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「新解釈・幕末伝」新解釈決起会見

2025.11.04
  • イベント

新解釈決起会見

“みんなが知っているようで知らない幕末”を、コメディ界屈指のヒットメーカーである福田雄一監督が史実にのっとりながら“新たな解釈”で実写映画化。教科書には載っていない英雄たちの物語が映画「新解釈・幕末伝」となって、12月19日より公開となります。
11月4日には、ホテル椿山荘東京で「新解釈決起会見」が開催され、革命の志士・坂本龍馬を演じたムロツヨシさん、幕末の英雄・西郷隆盛を演じた佐藤二朗さん、二人と共に時代を変えた桂小五郎を演じた山田孝之さん、そして坂本龍馬の妻・おりょうを演じた広瀬アリスさんが登壇しました。福田監督の記念すべき劇場公開映画20作目にして、初のダブル主演を務めたムロさんと佐藤さんが本作にかける熱い思いを告白すると共に、全員での絶妙なやり取りで爆笑の連続となったこの日の模様を、詳しくレポートします!

坂本龍馬役

ムロツヨシさん

坂本龍馬役

西郷隆盛役

佐藤二朗さん

西郷隆盛役

桂小五郎役

山田孝之さん

桂小五郎役

おりょう役

広瀬アリスさん

おりょう役

■決起会見として、キャストの皆さんが時代の雰囲気を感じさせる着物姿で金屏風の前に登場。華やかな雰囲気でイベントがスタートし、それぞれがお互いを紹介し合う“他己紹介”に挑みました。

MC

坂本龍馬役のムロさんには、西郷隆盛役を演じた佐藤さんのご紹介をお願いいたします。

ムロさん

25年前…。私が憧れた役者は、この方でございます。僕の中では、喜劇王。その喜劇の中に、悲劇を入れられる役者は、そうそういないと思います。この喜劇王が、とうとう登壇いたします。皆さんにご紹介させてください!(佐藤さんが出演する映画「爆弾」が公開中であることから)胸の内にいくつもの“爆弾”を秘めた…。

佐藤さん

(笑)。ありがとう。

ムロさん

その“爆弾”を昨今、いくつも爆発させている。その中にまだ、いくつの爆弾があるんだ!

佐藤さん

(ムロさんの勢いに)怖い、怖い。少し怖い。

ムロさん

皆さんのこの方への興味が、どんどん増えてきている。そんな役者だと思います。本作で、“新解釈”のこの方が見られると思います。新しいこの人を見てください。中学生が選んだ好きな四文字熟語は…、そう! 佐藤二朗さんです!

佐藤さん

四文字熟語じゃないけれどね。名前です。

ムロさん

先ほど袖で思いついたことを、ただただ並べました。

佐藤さん

あなた、すごいね!「“他己紹介”をする」とついさっき言われたのに、一週間くらい考えてきたみたい! “爆弾”まで入れてくれて、ありがとうございます。

MC

佐藤さんには、桂小五郎役を演じた山田孝之さんのご紹介をお願いいたします。

佐藤さん

今のムロみたいな挨拶はできないですが…孝之と会ったのは何年前かな…。もう随分、前だよな。TBSのドラマ…、何だっけ?

山田さん

「H2〜君といた日々」(2005年TBS系列にて放送/主演:山田孝之)です。

佐藤さん

そう。調べていただければ分かるけれど、結構前ですよ。

山田さん

(撮影は)二十一年くらい前かもしれないですね。

佐藤さん

孝之はまだ、あの頃は二十歳とか?

山田さん

二十歳とか、二十一歳かな。

佐藤さん

そのころから知っているんですよ。
今更、言わずと知れた山田孝之ですから…。役者としても尊敬していますし、何より星の数ほどサシで飲んだりもしていますが、僕がへべれけになっても、いつも世話をしてくれます。そういう意味でも尊敬しています。
(こういった紹介で)ごめんなさい。みんな知っているから良いじゃない! 日本国民みんな、知っているから…。山田孝之です!

