「国宝」特大ヒット記念舞台挨拶
- 公開後舞台挨拶
特大ヒット記念舞台挨拶
映画「国宝」が2025年公開の実写映画興行収入No.1となり、最終興行成績は100億円をも狙える特大ヒットに!
これを記念して、7月25日、東京・新宿の109シネマズプレミアム新宿にて、舞台挨拶が開催され、主演の吉沢亮さん、李相日監督が登壇しました。さらにスペシャルゲストとして音楽を担当した原摩利彦さん、主題歌の井口 理(King Gnu)さんも駆け付け、会場は大きな盛り上がりを見せました。こちらの舞台挨拶の模様をレポートいたします!
吉沢亮さん
立花喜久雄(花井東一郎)役
李相日監督
井口 理(King Gnu)さん
主題歌「Luminance」歌唱
原摩利彦さん
音楽
吉沢さん
本日は劇場に足を運んでいただき誠にありがとうございます。皆さんは本作をご覧になったということですが、楽しんでいただけましたでしょうか? (会場からの拍手に)ありがとうございます。公開から一カ月が経った今も、たくさんの方に作品を愛していただいて、冷めない状態が続いていることをうれしく思っています。今日はいろいろな話ができればと思っています。
李監督
ただただ、皆さんのおかげです。感謝の言葉しかありません……と喜久雄が言っていましたよね。我々も、まさかここまでの広がりになるとは本当に想像もできませんでした。観てくださった一人一人の熱量や、皆さんの思いが、この作品を長く語り継がれる作品に押し上げているのだと実感している今日この頃です。感謝の思いを伝えられる場を、今日はいただけてうれしく思っています。
MC
公開から49日である7月24日までの累計で、観客動員510万人、興行収入71.7億円を記録しています。これは、2025年公開の実写映画作品の興行収入第1位で、最終の興行収入予想は100億円突破が見込める数字になっております。
吉沢さん
本当に感謝しかありません。本作を観た方からの感想の熱量がとてつもなくすごくて、皆さんがこの作品を集中して観てくれたのが伝わるくらい熱い言葉をいただいています。どの現場に行っても、皆さんから「『国宝』観たよ」と言われます。本当にすごい広がりになっているのを肌で感じる日々です。
MC
第50回トロント国際映画祭のスペシャルプレゼンテーション部門にも選出され、海外での配給も既に決定しています。
李監督
歌舞伎で言うと、團十郎さんがYouTubeで取り上げてくださいました。裏で繋がっているわけじゃないので、本当にびっくりしました。この場を借りて、本当にありがとうございます。
トロントは、ヨーロッパやアジアとはまた違う文化圏なので、そこでどんな反応が返ってくるのかが楽しみです。トロント国際映画祭は、北米マーケットの映画ファンにとって、一番大きな窓口となるので、そこでの上映が決まったことが良いニュースだと思っています。アメリカの人たちにどう届くのかを楽しみに、しっかりとアピールしてきたいと思っております。
せっかくなので、そろそろ質問コーナーに行きましょうか?
■本作を観終えたばかりのお客さんから質問を募っての質疑応答がスタート!
【質問1】
喜久雄の背中の刺青は、描くのにかなり時間がかかるんじゃないかと思います。背中が映るシーンは毎回、描いていたんでしょうか?
李監督
あれは2パターンあります。実際に背中に描くのと、精巧なシールを貼るという方法もありますが、やはり描いた方が仕上がりは良いんです。(吉沢さんに向かって)どれくらいの時間かかっていました?
吉沢さん
描くと4時間はかかっていました。朝の2時くらいに現場に入って…まあ、夜なんですが(苦笑)。描いている間はずっとベッドに寝そべっているんですが、動けないので首がバキバキになるという大変な時間でした。でも、すごく素敵な刺青を描いていただきました。観ていただいたとおり、素晴らしい出来でうれしかったです。
李監督
(シールと描くのと)半々くらいの割合になるかと思ったんですが、8割くらい描いていましたね(笑)。
吉沢さん
描いていましたね。着物を着た状態で、ちょっとだけ見えるような瞬間は「全然シールで良いんじゃない?」って思ったんですが、描いていました。大変ではありましたが…(苦笑)。
観客1
汗で滲んだりはしないんですか?
