「ラーゲリより愛を込めて」高校生試写会
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高校生試写会
第二次世界大戦終了後にシベリアの強制収容所(ラーゲリ)で不当に抑留されながらも、生きることへの希望を捨てなかった人物・山本幡男。ラーゲリの一筋の希望の光となった山本幡男の半生を二宮和也さんが演じる「ラーゲリより愛を込めて」が、12月9日より公開となります。11月22日には、「作品を通してシベリア抑留の歴史を少しでも多くの方に知ってほしい。特に若い学生の方たちに観て、感じて、考える場にしてほしい」との思いから、東京・文教大学付属高等学校で試写会が行われ、主演の二宮さんが高校1年生230名の前にサプライズ登場しました。高校生から作品の感想や質問を受け付け、温かな交流を育んだ二宮さんが、学生たちに希望の言葉をプレゼントしたイベントの模様を詳しくレポートします!
二宮和也さん
山本幡男役
■学校の特別授業として<シベリア抑留>を学ぶために本作を鑑賞した東京・文教大学付属高等学校一年生の皆さんの前に、二宮さんがサプライズで登壇しました。二宮さんの登場を全く知らなかった生徒たちからは大歓声が湧き上がりました。
二宮さん
このような機会をいただきまして、本当にありがとうございます。試写会は何度かやっていますが、こうして若い世代の方々に観ていただくのは初めてなので、どういう感想を持たれたのかということも聞かせていただければと思っています。よろしくお願いいたします。(会場:拍手)
MC
今日はせっかくの機会ですので、高校生から二宮さんに聞きたいこと、そして二宮さんから高校生に聞きたいことそれぞれを質問できるような機会になればと思っております。
二宮さんは普段、高校生と会話をする機会はありますか?
二宮さん
いや、(ジャニーズ)ジュニアの子たちぐらい…。うちの若い子たちぐらいしか、出会う機会はそんなにないですね。
MC
ということは、女子高校生たちと話す機会はなかなかありませんね。
二宮さん
ないよ! 話す機会があったとしたら、怪しい匂いがしません?(会場:笑) やっぱり、なかなか出会えないです。
MC
こういった若い世代に本作を観てもらうことについて、どのように感じていますか?
二宮さん
なかなか難しい作品だと思いますので、こういった機会を作っていただいた学校関係者の皆さん、先生方には本当に感謝しています。そして、観ていただいた生徒の皆さんにも感謝です。今日は僕が作品の代表として来ていますが、いろいろな人たちが関わった作品ですので、皆さんの感じたことを聞けたらそれを持ち帰りたいと思っています。
MC
今日は230人の方がいらっしゃいます。ではさっそく、高校生の皆さんに感想を伺っていきたいと思います。
高校生1
山本幡男さんの姿がとてもカッコ良くて、印象に残っています。 最初は自分を卑怯者だと思っている人や、なかなかみんなの輪に入れない人、収容所で生きる希望を持てない人たちがいましたが、山本幡男さんが前向きにいろいろな人を勇気づけているのがとても印象に残っています。歴史の授業で、今ちょうどこの範囲をやっていて、「シベリア抑留」という言葉は知っていました。でも、実際にどんなものかは分かっていなかったので、本作を観て、想像以上に残酷で、衣食住もままならなくて、労働をたくさん強いられて、とても過酷な環境の中でこうして生きていたんだと思うとすごく感動しました。また、今こうやって笑顔で学校生活を送ることができているのも、そういう時代があったからこそなんだと思いました。(会場:拍手)
二宮さん
(感想が)素晴らしくないですか? もう五回ぐらい観ました? 一回観ただけでそれだ!(会場:笑) 年齢とか関係ないのかもしれないですね。一回観ただけで、こんな感想が出てくるのは、読解力、理解力がすごいんだと思います。
MC
今、学校でちょうどこの辺りの授業やってらっしゃるんですね。
二宮さん
約60万人の方が収容されていて、その1割にあたる約6万人ぐらいの方が現地で命を落としたことなど、数字で習う勉強ももちろんあります。でも、そこからもう一つ奥に入って、例えば自分が家族の中で息子の役回りや父親の役回りをしている場合、そこに付帯する家族の人数を考えると、抑留者だけでなくその影響は何百万人にも膨れ上がると思います。劇中の北川(景子)さんが演じたモジミがそうですが、“待つ側”の人間の戦いもある。「誰が悪いのか」ということはあるんだけれど、その悪い人に抗えない環境もある。「全員送り返しましたよ」と言って送還が止まることもあった。人の力の限界や、無力さを感じることもあったと思います。僕らもこの作品を作る時に、そういった事実を過小にも過大にも評価せずに、きちんと自分たちが習った、勉強したような尺度で作りました。その中で幡男さんの人間力が伝わっていると思うと、我々の作ったものは間違いではなかったんだと自信が持てました。ありがとうございます。
MC
皆さんに聞いてみましょうか。二宮さんの演じた山本幡男は、すごく良かったと思った人は手を挙げていただけますか? (会場から一斉に手が挙がる) 全員ですね!