MC

山田さんからは、坂本龍馬役を演じたムロさんのご紹介をお願いいたします。

山田さん

ムロツヨシ。1900…。(ムロさんから聞き出そうと身を乗り出す)

佐藤さん

知らないなら、言い出さなければ良かったのに。

ムロさん

(マイクを通さずにそっと山田さんに)1976年。

山田さん

(気を取り直して)1976年に生まれました。決して裕福な家庭でもなく。

佐藤さん

(笑)。ちょっと待って、ちょっと待って!

山田さん

恵まれた環境で育ったわけでもなく。とにかく努力、苦労(を重ねた)…苦労人でございます。本作もそうですけれど、ムロツヨシという人は本当に人を幸せにするために、影でいろいろな努力をしている人です。そういうことを微塵も感じさせずにやっている人です! ステキですね…。憧れます。あとは…うーん。

佐藤さん

(爆笑)。

ムロさん

(祈るように)思いつけ! 頑張って思いつけ!(会場:笑)

佐藤さん

完全にその場で思いつけ…。

山田さん

どんどん白髪が増えています。非常にカッコ良いなと思います。(ムロさんを見ながら)おそらく十年とかからず、全て白髪になると思います。ここにもやはり、ムロツヨシという人の努力が出ているなと思いますね。

佐藤さん

(笑)。それはよく分からない。

山田さん

悩んで、悩んで、本当に白髪が増えていますね。
(小声で)もう(紹介するようなことは)ないかな…。

ムロさん&佐藤さん

(笑)。

佐藤さん

小さい声で、「もうないかな」って言うな!

山田さん

(締め括るように)これが、ムロツヨシ!

ムロさん

これが、ムロツヨシでございます。

MC

では、ムロさんと佐藤さんから、おりょう役を演じた広瀬さんのご紹介をお願いいたします。

ムロさん

今回の主役と言っても過言ではございません!

広瀬さん

(笑)。

佐藤さん

本当にそうですね。

ムロさん

驚きました。

佐藤さん

世間では「福田組」と言われていますが、初めて参加される皆さんに聞くと、経験を積んだ方でも「福田組ってどんな感じなんだろうか」と緊張なさる方もいるようです。でも、(広瀬さんは)もう二十年くらい福田組にいるかの如く…。

ムロさん

そうですね。もう十回目かと言うくらい。

佐藤さん

本当です。

ムロさん

すばらしい場所を見つけてくれたなと思っています。まるで福田組がホームかのように、演じていただきました。やはり、今、日本の役者界にこの人“ありんす”。広瀬アリスさんです!

佐藤さん

最後は駄洒落か!

広瀬さん

“ありんす”です。

MC

ではいろいろとお話をうかがっていきたいと思います。まずダブル主演となりました、ムロさんと佐藤さんにおうかがいします。本作は、福田監督の劇場映画として20作目の大変メモリアルな作品となりました。お二人はその作品中、なんと19作に出演されているとのことです。

佐藤さん

そうなの? そんなに?

ムロさん

むしろ、出ていない一作が気になる。

佐藤さん

何だろう! 気になってしょうがないね!

MC

これまでの歩みも含めて、本作への思いを教えてください。

ムロさん

おそらく一作目が「大洗にも星はふるなり」(2009年公開)だと思うんですが、その時に主役をやっていたのが、隣にいる山田孝之でございます。福田組では、僕は常に山田孝之さんが真ん中に立って作品を支えてくれている周りをウロチョロして、遊んでいました。遊べない孝之の周りで遊んで、それをお客さんに観てもらって、笑ってもらうというのがほとんどでした。
数年前、コロナ禍で家にいなければならない期間の時に、私はやりたいことリストを作成しました。そこに「福田組を背負う側になりたい」という一つの願いを書いたんですね。そして、その期間が明けてすぐに、福田さんに会いに行きました。「僕に一つ、作品を背負わせてくれませんか」とお伝えしたところ、福田さんが即答で「そろそろ良いね。できるね。やろう」と言ってくださいました。ただ、「ムロくんが一人で背負うのも良いんだけれど、良かったら二朗さんと一緒にやってくれないか。それが一番、僕のやりたいことなんだ」と言われましたので、次の日ぐらいに二朗さんに連絡をして、会ってお話をしました。今回は、僕が言い出しっぺでございます。僕が言い出しっぺの作品で、こんなにステキな椿山荘で、まさかこうして制作発表ができるとは…感慨深いです。そんな思い入れがあるので、今回は非常にやりがいを感じています。