李監督
水にはそれなりに強いんですが、衣擦れが良くないので、そこは気を遣っていました。
【質問2】
先日から、SNSでクランクアップの写真がアップされていますが、クランクアップ時の思い出を教えて下さい。横浜流星さんもわざわざ駆けつけてくださったそうですが、その時の何かエピソードなどがあればお願いします。
吉沢さん
クランクアップは、確か最後の「鷺娘」で、楽屋を出て、舞台上まで歩いていくカットを撮ったんだったかな…?
李監督
あの写真は大阪じゃない? 東京? あれ?もう頭が…(苦笑)。
吉沢さん
大変な日々でした(笑)。僕の感情としては、今まで味わったことのない複雑な感情というか……これまでは大変な作品を終えると「解放された!」っていう強い達成感があったんですが、今回は達成感とも違うし、「寂しい」とも違って、いろんな感情がグシャグシャになって、「何だか涙が出てきそう…」みたいな不思議な感覚だったのを覚えています。いつも、クランクアップの際にコメントを言うんですが、ちゃんとした言葉が出てこなくて、あんなにしどろもどろのクランクアップの挨拶は初めてでした。本当に複雑な感情でした。
李監督
覚えています。スーッと涙が流れていましたね。すごく印象的でしたよ。撮影中は「苦しい」とか「しんどい」ってことを言う人ではなかったので、「安心したのかな?」と思いました。
彼の中で、喜久雄をずっと内に抱えながら過ごした数ヶ月だったので、撮影が終わって「すぐ役が抜けました!」っていうものじゃなかったんでしょう。喜久雄をまだ持っている状態だったから、スーッと涙が落ちていたんだと思います。本当に印象的な瞬間でした。流星も、そのために来てくたんだよね?
吉沢さん
そうですね。本当にありがたいです。何を話したかな…? たぶん、何か話をしたとは思うんですが、あんまり覚えていないです…。
僕らは、一年半、稽古を積み重ねてきたので、「良い作品になると良いね」みたいな言葉を交わしていたと思います。
【質問3】
原作の小説を読んで、3時間の作品に収めるのは大変だったと感じました。
監督に質問ですが、原作から変更した部分では、終わり方が印象的でした。原作からの変更に関して、難しかった点などはありましたか?
李監督
ものすごく良い質問ですね。ただ、それを語りだすと、あと30分くらいはかかりますね(苦笑)。
やはり、小説は本当にたくさんのキャラクターの人生が魅力的に描かれていて、その中でも徳次という、喜久雄にとっては、俊介の次くらいの相棒とも言える存在を、早い段階でカットする決断が大変でした。
エンディングに関しては、表現は変わっていますが、原作で描いている意味合いと同じだと思っています。喜久雄という人間が、国宝という存在を通り越して、一体どこに辿り着くのか。それを「哀しい」と捉える人、「孤独」と受け取る人、「良かった・幸せだ」と受け取る人もいると思います。解釈は、たくさんあって良いと思いますし、そういった境地に到達するということに関しては、表現が違うだけで込められた意味合いは同じだと思っています。
【質問4】
夜の屋上で喜久雄が舞うシーンは、セリフは台本通りだったのか、アドリブが入っていたのかを教えてください。
吉沢さん
あれはアドリブというか…。
李監督
本来の台本のセリフとは違いまして、セリフを変えているんです。全部で3テイク撮っていて、3テイク目のセリフを、森(七菜)さんに「このセリフをこう変えるからこう言って」と伝えて、それに対して吉沢くんが何て返すかは彼の領域なので…、そこからは答えてちょうだい。
吉沢さん
