「室井慎次 生き続ける者」マスコミ試写会&緊急特別捜査会議

2024.10.30
  • イベント

「室井慎次 生き続ける者」マスコミ試写会&緊急特別捜査会議

1997年の連続ドラマ開始以来、それまでの刑事ドラマとは一線を画し、社会現象を巻き起こした「踊る」シリーズ。“青島と室井の約束”から 27 年の時を経て、プロデュース:亀山千広さん、脚本:君塚良一さん、監督:本広克行さんが再集結し、「踊るプロジェクト」再始動が発表されました。10 月 11日より、「室井慎次 敗れざる者」が全国 381 館で公開となり、続く「室井慎次 生き続ける者」の公開が11月15日に控えています。(11月8・9・10日先行上映あり)
10月30日東宝本社にて、「室井慎次 生き続ける者」マスコミ試写&緊急特別捜査会議が開催され、フジテレビジョンドラマ映画制作局長・臼井裕詞さんと「踊る」シリーズの生みの親である亀山千広プロデューサーが登壇しました。「踊る」シリーズ映画一作目となる「踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の 3 日間」の公開日前日から、26年のこの日に、これまでベールに包まれていた本作について語ったこちらのイベントの模様を詳しくレポートします。

フジテレビジョン ドラマ・映画制作局長

臼井裕詞さん

フジテレビジョン ドラマ・映画制作局長

プロデューサー

亀山千広さん

プロデューサー

臼井さん

11月8日から先行上映の実施を発表しましたが、その前にいち早くマスコミの方に観ていただきたく、お集まりいただきました。「室井慎次 生き続ける者」は、観ていただいた通りの内容です。いろいろお話ししたいこと、伝えたいことがございます。これを機に、我々製作陣の熱を感じていただいて、応援団になっていただけるとありがたいです。

亀山さん

11月8日の先行上映が決まって、我々としては、いろいろと作業が残っています。完成披露や、マスコミ試写を行う予定はなかったんですが、記者の皆さんにぜひご覧いただきたいと思い、完成版ではありませんが、ご覧いただきました。ご覧になった通り、最後の室井慎次の姿です。これから本作の公開に向けて、我々も動いていきますので、室井さんの思いを汲んで、引き続き応援をお願いできればと思います。

MC

「踊る」シリーズが連続ドラマとしてスタートしたのは1997年になります。そして、映画第一弾「踊る大捜査線 THE MOVIE」が1998年10月31日公開し、ちょうど明日で公開から26年となります。映画第一弾は、興行収入101億円の大ヒットを記録しました。
続く、2003年の「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が興行収入103.5億円と、未だに破られていない邦画実写記録を打ち立てております。この誰もが知る「踊る」シリーズが、2024年3月に「室井慎次」二部作での映画化が発表されました。この「踊る」プロジェクト再始動である本作は、どのようなきっかけでスタートしたのでしょうか。

臼井さん

すべてのきっかけは、「踊る」シリーズを生み出した亀山さんです。この後いっぱい補足しますが、まずは、亀山プロデューサーのお話を聞きたいと思います。

亀山さん

ご覧になっていただいたように、本作が最後の室井慎次です。実は、一昨年の12月に、君塚さんから「ともかく室井を書きたい」「本広監督と亀山と、三人揃ってもう一度できないだろうか?」と、突然メールが来ました。それを受けて、「とりあえず会いましょう」と、君塚さんと会いました。その時に、君塚さんから、室井慎次を書きたい理由を聞きました。一番大きかったのは、「柳葉敏郎さんを、室井役から解放してあげたい」という強い思いでした。
室井を演じてきた柳葉さんが、実は27年間、(室井慎次役を大事にしていたので)スーツを着た役・スリーピースを着た役・反社の役・強烈な犯人役の、出演をお断りしていたということは、僕も聞いておりました。一方で、「室井を払拭したい」という思いで、時代劇・田舎のおっちゃん役・気の良い親父さん役などを受けていたそうです。それで、「そろそろ柳葉さんを解放してあげないといけない」と思い、二人で相談をして本作が始まりました。
室井の最後の作品になると思うと、「スペシャル一本で、27年間一緒に付き合ったキャラクターを終わらせたくない」と、個人的に思いました。それに「踊る大捜査線」はフジテレビの優れた知的財産なので、臼井さんに相談し、当時の専務であった大多亮に相談もしました。そして、「だったら、映画をやったらどうですか」というお話をいただきました。君塚さん的には、BSフジで四本のドラマぐらいと考えていたようです。でも、BSフジでは、予算的にも体力的にもそれはできないので、ここはフジテレビに、おすがりするということで、臼井さんから東宝さんにお話をしてもらいました。