MC

直談判で始まったわけですね。佐藤さんは、ムロさんから初めて今回のお話を聞いた時のことを覚えていますか?

佐藤さん

もちろん、覚えています。僕は福田と知り合ってもう二十年くらいになるのかな。福田とムロと僕は、仲が良くて、しょっちゅう会っているイメージがあるかもしれないですが、プライベートで会ったのは実は一回だけですからね。しかも、その時も「舞台に出てほしい」という話で、「分かった」というほんの三十分くらいのことでした。
だから、今回ムロから「お話があります」とメールが来た時に、「珍しいな」と思いました。僕が一番覚えているのは、先にムロが席に着いていて、手前のテーブルに背中を向けて座っていたことです。要するに、僕のために上座を空けていたんです。
僕は、昔営業をやっていたので、そういうのを気にするんですが、「ムロもそういうことを気にするんだ!」と思ったので、そのことを一番覚えています。
そして、一つ申し上げたいのは、孝之も含め、三人で福田とずいぶん作品をやってきました。今まで福田は、「適当にやっています」という体(てい)で、「勇者ヨシヒコ」シリーズ(2011年、2012年、2016年にテレビ東京系列にて放送/主演:山田孝之)の脚本も「二時間で書きました」みたいなことを話していましたが、その前にある膨大なシンキングタイムのことは一切言わない。笑いに関しては「これだけ努力した」「こんなにこだわった」ということを話しても、それが笑いに繋がらないから、いくら努力していようと、福田は“適当感”を出していたんです。
そんな福田が、この作品に関しては、初めて「ちょっと汗をかきました」と言おうとしています。本作は「ギャグ映画ではなくて、喜劇なので、熱い思いを持って、汗をかいて作りました」と言うつもりだと、三人で取材をしている時に話していました。
僕は、それがすごく腑に落ちるというか…。そういう意味では、これまでの福田組の通過点というよりは、ある種の新境地…そう言って良いのかは分からないですが、また新たな福田組として、皆さんに観ていただきたいという思いがあります。

MC

山田さんにおうかがいします。これまでムロさん・佐藤さんとは何度も共演されていますが、山田さんから見たムロさん・佐藤さんは「実はこんな人だ」というお二人の魅力について教えてください。

山田さん

これは、過去にも言っていますが、二人ともすごく真面目な先輩です。

ムロさん

本作では、「薩長同盟」を描く大事なシーンが台本のページ数でいうと三十八ページ。基本、ずっと三人で座って会話をするシーンがあります。これは初めてでしたね。

佐藤さん

そうねえ。しかも、CGとか仕掛けがあるわけじゃなく、三人のおじさんがただしゃべりまくるという(笑)。

山田さん

あれはすごい緊張感でしたよね。

ムロさん

今までにない緊張感でした。

山田さん

自分もそうですが、お二人も、やっていることはくだらなく見えるんですが、すごく集中して、ピリピリしていましたね。というのも、福田監督からは「絶対に読み合わせをしてはいけない」「読み合わせ禁止」と言われていたんです。読み合わせをしようとしなくても、現場で待機している時って、誰か一人俳優がちょっとセリフの確認をし出すと、相手の人がセリフを返して…というように、自然と掛け合いが起きるものなんです。でも、今回はそれが禁止されていたので、みんな離れて座っていました。

MC

薩長同盟を描く、とても大切なシーンですね。そのお話は後ほど詳しくおうかがいしたいと思います。
広瀬さんは、今回が初めての福田監督作品への参加となりました。オファーを受けた時の感想を教えてください。

広瀬さん

最初に台本を読ませていただいて、「これをノリノリでやるのは私ぐらいだな」と思いました。なので、おりょうを演じることがとても楽しみでした。

MC

現場の雰囲気はいかがでしたか?

