの最新作は、イギリスの作家A.F.ハロルド著の「The Imaginary」(「ぼくが消えないうちに」こだまともこ訳・ポプラ社刊)を基に、愛をなくした少女アマンダが生み出した、想像の友だち・少年ラジャーを主人公にして描かれる冒険ファンタジーです。
12月6日、東京オペラシティ・コンサートホールにて、映画の公開前では邦画史上初となるジャパン・シネマ・オーケストラを開催しました。イベントには、寺田心さん、鈴木梨央さん、仲里依紗さん、イッセー尾形さん、百瀬義行監督、西村義明プロデューサー、そして主題歌アーティストのア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアン・アクセルさんが登壇し、本イベント開催にいたるまでの過程や本作の主題歌について語り尽くしました。また、ア・グレイト・ビッグ・ワールドと神奈川フィルハーモニー管弦楽団によるスペシャルコラボも披露されました。こちらのイベントをレポートいたします。

ラジャー役

寺田 心さん

ラジャー役

アマンダ役

鈴木梨央さん

アマンダ役

エミリ役

仲 里依紗さん

エミリ役

ミスター・バンティング役

イッセー尾形さん

ミスター・バンティング役

百瀬義行監督

プロデューサー

西村義明さん

プロデューサー

(ア・グレイト・ビッグ・ワールド)

イアン・アクセルさん

(ア・グレイト・ビッグ・ワールド)

■上映終了後、栗田博文さんの指揮による神奈川フィルハーモニー管弦楽団の演奏と共にゲストが登壇。

MC

興奮も冷めやらぬ中ではございますが、改めて感想をうかがっていこうと思います。まずは、ラジャーの声を務められた寺田心さん、ご覧になっていかがでしたか?

寺田さん

本作を観るのは三回目ですが、やっぱり、鑑賞する度に観る視点が変わります。一回目は作品に没入してしまうから、物語としてアマンダとラジャーの関係性に注目しがちになります。でも、二回目はラジャー以外のイマジナリーたちの人生や言葉にすごく注目できました。三回目になると、最後に流れる「Nothing's Impossible」の歌詞が、ラジャーとアマンダのお父さんがアマンダに向けて言いたいことだったり、皆さんに向け伝えたいことなんじゃないかと、考えさせられました。

MC

素晴らしい音楽だったと思います。

寺田さん

僕も少し音楽を習っているので、そのすごさが分かるというか、本当に素晴らしいと思います。

鈴木さん

まだ余韻に浸っているというか、素敵な演奏とともに本作を観ることができて、涙が溢れてきちゃいます。アマンダを演じることができて、感慨深いものがあるというか、この作品に携わることができて、すごく幸せだと改めて思いました。ありがとうございます。

仲さん

こんな素敵な環境で観ることが初めてなので、ほんとに貴重な経験でした。今日で(本作を観るのが)二回目なんですが、さらに本作に没入できたというか、「みんなで作っているんだ」ということがさらに伝わってきました。ほんとに今日はすごくいい機会でした。号泣しちゃったので一回メイクを直したいくらいです(笑)。

MC

一度目を鑑賞された時にも涙を流されたと聞きましたが?

仲さん

今日も前回と同じところで涙が止まらなくなりました。メイクを直さないまま登壇すると思った時に、(手で仰ぎながら)涙を乾かしていました。

尾形さん

最初からオケの音が聞こえて、鳥肌がたちっぱなし、泣きっぱなし。BGMが入っているんだと気づけますね。
栗田さんが演奏していない時の直立不動の姿勢も目に焼き付きました。また思い出すと思います。ありがとうございました。

MC

百瀬監督、改めて公開前にシネマコンサートでご覧になっていかがでしたか?

百瀬監督

アニメーションって、数秒のカットを仕上げるのに三日とか一週間、場合によっては一カ月かかる時もあります。そういう時間の流れの中にいると、今日みたいなコンサートは、みんなで共有できるので、温かみを感じました。冒頭ですごく感動しました。今回こういう形で僕が関わった作品をライブで体験できたのは、すごく良い体験だったと思います。皆さん本当にありがとうございます。

MC

改めて神奈川フィルハーモニーの皆さんに感謝申し上げたいと思います。そして、西村プロデューサー、今回このイベントを迎えるにあたって、準備をされてきたと思います。改めて、今日本作をこういった形でご覧になっていかがでしたか?