臼井さん

BSフジの社長として、おすがりというのは、大変謙虚におっしゃっています。

亀山さん

何度も言いますが、今の僕はフジテレビとは全く関係がないです。もう、フジテレビの外部の人間ですから、本当におすがりするしかなくて…。

臼井さん

レジェンドOBなんですから、フジテレビの関係者ですよ。
最初にBSフジのドラマとして考えている時に、すでに亀山さんたちが、プロットを考えていて、我々に相談をいただきました。その時に「100%フジテレビの知的財産なので」という言い方をした覚えは、全くないんですが…。

亀山さん

え!(会場:笑)

臼井さん

輝かしい歴史を持つ「踊る」シリーズ、「容疑者 室井慎次」、「交渉人 真下正義」も、劇場で皆さんを楽しませてきたエンターテインメントです。映画以外の形で、世に出るというのは、正直、僕の中ではあまり考えられませんでした。いろいろなことを考えていただいたんですが、「待っているお客さんがいる劇場で、最初に届けるべきではないか」というお話から始めました。経済的な難しい話は、我々が応援することになりますが、まずは2012年が「踊る」シリーズの最後で、それから12年以上が空いているので、「待ち焦がれているお客さんに最初に届けましょうよ」と亀山さんに懇願して、使ってもらいました。

亀山さん

どうも話が美しくなっている(笑)。
最初にフジテレビさんにお願いをした時は、本作には、事件のかけらもありませんでした。ただ室井が田舎に引きこもって、ちょっといじけながら、農業をやり、里親をしている話でした。その淡々とした中で、家族や、住人との小競り合いみたいなドラマを描き、今まで大組織を改革しようとしていた官僚が、小さな家族に血を通わせるといった筋書きでした。君塚さんの言い方を借りると「ロシア映画のような」ドラマです。僕はあまりロシア映画を観たことがないので、どういうものをイメージしているのかは分かりませんが、「昔の、集団農場で働いているようなやつをロングで撮って…」というようなことを言っていました。これはBSフジでも無理だなと思いました。(会場:笑)
なので、この話を臼井さんにしました。事件のないプロットは、東宝さんにも伝わっているんですよね?

臼井さん

はい。

亀山さん

両方とも映画にしてくれるというので、僕はTOHOシネマズ シャンテくらいの規模の劇場で…。

臼井さん

シャンテは名作だらけの劇場ですよ!

亀山さん

シネフィル(映画通)に向けて、よろこんでもらえる作品になればと思っていました。でも、「踊る」と言う冠を背負うとなると、室井というキャラクターは存在感があるし、全国に何万人というファンがいます。それには答えないといけないので、一年半をかけて、脚本を作り、事件を入れたりしながらこの作品になりました。
いずれにしても、室井慎次の最後の作品として、多くの方に観てもらえる作品にしたいと思いながらやりました。柳葉さんには、中身の話をする前に、「こういったものをやろうと思っているんですけれど、どうですか」と、臼井さん経由で事務所に聞いてもらいましたが、最初は断られました。

臼井さん

柳葉敏郎さんにとって、室井慎次という役は、最も大事なキャラクターで、宝物だという大事な思いがありました。それを「今の自分が背負いきれるのか」「今の自分には、荷が重い」ということで、愛情たっぷりに「大事にしておきたいんだ」という返答をいただきました。

亀山さん

その頃、NHKの「ブギウギ」(2023年/主演:趣里)を撮っている真っ最中でした。スケジュールとしては、昨年の10月~12月ぐらいまでがちょっとだけ空いていました。あわよくば、前編の「敗れざる者」は「雪が降る前の景色を撮れたらいいな」とお話をしましたが、返事は「ノー」でした。
それで、「一度会ってくれませんか?」とお願いして、柳葉敏郎さんに会いました。そこで、柳葉さんには、君塚さんの言い方ではないですが、「室井に決着をつけましょう!」と話をしました。その時点で、ストーリーに事件は入っていましたっけ?