ムロさん

ピリピリしていたんですけれど、アリスさんがいた時は…。特に、アリスさんは今回モザイクがかかるシーンがございます。ネタバラシをしてしまいますが、そのモザイクの中は全身タイツなんですよね(笑)。

広瀬さん

はい、全身タイツです。

ムロさん

全身タイツを着て、役者さんが待つ場所で堂々としていました。「ムロさん、おはようございます」と、堂々としたものでしたよ。あれはすばらしいですね!

広瀬さん

あの時、「周りの方のほうが気を遣うんだ」と初めて気づきました。

ムロさん

全身タイツで、あんなに堂々とした人はいませんよ。私たちは着物を着て、全身タイツは一人だけで、違和感しかない人が、あんなに堂々といられるんだと…。「頼もしいなあ!」と思いました。

MC

初めての福田監督作品であり、初めての全身タイツでありながら…。

広瀬さん

あ、全身タイツは二回目だったんです。特に恥ずかしくはなかったです(笑)。

ムロさん

(全身タイツであそこまで)恥じらいなく、堂々とした人はそうそういないと思う。

MC

本作のポイント、「坂本龍馬や西郷隆盛を始めとする、新時代を作った幕末の偉人たちは本当に英雄だったのか」。教科書には載っていない英雄たちの物語というところをうかがっていきたいと思います。
「坂本龍馬が実はこんな人だったかもしれない」という新解釈の“ムロ龍馬”を演じられていかがでしたか。

ムロさん

福田組で“新解釈”となりますと、もしかしたら福田さんの思いついた作り話、思いついた言葉、人格が描かれているというイメージを持たれるかもしれません。でも、史実にあることをしっかりと並べつつ、福田さんが「実は坂本龍馬はこんなヤツだったんじゃないか」「こんなヤツだったら、こういうこともあり得るぞ」という想像を膨らませて書いている脚本となります。
福田さんは、今回の坂本龍馬を思いついた時に、「これはムロツヨシだな」と思ったらしいです。何もやっていないくせに「まあまあ、まあまあ」と、人の間に入り、どちらともそんなに仲が良くないくせに、仲の良いふりをして、いつの間にか溶け込むヤツ。…ひどいイメージですね。自分で喋っていても「ひどいな」と思います。
福田さんの中での自分のイメージが「出てもいない作品の打ち上げに出ている役者」だったんです。確かに出ていない作品の打ち上げに、二十作以上出ているんです。

佐藤さん

自分が出てない作品の打ち上げに行ける役者って、君しかいないからね。だって、出ていないわけだから。

ムロさん

それくらい仕事がほしかったわけですよ! それくらい芝居をする場所がほしかったわけですよ!

佐藤さん

「出ていない作品なのに、打ち上げに出たのは二十作」と言ったけれど、 「二十作」という言い方、やめて! 出ていないから(笑)!

ムロさん

(笑)。そうか…。

佐藤さん

せめて、二十回とかにして。

ムロさん

そのイメージと、福田さんの思う坂本龍馬のイメージがピッタリだったということで、僕が本作で坂本龍馬を演じることになりました。
どうなんでしょうか。世間の皆さんのイメージとは全く違って“無骨で真っ直ぐな人間と”いうイメージが、ムロのパブリックイメージだと思うんですが…。

佐藤さん

え? (言っていることがよく分からないという困惑から)ごめん、ごめん、ごめん。どういうこと(笑)?