二宮さん
そりゃ、(ここに本人が)いますからね。(会場:笑)
MC
では、引き続き感想を伺ってみましょう。
高校生2
本作を観てとても感動したのが、山本幡男さんの思いが巡り巡って伝わったというところです。山本さんが持っていた希望を、妻や息子さんに託したことで、その希望が日本に残ったんだと思います。ラーゲリという、過酷な環境の中で生きる希望を失っている仲間たちに、幡男さんが持っていた希望をつないで、その希望を仲間の方々が大切にしていたということに、生きることの尊さを実感しました。ありがとうございました。
二宮さん
本当に素晴らしい感想ですね。こうしてコメントを聞いていると、自分たちが伝えたかったことが本当に伝わっているんだと安心します。映画というエンタメとして考えた時に、僕がこの作品について非常に面白いと思っていたのが、「エンディングが四回ある」ところなんです。それはとても面白い作りになっていると思っています。起承転結があって、どこまで盛り上げて、最後のオチでどれだけ大きなエンディングを迎えられるかというのが、基本的な映画の作り方だと思うんです。でも、この作品には起承転、結、結、結のような作りでそれぞれを伝えるためのエンディングがある。そうやって何層も段積みになっているところが、映画の作り方として面白いと思っています。今回、人間の生き様やシベリアの実話を感じていただけたとしたら、今後観ていただく時には映画の作り方を観ていただけると新鮮なものがあると思います。出ている人たちが、みんなお芝居が上手だという点も改めて感じてもらえると嬉しいなと思います。本当に(高校生の)皆さん理解力がすごい。
高校生3
緊張と感動でうまく言葉が伝えられないんですが、山本さんの「何があっても生きよう」という気持ちを忘れないで過ごしている姿に、収容所にいる人たちが影響されたということにジーンと来ました。今、私たちがここにいるのは、実際にこういう経験をした人がいて、こういう過去があるからだと改めて実感して、心を打たれました。
MC
これが実話だと聞いた時には、どのような感想を持たれましたか?