臼井さん

事件はまだ入っていなかったですね。「室井慎次に決着をつけたい」「室井のメッセージを残したい」ということでした。

亀山さん

その話を、柳葉さんにして、「多少、心が動いてくれたかな」という感じでした。でも、正式に「やります」という答えはもらえないまま、打ち合わせはどんどん進めていました。

臼井さん

「作ってから、判断しましょう」っていうことでしたね。

亀山さん

ところが、本作りに入ると、事件も何もない話を、本広克行というエンターテインメント大好きの監督が、「なぜ、これを僕がやるんだ?」と及び腰になりました。何度か逃げられそうになったり、悩みすぎて熱中症になって、しばらく入院するという騒ぎまでありました。そんな中、君塚さんから、「本広監督がのらない理由は、(事件現場で飛ぶ)ヘリコプターが飛んでいないから」と言われまして…。

臼井さん

(笑)。

亀山さん

「事件を入れましょう」ということになりました。何とか過去の亡霊から逃げ切ろうとする室井さんを逃さないという、今回のプロットが出来上がりました。
本広さんは、単純にやりたいとか、やりたくないとかじゃなくて、プレッシャーですよね。

臼井さん

だめよ、それを言っちゃ(笑)。

亀山さん

臼井さんは本広さんの交渉に、立ち会ってないんです。僕としては、主演男優に断られ、監督にも断られたのに、君塚さんからは「三人で仕事がしたい」って言われていて…。でも、二人ではどうにもならないんで、二カ月間は途方にくれていました。

臼井さん

柳葉さんも大事な役柄ゆえに、演じるには重い覚悟が必要だと言っていました。台本が、そんな彼の心を打って、覚悟を決めてくれたんだと思います。
先ほどの話にもありましたが、ご本人の口から「刑事役をやってこなかった」「スーツを着てこなかった」「髪型をオールバックにはしなかった」「ヤクザの役もやらなかった」と聞きました。それぐらい自分の中で室井を大事にしてきたんだと、熱い思いをうかがいました。だからこそ、「室井に決着をつける」という、一つの節目をつけたほうが良いんじゃないかと話して、柳葉さんに、それが必要なことだと思っていただけました。
本広さんは、その重責を担って、「どのようにお客さんに室井さんの思いを届けたら良いのか」悩んで悩んで、熱中症になったんだと思います。

亀山さん

本来は、僕の立場は座組を作って、「はい、こういうことでよろしく」と渡せば済むもんだと思っていたんです。でも、最後は腹をくくって、やってくださいましたけれども、柳葉さんもなかなか「うん」と言ってくれなかったし、監督も及び腰でした。監督を説得する時に、思わず「ずっとそばにいるからさ」と言ってしまったので、プロデューサーをやることになりました。今は、逆にプロデューサーを経験して、映画作りの面白さや難しさを改めて感じて、良い勉強になったと思っています。今更、僕が勉強してもしょうがないなとも思うんですがね(笑)。

臼井さん

「踊る」シリーズは、亀山さん、君塚さん、本広さんが生み出したものですからね。その三原則が揃ってこその「踊る」シリーズなので!

亀山さん

一つ言っておきたいのは、「再始動」って僕が言ったわけじゃありませんからね。別に再始動するつもりで動いたわけではありません。この作品をやるために、君塚さんが僕に連絡をくれて、僕が本広さんを捕まえに行き、柳葉さんを説得したのみです。だから、“「踊る」プロジェクト再始動”って言われると、小っ恥ずかしいです。そんなに大それた事は、まったく考えていません。ただ、最後の室井さんを描いて、きっちりと決着をつけたいという思いです。その思いで、精魂込めて作りました。

MC

本作が二部作になった理由をお聞かせ下さい。

亀山さん

27年間愛したキャラクターに対して、「二時間では足りない、本当は六時間ぐらいかけたい」という思いでした。一説には「僕らがネットドラマに売り込んだ」とされていますが、プロットを作って、いろいろなところに話に行かないと、この作品はやらせてもらえないと思っていました。プロットは、およそ五時間分あったので、「完成度を増すために、二時間+二時間の二本の映画で、一カ月待たずに公開してもらいたい」という話を臼井さんを通じて、東宝さんに頼みました。