ムロさん

ムロのパブリックイメージがですね…。

佐藤さん

ごめん、ごめん。ちょ、ちょ、ちょ…。聞き捨てならんよ! ムロのパブリックイメージが、「無骨」?

ムロさん

無骨で、真っ直ぐしか投げられない…。

山田さん

何か、ムロツヨシさんの紹介をお願いされて、出てこない理由が分かりました。

佐藤さん

捻り出していたもんな。

山田さん

最終的に、ムロさんが亡くなる時に「何をやった人なの?」と聞かれても「ムロさんって何をやっていたんだっけ」となると思います(笑)。

佐藤さん

(爆笑)。それがムロツヨシであると。

ムロさん

それが全て、今回の坂本龍馬のイメージ(笑)。

MC

ムロさんのイメージする坂本龍馬と、本作の台本を読んだ坂本龍馬のイメージに違いはありましたか?

ムロさん

今回、演じるにあたって、他の坂本龍馬を見ないようにするか、どうしようかと思ったんですが、「龍馬伝」(2010年放送のNHK大河ドラマ/主演:福山雅治)は観ようと思いました。昨今の坂本龍馬はどう描かれたかということで、「龍馬伝」をずっと観ていました。観れば観るほど、本作の台本の坂本龍馬とは全く違うので、「龍馬伝」とは違う龍馬を演じられることに、やりがいを感じています。
みんながどう思うか、坂本龍馬ファンの方がもちろん怒ることもあるかもしれないですが、史実から紐解いたら、「こういうこともあり得る」「もしかしたらこういう人が今この世の中・この時代に必要なのかもしれない」、「『まあまあまあ』というだけで何か時代が動いたら、争いが終わるかもしれない」「この人がいたら終えられるかもしれない」という目線も今回の映画には入っています。
本当にふざけたコメントを並べていますが、このふざけたヤツが一人いて「あんなヤツいちゃダメだ」「あんなヤツがいるからおかしいんだ」と思われながら、「そいつがいることで攻撃し合っている同士が、仲良くなったりするかもしれない」という期待を込めて、演じております。

山田さん

ムロツヨシが、今芸能界の中心の方にいることの言い訳をずっと聞かされているようです。

ムロさん

いやいやいや(笑)! 私はそんな、ただ(芸能界に)いさせてもらっているだけで真ん中にいるわけではないです。ちょこっと、何カ所か…普通は一カ所なんですが、居場所を何カ所か作らせていただいて、この世界にしがみついています。一つでも多くの作品を、一行でも多くのセリフを皆さんに届けられるよう、これからも努力し続けたいです。

佐藤さん

これが今回の龍馬だよね(笑)!

MC

では、先ほどのお話にもありました、薩長同盟のシーンについて詳しくうかがいたいと思います。ページ数にすると三十八ページにも及んだとのことですが、山田さんは台本をご覧になった時いかがでしたか。

山田さん

ついにちょっと、福田さん、おかしくなってしまったのかな…と思いましたね(笑)。
ページをめくっても、めくっても、ずっと次のシーンが来ないので、確か一回台本を閉じたと思いますね。

佐藤さん

とりあえず、閉じようと(笑)。

山田さん

「え?」と思って…。普通は、十ページくらいで次のシーンが来るんですが、それが来ない。もう一回見返して、今度はページ数を数えながら読んで、「どうやって撮るんだろう、こんなもの撮れるわけがないだろう」と思いました。

MC

普通はそれぐらいのページ数を一回で撮ることはないわけですね。

山田さん

まあ、ないですね。一カ月くらいの稽古をして臨む舞台とかだったら分かりますよ。でも、映像の場合は、みんながそれぞれで自習練をするしかないじゃないですか。(芝居の相手が)どのようなリズムで来るのか分からないところもあるので…。それを、現場で三十八ページ分を合わせていくというのは、無理があるだろうと思って…。
そして、現場に行ったら、「読み合わせ禁止」と言われたんです。