そうですね(笑)。僕からすると、彰子の顔を見ている時に、急に「どこ見てるの?」って言われて、本当にびっくりしました。でも、そのセリフは喜久雄という人間の核心を突かれたような感覚もありました。あれだけ隣にいて、いろいろ尽くしてくれている彰子に対して、そのことにも気づかないくらい、ちゃんと見ていなかったんだなと。それを感じて、僕自身が「喜久雄ってそういう人間なのか」と納得する瞬間でした。だから、自然と「どこ見てるんやろう?」というのがポロっと出てきたんです。そういった意味で、3テイク目が、僕の中ですごく印象的で、「3テイク目を使ってほしいな」と思っていました。だから、実際に使われていてうれしかったです。
【質問5】
最後の「鷺娘」でお客さんが映るシーンで、1カットだけカメラの色が違うというか、急遽撮った画のようなカットがあったので、その理由を知りたいです。それから、歌舞伎のシーンをたくさん撮って、泣く泣くカットされたシーンもあると思うので、印象的なシーンなどを知りたいです。
李監督
観客のカットに関してですが、「鷺娘」が終わって観客が映る3つのカットのうち、3つ目のことを言われているんだと思います。確かに色調が違います。
あれは、狙って変えたわけではないんです。他の2つのカットは、舞台のブルーの明かりが反射して、青みがかって見えるんですが、3つ目は離れた位置なのでブルーの光が届いていなくて、違う印象になっているんです。それは、僕も気にしていたんですが、入れました(笑)。わざと変えたわけでなく距離の問題です。
よくそこまで気づきましたね。何回目ですか?
観客5
5回目です。
李監督
5回目になると、そこまで気がつくんですね。
あとは、演じていて印象的だったけれどカットされた歌舞伎のシーンですよね。
吉沢さん
一番練習したのは最初の「藤娘」です。僕と流星が初めて登場して、踊るあの「藤娘」。本当は、あのあと20分くらい踊っているんですよ!
李監督
十数分かな(笑)?
吉沢さん
ちょっと盛りました(笑)。でも、あれが最初の17秒くらいしか使われていなくてびっくりしました(苦笑)。
李監督
本当に泣く泣くカットしたんですよ(苦笑)。
吉沢さん
稽古の順番も、最初は摺り足から入って、次に(渡辺)謙さんと「鶴亀」を稽古しました。その後に、女形の練習として「藤娘」を始めました。稽古期間としては、一番長く練習した演目でした。もちろん、どのシーンも力が入っているし、舞台に立てるように死ぬほどやりましたが「藤娘」はどこか自信があるというか、一番練習したので、「これを見てくれ!」という感じでやったら、まさかの17秒…。
MC
ここで、特大ヒットを記念してお祝いに駆けつけてくださったスペシャルゲストをご紹介いたします。井口 理さんと原摩利彦さんです!
■井口さん、原さんが登壇!
井口さん
普段は「King Gnu」というバンドをやっているんですが、こういう場は不慣れなもので(苦笑)。温かく見守ってくださると幸いです。今日は楽しく四人でお話しできればと思います。
原さん
初めての並びですが、和やかにやりたいと思っているので、お手柔らかにお願いします。
李監督
井口さんが緊張せずに話せるように、今日は雑談で良いですか?
井口さんと吉沢さんは知り合いなんだよね?
吉沢さん
知り合いです。
井口さん
(緊張して)吉沢くんしか見られなかったです(苦笑)。
李監督
最初にお声がけさせていただいて、原さんの曲で歌う前にラッシュで映像を観てもらいました。
井口さん
お話をいただいて、映像を観たほうが早いということだったので観ました。正直なところ、最初は「歌いらなくね?」って思ったんですよね。李監督の組のクリエイティブが結集されていて、その時点で完璧でしたから。僕は、歌う側の人間なのに、「歌いらなくね?」って正直に感じたので、すごくプレッシャーでした。でも、「やってほしい」って言ってくださっているし…という感じでした。
李監督
でも、井口さんの声じゃなきゃダメだったんですよね?
原さん
ダメですよ。
井口さん
本当にそう思ってくれています…(苦笑)?