臼井さん

最初から五時間分ぐらいの、分厚いプロットでした。久々の室井の登場に、警察を辞めた室井を説明するにも、しっかりと尺が必要でした。最後にどう終わるのかも、それなりの尺が必要で、到底二時間で収まるようなものではありませんでした。フジテレビとしては、異例の前編・後編だったんですが、亀山さん、柳葉さん、君塚さんの思いが、いっぱい詰まった、中身の濃いスタートでした。これはもう「踊る」プロジェクトらしいチャレンジだと思って、やりました。

亀山さん

OKしてもらえるとは思わなかったです。ただ、ベースには家族の話があります。家族を持たなかった男に、最後は家族を持たせたいと思いました。若い子が出ていますが、傷を持っている子たちです。でも、それを監督が、見事に暗くならずにやってくれたんだというのが、僕が観終わった時の感想でした。

MC

先ほどもお話がありましたが、プロデューサーは亀山さん、脚本は君塚さん、監督は本広監督というレジェンドスタッフが久しぶりに集結しました。これは「踊る」の正当な続編と言えると思います。制作において、いろいろあったとは思いますが、本作にかける柳葉さんの熱量や、思い入れをそばでご覧になっていていかがでしたか?

臼井さん

これは、亀山さんは言いづらいと思いますが、柳葉さんとは相当熱い議論…と言うんですかね?

亀山さん

あれはケンカですかね? 完全に僕がいけなかったんですが、柳葉さんがぐちぐちといろいろなことを言うものですから…。結構真剣に考えて、「決着をつけにいこう」と話をしているのに、何か小さなことを気にするので、ちょっと腹が立ってしまったんです。それで、「だったらやめようぜ!」って言ったら、「おぅ、やめてやるよ!」と帰られてしまいました。(会場:笑)
その瞬間に横を見たら、この企画が潰れたと思って、本広監督が大よろこびしていたので、急に悔しくなって、「何とか成立させてやる!」と思いました。それくらい熱かったです。

臼井さん

熱かったですね。お互いに譲りませんでしたね。柳葉さんには、譲れないものがあり、それは自分自身が室井のままのようでした。演じてきたことが、人生そのものという方だというのは、亀山さんは分かってらっしゃるんですけれどね…。

亀山さん

具体的には、「敗れざる者」で、死体が見つかって、現場に立ち入り禁止の黄色いテープが貼られます。管理官時代の室井さんはテープをくぐって現場に入りますが、柳葉さんは「(室井は)もう辞めた人間なので、そこに入ること自体がおかしいだろう」という考えでした。それに対して「ここでそれを言うか?」と思ってしまいました。同じシーンで出演している(矢本悠馬さん演じる)乃木くんと(甲本雅裕さん演じる)緒方さんに「テープをくぐらせて、室井、つまり柳葉さんを、中に入れてくれ」と伝えました。結果は、コメディーとも何ともつかないお芝居で、黄色い非常線の中に入っていきました。
本作でも、(松下洸平さん演じる)桜くんと一緒に、捜査本部に参加するシーンがありますが、室井は絶対に真ん中や、前には座らないんです。端のほうにいます。撮影時に、柳葉さんから、「青島っていつもどこで聞いていたの?」と聞かれて、「所轄だから、一番端っこの後ろ」と答えました。それで、捜査本部の一番左の端っこにドカっと柳葉さんが座っていたんです。監督は、もうちょっと違う角度から撮影したいと思っても、そこから撮影を始めざるを得ないので、かわいそうですが、松下さんが行ったり来たりする羽目になりました。でも、そのくらい「室井はこうはしない」「室井はこうする」ということを、僕ら以上に考えている方です。現場に入ると、室井さん、つまり柳葉さんの熱い思いが炸裂していました。

MC

ケンカしたとおっしゃっていましたが、柳葉さんご自身は「亀山さん、本広さんからの愛を感じて、この作品をやることに決めた」と、涙ながらにおっしゃっていました。

臼井さん

そんなケンカじゃないですから! 議論が白熱してクールダウンをするためにお互い席を立つ程度ですよ。

亀山さん

でも、そのまま衣装合わせまで、彼と会わなかったんだよ!