ムロさん

他でも「読み合わせ禁止」とわざわざ言葉にする組は、ないと思います。

MC

なぜ、読み合わせは禁止だったんでしょうか。

ムロさん

それは福田さんにしか分かりませんが、我々の解釈では、福田さんはお芝居の“鮮度”をとても大事にされます。読み合わせをすると、芝居に慣れるわけですよね。相手の方が言うセリフに、耳が慣れます。慣れたほうが良い会話ができることもたくさんあると思うんですが、福田さんの場合は「慣れないでほしい」と…。その時の驚きや「こう来たか」と感じて「おっ」となって次のセリフを出す“間”も大好きだったりするので、そういう意味での「読み合わせ禁止」なのかなと思っています。
僕の演じる龍馬のシーンは、おちゃらけたところが多くなりますが、僕がいなくなった二人の芝居というのは、今回の見どころの一つでございます。「時代を動かさなければいけない」という使命感を持った二人が、魂をぶつけ合う。本当に、僕がいなくなってから、僕がいないからこそできる…、でも僕がいたからこそできるその会話。それは、三十八ページの中のたった一ページかもしれない。そこをやるために、それまでをやっていたんだと思える場面になっています。そこは見どころとして大事にしたい。本番は、僕がいなくなってからですね。

佐藤さん

この間、ムロと僕と福田の三人の鼎談で「福田がこれを言うんだ」と思ったのは、「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏について、「それが大好きな人たちの夢を壊しちゃうかもしれないけれど、わざとセリフを噛んでいるし、わざとセリフを忘れています。それが福田組の笑いの作り方です」と言ったんです。つまり、先ほど言った「『今回の作品に関しては、汗をかきました』と言おう」ということだと思います。
薩長同盟のシーンに関しては、僕らはもう必死になって、笑いを取りにいっています。そういうことを今までは言わなかったんですが、実際には、「真面目で芝居に対して真摯なムロツヨシ」という男がいて、孝之と僕と三人で一生懸命に笑いを紡ぎ出しています。ちょっと引くくらい長いシーンですが、僕は観ていて全然退屈しなかったので、ぜひ本作の大きな見どころの一つとして観ていただきたいです。

山田さん

僕は、お二人がダブル主演でということで、「何か自分でもできることがあったら」と思って参加したんです。「撮影は短いです」と言ったけれど、結構長いし…。負担は大きいし…(笑)。
ただ、観た人たちに笑ってもらえれば良いなと思って、必死にやった次第です。

佐藤さん

船のシーンも大変だったよね。

ムロさん

海のシーンは、大変でした。たった数秒のシーンですが、二日間かけました。イカダから落ちるシーンを、六パターンくらい撮ったんですよね。撮る度に助けてもらって、元に戻って…というのを繰り返しました。二朗さんは肉襦袢を着ていたんですよね。

佐藤さん

(笑)。肉襦袢を着ているし、みんなは泳げるけれど、僕はカナヅチなので…。

ムロさん

その恐怖感もあって。

佐藤さん

本当に必死だった。

MC

広瀬さんは今回福田監督作品に初参加となりましたが、今までにない“おりょう像”はいかがでしたか?

広瀬さん

本作の撮影に入るまで、恋愛ドラマを撮っていたんです。苦しいシーンやシリアスなシーンが多かったので、このモヤモヤを発散させるかのようにおりょうを演じていました。だから、ずっとムロさんに、ガーッと…。

ムロさん

ずっと私に、ラブストーリーではないキレ散らかし方をするわけです。しかもそれが、生き生きとしているんです。

広瀬さん

(笑)。はい。

ムロさん

“生き生きアリス”が、そこにいるんですね!

広瀬さん

そうです。お三方はとても濃密な長い期間を過ごされたと思うんですが、私はジャブのような三日間だったので…。

佐藤さん

(笑)。うまいこと言うね!