高校生3
自分が今すごく幸せに生きられているからこそ、「昔の人はどういう気持ちで生きていたんだろう」「どうして希望がない中で生きられたんだろう」と思って歴史の勉強をしていました。この作品を観て、「そこに希望はあったんだ」「これは実話なんだ」と知ってすごく心を打たれました。
二宮さん
この作品は、「時代や歴史」「家を継いでいく」という話だと思うんです。本当に(今言っていただいた)そういうことですよね。先人たちの頑張りがなければ今の自分がないというのは、まさに僕もすごく感じていることです。
僕のおじいさんも四年間、シベリアにいたんです。だから、「とても縁深いものだな」と思って今回この作品に参加しました。うちもおじいさんが帰って来なかったら、二宮はここにいませんから。もちろん、おじいさんの娘として生まれたうちの母がいて、母が父と出会って、二宮が誕生するわけですが、本当にどこか一つでもかけ違いがあったら、僕はこの作品に出られなかったし、僕はこの世の中にいなかったかもしれません。もっと言えば、おじいさんが帰って来なかったら、そこで家が終わっていたかもしれないんです。本当に、どこでどうなるか分からないわけですよね。
僕らも、この作品を作る意義と言ったら大袈裟かもしれないけれど、こういう事実があったことを忘れないでほしいと思って(本作を)作ったところもあります。
今、この作品は世の中に出ようとしているところです。本当にやってみなければ分からないこともあります。観てくださった人たちに「人間ってあの時代でもこの時代でも、この先の時代でも、根っこにあるものは変わらないんだな」ということを少しでも感じてもらえたら、僕らはそれだけで満足だったりします。この(若い)世代にとってちょっとでもグッと来るものがあったとしたら、それだけでもありがたいと思います。
MC
本作は、若い世代にこういった事実を伝えていく“架け橋”のような役割を担っているのかもしれませんね。
二宮さん
僕らができることは「それをいかに説教臭くならないように伝えていくか」ということだと思うんです。僕らは感情的なものを伝える一方、学校という教育の場では、事実をちゃんと伝えていく。この両面があると、歴史というものがより身近に感じられるのかなと思います。
MC
本日二宮さんはサプライズでの登壇ですが、事前に「映画関係者に聞いてみたいこと」として高校生から質問を集めました。答えていただいても良いでしょうか。
二宮さん
はい! ありがとうございます。
質問1
山本さんは抑留者仲間とコミュニケーションを取って、絆を深めていきました。 周りの人たちとのコミュニケーションを取る能力は、今後大人になる上で大事になると思っているのですが、人とコミュニケーションを取る上で大切にしていることはありますか?
二宮さん
僕はあまりコミュニケーションを多く取るタイプの人間ではないですが、「会話の入口で否定から入らないこと」「相手の言っていることを否定しない」ということを大事にしています。基本的に、肯定でやり取りすることかな…。心がけているわけではないですが、そのほうがうまく話が続くような気がしています。
MC
「いや…」とか「でも…」と言うわけではなく。
二宮さん
「そうじゃなくて」ではなくて、「そうなんだ」とか。「ウソ!?」と聞くよりも、「ホント!?」と聞くとか…。そういったマインドの違いはあるかもしれないですね。それでちょっとした違いはあると思います。
みんなは今、16歳くらいですか? 僕は16歳ぐらいの時にちょうどデビューをして、その当時はやっぱりとがっていた気がします。(会場:笑) 自分の考えが一番正しいと思っていた年齢だと思います。でも、20歳ぐらいまではとがっていても良いんじゃないかなと思います。そんなこと言ったらダメかな? 先生、ごめんなさい!(会場:笑) 学校が大変になっちゃう!
MC
二宮さんにとっては、とがっていた時期だったんですね。
二宮さん
そうです。先生方は大変かと思いますが、この時にとがっていたほうが大人なってから丸くなれます。(二宮さん&会場:笑) 大人になってとがるのが、一番イタイ。(二宮さん&会場:笑) だから今、学校という社会でとがって、先生たちに怒られたほうがまだ良い! そんな気がします。(MCに向かって) とがっていましたか?
MC
バリバリとがっていました。(会場:笑)
二宮さん
おおー! 先生たちは心が広いから甘えましょう! 今のうちにいろいろと教えてもらってください。でも、自分が行動をしないと教えてもらえない可能性もあるから、そこは頑張って楽しむこと! 楽しくいきましょう。
質問2
高校生の時に「これをやっておいて良かった」「やっておけば良かった」など大人になってから感じたことはありますか?