臼井さん

でも、翌日にはお互いに何か言っていましたよね?

亀山さん

翌日には「出ます」と言ってくれました。ケンカして居心地が悪かったから、「出ます」って言ったんだろうなと思っていたんです。だから、衣装合わせの時に「すみません」と謝ったら、「もういいから」と照れ臭そうに言っていました。謝る機会も失っていたんでしょうね。

臼井さん

良い大人の情熱を持ったもの作りでしたね。

MC

次に、先ほどもありましたが、11月8・9・10日に緊急先行上映が決定しました。これはファンの声に答えてということですよね。

亀山さん

そうですね。「室井慎次 敗れざる者」は、ほとんどがフリの内容なので、「~敗れざる者」を観れば、「~生き続ける者」が早く観たくなるだろうと思っていました。テレビドラマなら、一週間待てば良いですが、「五週間もあるのか」という、ファンの声も聞こえました。だから、「引き続き、頑張って仕上げますので先行上映してもらえないだろうか」という現場の声を、臼井さんに頼んで、東宝さんと調整をしていただきました。

臼井さん

その話をいただいた時に、東宝さんにはかなり無理なお願いで、劇場のご理解をいただかないとできないと思っていました。でも、亀山さんと話していて、これが「踊る」だよなと思いました。観客ファーストなんですよね。「踊る」のコンテンツは、いつも、革命というとちょっと言い過ぎですが、何かいつも革新的なことを、ファンを信じてやってきました。今回も、肌感覚で、ファンの方たちの「早く観たい」「待ちきれない」という思いに、「踊る」は答えたんです。ファンを大事にしてきたことが「踊る」スピリッツだと思いました。今回の亀山さんの相談も、「踊る」スピリッツだなと感じました。大の大人が純粋な思いを何とか実現できないかと考えているんです。そしたら、東宝の皆さんのご理解も賜れて、先行上映決定の運びになりました。

亀山さん

自分がお願いしたんですが、実現できるとは、思っていませんでした。

臼井さん

ちょっと待って! 真面目に思っていたんじゃないんですか?!

亀山さん

臼井さんの立場で、東宝さんとお仕事を何度もして、いろいろなことをやらせてもらいましたが、こんなことをやってもらった試しはないし…。(会場:笑)

臼井さん

(亀山さんも)いろいろやってきましたよ! 

亀山さん

ダメならダメで、どう盛り上げようかと考えていました。ところが、いざ先行上映が成立したと聞いた瞬間に、8日に最後の室井さんを目撃することになったら、「やはり、ショックを受けるだろうな」と思ってしまいました。
なので、ここまで僕らは、一切の取材をお断りして、本作の中身はしゃべっていませんでした。でも、また東宝さんに無理を言って、「僕のしゃべる機会を作ってもらえませんか」とお願いをしました。
僕の想いは、「最後の室井、そして柳葉さんを解放してあげたい」「27年間、室井さんありがとう」の二つです。ぜひ、そこをファンの皆さんにお伝えするために、ご協力いただければと思います。
先行上映がなければ、僕たちはまだ「試写をしない!」って強気で言っていたと思います。でも、先行上映を観たファンが、本作を観た時に、立ち上がれなくなるのは嫌です。室井さんのファンは、たくさんいますから、最後の室井を見届けてほしいとプロデューサーとしては、一番言いたいです。

MC

ここからはご来場いただいた記者の皆さまからの質問にお答えしたいと思います。

【記者質問1】

先ほど、亀山さんは「“再始動”と自分からは言ってない」とおっしゃっていましたが、本作で、室井の決着はつきました。ですが、今も捜査支援分析センターにいる方が、まだ残っていると思います。その方は、今本店(警視庁)にいるという事になります。「踊る」として、この先に期待できるものは、何かしらあるんでしょうか?