広瀬さん

割と軽めの三日間だったので、本当に生き生きとやらせていただきました(笑)。

佐藤さん

でも、あんなに嬉々としてジャブを打つ人、いる?

ムロさん

いないですよね。

佐藤さん

ものすごく目を輝かせてジャブを放っていたから…。

ムロさん

ジャブなんて嘘ですよ。完全にストレートでしたから。思いっきり何回もストレートをやってくれましたから。「避けきれないストレートを何回やるんだ、この人」と思っていました。

佐藤さん

ムロは何回か食らっていました(笑)。

ムロさん

食らっていました(笑)。

MC

役作りに向けて、どのような準備をしましたか?

広瀬さん

福田さんからは、「今回のおりょうは、ふざけられる人を選んだと思っています」と言っていただいたので、クランクイン前から肩をブン回して「よし!」と言って現場に入りました。

ムロさん

ご本人は言わないと思いますが、あのセリフを早口で言うには、なかなかご準備はされているはずです。「準備されてきたんだろうな」というくらい早口で全部言い切っています。(佐藤さんに向かって)すごかったですよね。

佐藤さん

ああ、もう…。

ムロさん

大したもんです。(会場に紹介するように笑顔で)広瀬アリスです、よろしくお願いします。

広瀬さん

(夫婦役のムロさんと一緒に息ぴったりにお辞儀をしながら)よろしくお願いします。

MC

本作をどのような方に観ていただきたいと思いますか? 本作をご覧いただく皆さんへ、メッセージをお願いします。

ムロさん

クソ真面目に、本気で、喜劇を作りました。史実のパロディではなく、「もしかしたら本当にこういうことがあったかもしれない」というものを含めた喜劇でございます。ぜひ皆さん、ご家族、お子さんと、恋人と、おじいちゃん、おばあちゃんと観てほしいと思います。
喜劇の義務教育が、今回完成しました。これは、義務教育でございます。ぜひ皆さん、本作は、義務教育の「新解釈・幕末伝」。義務教育、ぜひご覧ください。義務教育です! 義務でございます! 義務の映画が初めてできました!

佐藤さん

うるさいよ(笑)。(ムロさんと確認し合いながら)これくらいで良かった?

MC

では佐藤さんからも、メッセージをお願いいたします。

佐藤さん

ムロが言ったことと重なりますが、福田は大真面目に歴史を勉強して、大真面目に「坂本龍馬ってこんな人なんじゃないか」って取り組みました。僕もそうですが、観ていたら「本当に坂本龍馬ってこういう人だったんじゃないか」と思ってもらえるかなという気もするんです。そして、これも先ほどムロが言いましたが、今の時代、いろいろな国で争いがあり、その中にはそれぞれの義があって、「自分が正しい」と思っています。その折り合いがつかない中で、本作でムロが演じる坂本龍馬みたいに「まあまあ、まあまあ!」と言うだけの人が、今の時代こそ必要なんじゃないかと思えてきます。そういう意味でも、この作品は「笑って、泣けて、熱くなる」という東宝の宣伝部が考えたコピーがありますが、本当に坂本龍馬はこういう人だったかもと、思ってもらえるような気がしています。

MC

また大きな争いだけではなく、私たちの日常での争いにも「そういう人がいてくれたらな」と思いますよね。

佐藤さん

そうね、それはあるね。

ムロさん

先ほど伝え忘れましたが、いつもの福田組の雰囲気はもちろんございます。ただ、今回観てほしいのは、先ほどはふざけながらご紹介しましたが、「新解釈・佐藤二朗」も今回含まれています。福田組では絶対出さなかった佐藤二朗が観られます。だからこそ、今回の「新解釈・幕末伝」は喜劇ではありますが、最後のシーンはなぜか大の大人がちょっとほろっとくるようなシーンがございます。自分で言うのは恥ずかしいですが、喜劇ということだけが先行してしまうと、皆さんの楽しみがそれだけになるのも悔しいので、ここは敢えて恥ずかしいですが言わせてください。そういうシーンで、佐藤二朗とムロツヨシがクソ真面目に喜劇から少し外れたお芝居をしています。そこはぜひ、スクリーンでご覧ください。

■記者からのQ&Aのコーナー

MC

では、そんな記者の皆さんから、質問をお受けしたいと思います。質問がある方、いらっしゃいますでしょうか。

【記者①】

広瀬さんは初めて福田監督の作品に出演されましたが、以前から飲み仲間である佐藤ニ朗さんに、アドバイスをもらったことはありますか?