西村プロデューサー

栗田さんと神奈川フィルハーモニー管弦楽団の方々に感謝申し上げたいです。ありがとうございました。映画館と違った椅子だったので、観客として観てしまい言葉が出なくなってしまいました。これからどんどん共有されていくんだと思うとうれしいです。
今日は、僕らが代表して登壇していますが、実はクリエイターたち500人ぐらいが、見えないところで毎日頑張っています。そのうちの何人かがこの会場にいるんです。立ち上がっていただいて、ぜひその方々へ拍手をしていただけたらと思います。(会場:大きな拍手)

MC

ありがとうございます。今日こういった形で観客の皆さんにご覧いただきましたが、本日指揮を務められた栗田博文さんにもお話をうかがいたいと思います。栗田さんが本作に携わられたのは完成した八月頃からですか?

栗田さん

そうですね、約五カ月携わりました。

MC

セッションの開幕にそれだけの時間がかかったということですが、改めて、本作を観ての感想、そして今日を迎えるにあたって難しかったことなどありましたら、教えてください。

栗田さん

皆さん、こんばんは。映画って良いですよね。そして、音楽って良いですよね。そして、屋根裏のラジャー最高ですよね。約五カ月前に初めて打ち合わせをして、各部署の皆さんが丁寧に仕事を積み重ねてくださいました。我々のほうは、本作を原曲にしてくれた山下康介さんと、オーケストラのみんなで今日のコンサート用に作るところから始めました。いろんな部署の仕事の積み重ねがあって、本作の公開前にシネマ・オーケストラをやるという初めての経験ができたことを私はとてもうれしく思っています。携わってくださった皆さんにはこういった機会を作ってくださったことに、心より感謝しています。ありがとうございます。
難しい点としては、オーケストラの皆さんは演奏すること自体には比較的慣れていますが、待っている時間が長い時にモチベーションを保ち続けることですかね。個人的には、屋根裏でアマンダが泣くシーンで「Nothing's Impossible」を演奏するわけですが、僕も本作を観た時にあそこで泣きました。ラジャーとアマンドの三カ条で、「泣かないこと」とあるのに、僕も一回目は泣いちゃいました。周りのメンバーでも泣いている人がいました。本当にライブ感もあるので、シネマコンサートを楽しんでいただけたらうれしいです。本当にありがとうございました。

■ここで一度、栗田さんと神奈川フィルハーモニー管弦楽団の皆さんが降壇されました。

MC

主題歌「Nothing's Impossible」を生で披露していただいた、ア・グレイト・ビッグ・ワールドのイアンさんにも大きな拍手をお送りください。

イアンさん

This is a dream.(もう、夢が叶ったという感じですね。)
本当に細部にまで渡っていろんなことを気にしながら曲作りをしました。まるで顕微鏡を見ているかのような作曲をしていましたが、これが数年前でした。そして、数年後にこうして日本にやって来て、こういう形でステージに上がって演奏ができました。こんな場所は私は今まで見たことがないです。曲がより大きな存在になって、本当に魔法のような瞬間でした。本当にうれしく思っています。ありがとうございます。

MC

改めて西村プロデューサーにうかがいますが、ア・グレイト・ビッグ・ワールドを起用しようと思ったきっかけは何だったんですか?

西村プロデューサー

本作の主題歌を考えている時に、最後のラジャーのセリフが、ああいうセリフなので、「その後にどんな声が入れば良いかな」と考えていたんです。その時に僕が六、七年前に100回くらい聞いた「Say Something」という彼の代表曲に巡り合いました。聞き過ぎて、英語が分からない、当時四、五歳の息子も寝る前にずっと歌っているような、本当に大好きな曲なんです。それを思い出して、「あ、イアンの声だったらラジャーの後に締めくくるのにぴったりじゃないか」と思いました。

MC

イアンさん、今のお話を聞かれて改めていかがですか?