亀山さん

僕の立場では、まるっきり分かりません。例によって、知的財産権はフジテレビにありますから。少し動いていた時に「著作権はフジテレビにあります」って言われて、カチンときました。原作者が「書きたい」と言って、作ったプロデューサーがやっていることに対して「お前らが言うのか!」って思いましたが、「まぁ、その通りだなぁ」とも思いました。だから、すべてはフジテレビの指示通りですね。
ただ、今回「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」を作るにあたって、織田くんに限らず、湾岸署の全ての方たちに、素材を使うので、本作の内容までお話をしています。なので、ある意味、僕たちが動いた事はご理解いただけているかと思います。そこから先は、まだこれからですね。

臼井さん

あとは、亀山さん次第!(会場:笑)

亀山さん

だから、僕はもうフジテレビの人間じゃないって! (会場:笑)
今回、BSフジでも出資をしているから、僕は仕事ができるんです。まあ、すごく安い出資ですけれどね。

臼井さん

そこは、あまり言わないほうが良いんじゃないですか?

亀山さん

次もやらせてもらえれば、僕は大手を振って仕事ができます。でも、社業もありますので、次をやっていたら、役員会に通らないかもしれないですね…。

臼井さん

亀山さんが説明したように、湾岸署のメンバーには、今回このプロジェクトが立ち上がることを、ご理解いただいてからスタートしています。ここから先は、何が生まれるか次第だと思っています。僕ができる事は、何か一個でも動き始めたら、全面的に協力することだけです。亀山さん次第なんていう、属人的な言い方ではなく、何かが動き始めれば、何かが生まれるんじゃないかという期待を寄せながら、心して構えて待つ、みたいな状態です。

記者1

(織田裕二さん演じる)青島の現在地を、わざわざセリフで入れ込んできたということは、君塚さん的には、まだ何か思いがあるんじゃないでしょうか?

亀山さん

僕たちが話し合って決めました。もう年齢的に、湾岸署にはいられないだろうと思ったので、警視庁の捜査支援分析センターに決めました。仮に次があったとして、そこからスタートするかどうかは分かりません。
なぜ、室井さんを先にやったかというと、青島を代表とする湾岸署のメンバーは、僕たちはファンタジーだと思っているんです。あの人たちはどこに行っても生きていられます。本作をご覧になると分かると思いますが、(深津絵里さん演じる)すみれさんは、「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」で、透けて見えるような演出になっていたので、一部のファンからは「死んだんじゃないか?」と言われていました。でも、真っ向からプロデューサーと脚本家は否定していました。ちゃんと大分で生きております。多少の後遺症に悩んでいますが、元気に生きています。そういう風に湾岸署のメンバーは、今もしっかり自分の場所を見つけて生きています。
官僚チームの(真矢ミキさん演じる)沖田や、(筧利夫さん演じる)新城は、官僚なので、法律を整備したり、制度を作ったりすることに縛られています。つまり、リアルを持ち込んで来る人たちなんです。だから、「踊る大捜査線」はそのリアルとファンタジーがせめぎ合っていて、ファンタジーが気持ちよく勝つから、ヒーローになって、愛されたんだと思います。
そこで、「リアルな室井って、今何だろう」と思った時に、60歳を過ぎているから室井さんも、おそらく官僚のシステムからは外れているか、もっと偉くなっているだろうと思いました。でも、「警視総監 室井慎次」という映画を作る気は全くなかったので、こういった話になりました。ですから、おそらく「踊る」の世界観の中では、皆さん頑張っていると思います。

【記者質問2】

(日向真奈美役の)小泉今日子さんが出演されましたが、小泉さんの再登場の経緯と、どういった形で説明をされたのかを教えてください。

亀山さん

最初のプロットでは、杏ちゃんという女の子が出てくるものでした。彼女は強烈な犯罪者の娘という役で、里親は一緒ですが、その犯罪者は、架空の人物にしていました。そこで、「踊る」の匂いを、どれだけ室井さんの周りに寄せられるかを考えました。「踊る」の世界観の中で、日向真奈美というのは、「スター・ウォーズ」でいうシスだと思っているんです。暗黒面の一番強い、教祖様というか、代表選手です。それに娘がいたら、面白いだろうなと思いました。考えてみると、「踊る大捜査線THE MOVIE3ヤツらを解放せよ!」でマタニティーのような格好して絵を描いている日向真奈美が、産後すぐの姿に見えるので、「こことここの間で生まれていたら16年ぐらい経っているんじゃないかな」という話になりました。その話を、小泉さんに直接会って話をしました。そしたら、ものの三分で「分かった」と、すぐにOKしていただきました。「踊る」にとって、日向真奈美というのは、最も手強い暗黒面ということで快諾いただきました。「またやるのね。で、(日向真奈美は)どこにいるの?」「撮影は何日かかるの?」と聞かれ、「今は刑務所です」「撮影は一日で結構です」という会話もしました。
「織田さんの了解を取れているのか?」「小泉さんが出るのか?」ということを柳葉さんは気にしていました。「その二つについては、大丈夫ですよ」と伝えたところ、安心されていました。