広瀬さん

全くないです。(会場:笑)

佐藤さん

うん、そうだよね。(と認めつつ、立ち上がって広瀬さんの姿を隠すようにしてお説教)少しは「ある」って言いなさい。コメントを変えて、もう一回言いなさい。

広瀬さん

私は、二朗さんとは二度目の共演になるんですが、実は二回とも今回のような二朗さんのお芝居しか観たことがないんです。コメディのお芝居をしている二朗さんを実際に観たことがなかったので、逆に安心感のある感じでお芝居をしました。

佐藤さん

なるほど。一回目の舞台(「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」2019年公演された舞台)も割と、シリアスな感じだったもんね。

【記者②】

ムロさんの熱い思いからスタートした本作。今回の作品に向けて、お二人で特別に意識したこと、話し合ったことはありますか?

ムロさん

僕も含めて、福田組に参加する役者さんは、自分で思いついたことや、台本を読んで「やりたい」と思ったカードを持って現場に行くんです。今までの佐藤二朗さんも、必ずいくつかのカードを持って現場にいらっしゃって、僕と一緒にお芝居を構築していくのが通例だったんです。でも、本作では初めてカードを持って来ない佐藤二朗を見ました。カードを全く持たず、現場にいることに驚きと、ちょっと覚悟を感じました。だからこそ、僕は、現場に行くたびにカードを増やして行きました。僕がやれることは、「いつもの福田組のムロツヨシ」であり、「多めのカードを持って行くこと」だと思いました。それを二朗さんや、山田くんに受けてもらうという、覚悟をして臨みました。
また、山田孝之という役者は、皆さんもご存知の通り、しっかりと芯の通ったお芝居されます。そこを敢えて、僕が邪魔するようなことを心掛けました。それが今回の僕の役割かなと思ったので…。主役という大それたことではなく、役割をしっかり、明確に持って臨んでいました。

佐藤さん

今ムロが言った通りです。いつもの福田組からさらにギアを上げて、そちらのベクトルで行ったムロツヨシ。そして、これからご覧になるお客さんのためにもそんなに多くは語らないですが、ムロとは逆のベクトルに行った僕。もしかしたら、そこが一つの見どころになってくれたらうれしいなと思っています。

【記者③】

福田監督作品初参加ということですが、驚いたことがあれば教えてください。

広瀬さん

本番まで、ほとんどテストがないことです。一回段取りをやって、「撮っていきましょう」という感じで…。やる側としては、緊張感があります。もちろん、福田さんが鮮度をすごく大事にされているのは分かっているので、自分が噛んだらもう一回やらなければいけないし、そうすると鮮度が落ちていきます。そういった意味で、意外と役者側はとてもプレッシャーがかかる現場だなと思いました。でも、とても良い緊張感の中でやれたと思っています。

ムロさん

芝居の鮮度を優先する福田雄一のやりたいことを守るために、プロフェッショナルなスタッフさんがいます。本当は、テストって役者のためでもありますが、照明部、撮影部、録音部、美術部さんなどのスタッフさんのためのものでもあります。そこを、一発で本番ができるように準備をするスタッフさんが、本当にプロフェッショナルだと思います。真面目ですみません。(ニッコリとしながら)ちょっとそのことを付け足したいと思います。

佐藤さん

お前、最後に良いことを言ったなあ!

広瀬さん

確かにそうですよね。

ムロさん

すごいんですよ!