二宮さん
学校行事だな! 大前提として、僕の話を「寂しい」って思わないでね。僕、学校の行事ってほとんど出れていないんですよ。仕事の都合上出られなくて、卒業アルバムの後ろのほうっていっぱい思い出の写真が載っているのに、そういうところに僕はまったく写っていなかったんです…。
文化祭や体育祭、宿泊合宿みたいなものも、今はコロナ禍の状況でどうなっているのかは分からないですが、そういう行事を「面倒臭い」「別に良いか」と思ったりする時もありますよね。でも、出ておいたほうが絶対に良い! 思い出や経験になるし、その経験によって夢や未来が急に開けたりする可能性もある。できる限り、そういったレクリエーションには積極的に参加すると良いと思います。僕は参加できなかったので、余計にそう思います。
MC
今日ここに参加した皆さんは、きっと良い経験になりますよね。
二宮さん
そうですよね。そもそもみんな、映画がタダで観られているんだから。(会場:笑) もう儲けているでしょ(笑)。「面倒臭いな」と思いながらでも参加してみると、心に刺さる作品に出会えたりすることもあります。積極的に参加してほしいと思います。
MC
皆さんは今、二宮さんというスターを目の前にして瞳をキラキラさせています。二宮さんが高校生の頃に憧れたようなスターはいますか?
二宮さん
それは事務所の先輩たちです! 僕は16歳の時にデビューをしましたが、それをうちの人たち(事務所の先輩たち)は、「お前たちすごいな」と手放しで褒めてくれたんです。本当に学校みたいな感じなんですよね。基本的に“くん付け”で呼び合ったりしていて、そういったフランクな関係性がずっと続いている中で、先輩たちが「良くやっている」と労ってくれた。それは、自分が高校生の頃の思い出として残っているものかもしれないですね。先輩たちが、一番下の新人に向かって「頑張っているな」とはなかなか言いづらいものだと思うんです。うちの事務所だけのことではなく、若い皆さんの才能を認めてくださる人たちは、スターだと思って良いんじゃないかと感じています。
質問3
映画の主人公の山本幡男さんは、どんな状況でも周りを勇気づける人でした。私たちを勇気づけるような言葉をかけてもらいたいです。
MC
最後は質問ではなくお願いですね。
二宮さん
勇気づけるような一言ですか…。
若い時って、その若さが才能であることになかなか気づくことができないものですよね。「若いから良いよな」とか「まだ若いな」など、おじさんたちから言われることがうっとうしくなる瞬間があると思います。でもおじさんたちって後がなくて、もうギリギリで生きています。(二宮さん&会場:笑) 失敗もできないし、なるべく傷つきたくないし、 なるべく真っ直ぐ歩いて行きたいんです。大人になってくると、それしかもう選択肢がないんですよ(笑)。「まだ学生である」「親の管理下である」「先生たちが休み時間も見ている」と、いろいろと窮屈な思いをすることもあるかもしれません。でも、その窮屈な世界では「失敗ができる」と思って、暴れまくって良いんじゃないかと思っています。僕がもし人生二周目で、もう一度高校生をやれるとしたら間違いなくそうしています。事件性があるものは試してはダメですが、ちょっとチャレンジして失敗するぐらいのことは、周りのお父さん、お母さん、そして先生方も全力でフォローしてくれると思います。甘えられるうちは甘えて良いんだと思って、いろいろ経験してもらいたいし、失敗してもらいたいと思っています。「いっぱい失敗してください」と言われて失敗するのもなかなか難しいものですが、いろいろと経験してもらえたら良いなと思います。
MC
高校生活は三年しかありませんし、いろいろとチャレンジするのが良いということですね。
二宮さん
チャレンジできるし、そこからやって良いこと、悪いことも見つかるだろうし、楽しいんじゃないかと思います。ちょっとした悪さも含めて経験をしておくと良いと思うし、大人なってから「あれは失敗だったな」と一緒にその経験をした人たちと話すのもまた面白いものだと思います。偉そうにすみません!(会場:拍手)
MC
ここで高校生の皆さんから大ヒットを祈願した寄せ書きのプレゼントがあるそうです。
■ステージに男子生徒と女子生徒が上がり、二宮さんに寄せ書きをプレゼント。会場からも拍手が湧き起こりました。
二宮さん
ありがとうございます! 手書きって本当に思いが伝わるので、嬉しいです。持って帰って、みんなに見せます!