記者2

ファンの間では、「獄中出産をして、父親は誰なのか?」という点がすごく気になっていると思います。そのあたりは、本作では触れられていないですが、設定上は決まっていますか?

亀山さん

僕は「踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の 3 日間」で日向真奈美に拘束衣をつけた、高橋先生だと思っています。でも、彼のことはマニアしか知らないと思います。青島くんとすみれさんが、日向真奈美に会いに行ったシーンで、高橋先生という監察医の先生がいたんです。なので、僕は密かにそう思っています。実際のところは、「ファンにお任せします」というところです。あと、「踊る大捜査線THE MOVIE3ヤツらを解放せよ!」で、結構、外出許可をされていました。ですから、外に行く機会は結構あったんじゃないかなというのは、君塚さんと、話をしました。

【記者質問3】

亀山さんにうかがいます。こういう「帰結」というイメージは、プロジェクトを立ち上げた頃にはありましたか? 刑事ドラマの一つの金字塔を作られたのに、枯れていく登場人物を描く趣向があったのでしょうか? また、12年前の時に、亀山さんが「興行収入100億円を狙うんだ」と言われたことを未だに覚えています。あの頃の記者として、10年後にこういうものができるとは全く思いませんでした。亀山さん、ご自身の人生にとって「踊る」はどういうものですか?

亀山さん

まず、12年前にこの帰結はまったく想像していませんでした。もっと言ってしまえば、27年前にこんなところまで「踊る」を作っていることを想像していませんでした。
実は、もう「踊る大捜査線THE MOVIE3ヤツらを解放せよ!」「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」の時点で、僕は今の臼井さんの立場になっているので、若いプロデューサーたちが引き継いでいってくれればと思いつつ、やっていました。でも、これだけのプロジェクトになっているので、これは若いプロデューサーには荷が重いと思います。
そして、君塚さんのメールの内容、これは本当に取材をしていただきたいくらいです。柳葉さんには現場でそれを見せました。約三分間ぐらい絶句して、ちょっと涙を浮かべていました。つまりそのぐらい、作り手側の皆さんの思いが詰まっています。監督をのぞいてね。

臼井さん

監督にもありましたよ!

亀山さん

監督は、室井が苦手で、青島くんが大好きなんです。
もう一つは、僕もこの年齢になって、室井さんの60歳という年齢で、組織をいずれやめていくことに関して、ちょっとだけ僕の気持ちも動いたように思います。僕は、相変わらずまだ働かされていますが、気がつけば室井さんもその年齢なんだということが、自分の中で火がついた原因だと思っています。ただ、一昨年の12月までは、1ミリも自分が映画を作るなんて考えていませんでした。
「踊る大捜査線」で、僕は人生を変えられました。これが当たったがために、管理職になってしまって、映画を作れなくなりました。あまりにデカイ船になってしまったので、ファイナルで、勝手に決着をつけたら、次の年にフジテレビの社長をと言われました。(会場:笑)で、四年でクビになります。

臼井さん

クビではないです!

亀山さん

BSフジに来て、新たなメディアって面白いなと思っています。でも、節目節目で「踊る」に僕自身も変えられたので、室井の人生とは若干違いますが、分かる部分はすごくありました。

【記者質問4】

柳葉さんに取材をした時に、和久さん(いかりや長介)と吉田副総監(神山繁)が話していたのを、室井が聞いているシーンがありましたが、そのシーンを青島と室井で引き継げたらいいなと考えていたと聞きました。その話は聞きましたか?