イアンさん

ありがとうございます。
西村さんからお手紙をいただきました。西村さんのことも尊敬していますし、作品のファンです。本作の話とか、どんなことを求めているのかというお話をしていただきました。台本を読んで、僕も泣きました。僕自身も二人の息子がいるので、ちょうど息子と「私たちは自分が愛しているものと離れても、心の中に残っている記憶はずっと残っているんだよ」という話をしていました。本作は大事にしている人が亡くなってもずっと繋がりは残るし、時間を超えて愛し続けるというメッセージだったと思うんです。そういう情熱プロジェクトという感じでしたね。皆さんと携われて本当に光栄でした。

MC

「情熱プロジェクト」というお話もありましたけが、この曲を制作したのがいわゆるコロナ禍だったとお聞きしています。大変だったこと、今振り返って思い出すことがあれば教えてください。

イアンさん

ZOOMやフェイスタイムとかでやり取りしていたんですが、やっていくうちにだんだん慣れてきました。曲の細部をいろいろ話し合っていたんですが、ア・グレイト・ビッグ・ワールドのパートナーにチャドというメンバーがいるんですが、彼とも一緒に曲のことを話し合ったりしました。フィードバックをもらったりしながら、スタジオに戻ってまた作るという作業をずっと続けて、という作業でした。

MC

寺田さん、本当に苦労のあった制作だったんですね。

寺田さん

本当にそうですね。いろいろな方が何年も何年もかけて作った作品なので、本作に僕も関わることができて、とてもうれしく思います。僕の声変わり前の不安定な時期で、その声をこんなに素敵な作品の形で残すことができてとても光栄ですし、貴重な体験です。

MC

鈴木さん、なかなか皆さんにお会いする機会もないと思いますが、何か聞いてみたいことはありますか?

鈴木さん

そうですね。日本に来て何かご飯は食べましたか?(会場:笑)

イアンさん

実は僕はヴィーガンなんです。でも、日本にはすごくおいしいヴィーガンレストランがあるんです。本国の方では食べたことがないような味付けのヴィーガンフードを食べることができてとても良かったです。

MC

さっそく日本を楽しまれているということですね。仲さんいかがですか?

仲さん

すごくお衣装が素敵なので、隣に並べて光栄です。(会場:笑)

イアンさん

「目立つように」と言われたのでこの衣装にしました。(会場:笑)

仲さん

私も目立つようにと言われたので(笑)。

MC

お二人ともとてもお似合いでいらっしゃいます。実際にあの名曲を作っていただいたイアンさんがいらっしゃっていますが、イッセーさんはいかがですか?

尾形さん

(英語で伝えつつ)「この作品を、音楽が優しく包んでくれた」という風に和訳してください(笑)。

イアンさん

ありがとうございます。

MC

西村さんに改めてうかがいますが、最初にこの曲を聞いた時の衝撃、感動というのはどんな様子だったか教えていただいても良いですか?

西村プロデューサー

2021年の年末くらいにイアンからデモテープが来ました。その時は、百瀬さんも僕も現場もめちゃくちゃ大変で、「もう無理だ」「本作は完成しないんじゃないか」というくらい混乱していた時期だったんです。(曲名が)「Nothing's Impossible」なのに、絵ができないかもしれないんですもん(笑)。できないことがやっぱあるんだと思いました(笑)。でも、イアンの曲のおかげでちゃんと本作は完成しました。

MC

この曲がなければ、ラジャーは生まれていなかったかもしれないんですか?

西村プロデューサー

そうですね。それより、この声、この曲で最後を締めくくれたことが奇跡的ですよ。映画の主題歌は「最後どんな気持ちであってほしいか」ということを表すものだと思っていて、それによっては作品が何か変わってしまう部分もある。だから、イアンの協力というか、僕たちの気持ちに応えてくれたことがとてもうれしく…、ねえ、百瀬さん。

百瀬監督

そうですね。デモが来た時に、歌詞が英語で分からなくて、西村くんに同時通訳してもらいながら聞いていました。その通訳してくれる詞を聞いて、詞がすごく良くてグッとくるものがありました。

MC

イアンさん、この曲がなければ屋根裏のラジャーが完成しなかったかもしれないとの話を聞いていかがですか?

イアンさん

それはちょっと褒めすぎだと思います(笑)。(会場:笑)

MC

本日は、もう一曲演奏していただきます。
スペシャルアンコールということで、全米大ヒットソング、先ほど西村プロデューサーが六年前に100回聞いて耳に残ったと言われていた「Say Something」を神奈川フィルハーモニー管弦楽団の皆さんと一夜限りのスペシャルコラボでお送りしたいと思います。こんなに素晴らしい瞬間が実現するとは夢にも思いませんでした。さあ一体どんな素晴らしい時間となるのか、皆さんぜひご堪能ください。

■イアンさん×神奈川フィルハーモニー管弦楽団スペシャルコラボ演奏「Say Something」