亀山さん

聞きました! 吉田副総監と和久さん、あの二人も思いが叶わなかった。退官した吉田副総監と和久さんは、かつての室井と青島と同じような状態でした。室井はその思いを託されたのに、果たせなかったので、青島には何も言わずに、警察を辞めたんじゃないかと話しました。テレビシリーズの最終回で、約束をするシーンがありますが、その時、青島が全部責任をかぶって、柳葉さんはお咎めなしだったんです。約束をどちらがしたかと言えば、青島がしたんです。「自分が全部かぶるから、あんたは偉くなってくれよ」と。その言い出しっぺは青島なので、自分が不甲斐なく、青島に一言も言わずに、辞めたんじゃないかという話をしました。
実は前編の頭で、頭を掻きむしったりしているのは、完全に敗れている男なんです。もうちょっといじけていてほしかったです。でも、いじけている芝居を柳葉さんがしてくれなかった。(会場:笑)
室井さんは、カッコ良いので、何かもうちょっと切なくいじけていてほしかった。でも、本人は結構いじけたことをやっているんですが、そうは見えないんですよね。
おそらく、青島には辞めるとは一言も言わずに来たけど、青島も、そんな室井さんを、どこかで許容したんだと思うという話もしました。だから、「今どこにいるんだ?」っていうセリフで聞かざるを得ない。ただ、「警視庁に呼んだのは室井かもしれないね」と、柳葉さんと話をしました。だから、「今も湾岸署にいるのか?」っていうセリフではなかった。裏では、結構こういう話をしているんですが、それが画面には出ていないですね。

記者4

青島さんが全然出ていなくて、昔の映像だけでした。

亀山さん

僕たちは、青島を出す気は全くありませんでした。あえて昔の映像だけ、つまり室井の想像している青島でしかないんです。同じ会社でも、組織が違うと「あいつ今何しているんだ?」ていうことはよくありますよね。そういうことを君塚さんと話しました。
もう一つはコロナで、突然人がいなくなるのを僕らは経験しました。コロナによって突然亡くなる方、お葬式やお通夜ができなくて、突然「家族葬でやりました」と訃報の連絡だけが来ることもあります。受け止めたくても、葬儀やお通夜に出ていないので、未だに生きている気持ちの人も何人もいるんです。思わず電話をかけて、「あぁそうでしたね」って…。僕が忘れっぽいだけなのかもしれないですが、おそらくコロナを経験していなかったらこの結末はなかったかもしれないです。

■スーパーティザー映像⑥が上映されました。

MC

最後にメッセージをお願いします。

臼井さん

このスーパーティザー映像のメイキングにあったように、真面目にまっすぐ作品を作っています。「敗れざる者」もそうですが、特に本作は、ほとばしる情熱と魂がこもった作品です。最近はいろいろな作品がありますが、こういう無骨で、まっすぐで、正直な作品があっても良いと思っています。これもまた「踊る」らしくて、正義を貫く男の話として、魂がこもった作品になっていると思います。
1997年のテレビ放送時から始まり、室井という大事なキャラクターが、本作で最後になります。熱烈なファンを含めて、最後の室井を、ぜひ劇場で受け止めてほしいと思っています。室井さん、ありがとう。最後の室井慎次を劇場で受け取ってほしいです。

亀山さん

最後に「室井さん、ありがとう」と、でかく書きました。室井さん、つまり柳葉さんも、いろいろな取材で「感謝です」とおっしゃってくださっているのを目にします。僕らも、柳葉さん、室井さんへ「感謝」です。感謝って、言葉にするのは簡単ですが、なかなか表現をするのは難しいと思います。今回の二本の作品では、感謝の気持ち映像化しました。派手じゃないですが、何か温かくなるものや、胸に来るものがあれば、皆さんに伝わったということかなと僕は思っています。皆さんへの感謝も当然ありますが、少しでも劇場でサプライズが与えられるよう、最後まで仕上げをやっているところです。11月8日に本作が先行上映されます。できれば、皆さんも、本作を観て、感謝の思いで帰ってもらえたらと思っています。11月8日が待ち遠しいです。ぜひ応援団になってください。よろしくお願いします。
あと、柳葉さんにも取材してほしいし、君塚さんにも取材してください。おそらく全員言うことが違うと思います。本当の正しさがどこにあるのかは、皆さんが判断してください。