原さん
最初は「主題歌を書いてください」とは言われていなかったんです。李さんとは5回くらい合宿をしましたが、2回目くらいに「主題歌をやってくれ」と言われました。
井口さん
大変でしたね。じゃあ、お互いに「あれ?歌が入るんだ?」って思っていたっていうことですね?
李監督
僕が思いついちゃって…(苦笑)。
井口さん
職業病ですよね。
李監督
声がほしいと思ったんですが、喜久雄が女形なので、女性とも男性ともつかない、何か性別にとらわれない声がほしいと思いました。そこで思い浮かんだ声の性質が、井口しさんか考えられなくないなって…。
吉沢さん
他にはいないですね~(笑)。
井口さん
本当ですか(笑)? 吉沢くんの今の間は、友だちの間というよりも、役者の間だったけれど…。
吉沢さん
最後に喜久雄が見ている景色というか、前の舞台挨拶で監督もおっしゃっていたと思いますが、本当に降りてくるような声というか、この作品のグチャグチャした思いを昇華してくれるような、本当に美しい歌声で、素晴らしかったです。
井口さん
ありがとうございます。
李監督
最初に原さんからメロディが行って…。
原さん
中世のリュートという楽器を使って、現代神話みたいにしたかったんです。「物語はまだずっと続いていく、どこまでいくのか?」という感じを出したいと思っていました。それは表現できたと思っています。
そういえば、最初にデモ音源に(井口さんに)声を入れていただいて、初めて膝を打つっていう経験をしましたね。
井口さん
えー(笑)。
原さん
ほんまですよ。李さんもやっていました。
李監督
映画の中の曲に関してはいろいろと口を出しましたが、エンディングに関してはもう預けようと思いました。でも、最初に曲を聞いた時、あまりにもメロディがなくて、抑揚がなくてちょっと不安になった(苦笑)。
原さん
ぶっちゃけますね。実は、作詞を担当してくれた坂本美雨さんにも聴いてもらったんですが「よく分からへんかった」って言われちゃって…(苦笑)。最初に井口さんにデモを送った時も「メロディが分かりません」って返ってきました。でも、自分では「メッチャはっきりしているのにな…」って正直ちょっと傷つきました。
李監督
でも井口さんに歌ってもらって、初めてこんな風なんだと…。
井口さん
僕も、面白かったです。普段は、バンドは歌モノとして歌っているところがあったですが原さんの音楽はミニマムな削ぎ落されたサウンドと進行で、繊細で…。
原さん
歌と声の間のところを目指してやりたかったので、そうなったのかもしれないですね。
李監督
井口さんは本作の曲入りも観ましたか?
井口さん
観ました。
李監督
最初に「世界観が違うじゃ?」と思ったところから、どうでしたか?
井口さん
最初に僕がラッシュで観た時は、原さんの音楽も入っていなかったんですが、「邪魔なく入れたんだな」って思いました。完成版で初めて聴いて、「やって良かったよかったな」と思いました。
原さん
めっちゃうれしいです。
井口さん
原さんとの化学反応を感じました。
李監督
(吉沢さんに)友人としても心配していたんでしょ?
吉沢さん
「主題歌をやる」っていう話は聞いていたんですが、そもそも「この作品の主題歌って何だ?」って思って、僕自身も全く想像がつかなかったんです。もちろん、理の歌が素晴らしいことは知っていますが、「この作品の主題歌ってどうなるんだろう?」っていう不安はありました。でも、実際に聞いてみたら素晴らしかったし、さっき楽屋で聞いたらアドリブの部分があったと…。
原さん
間奏のところですね。歌詞がないんですが「即興で何か出して」って23~24テイクくらいやって、結果的にファーストテイクのものを使いました。
井口さん
結局のところ、僕が、こんなこと言うのは何ですが、他人の前で歌うのが苦手なんです。あんまり見られたくない自意識が働くんです。(吉沢さんに向かって)そういうところってないですか? 人に見られていると上手くいかないとか、一番自然に演じられるのは家でやっている時だったり、みたいな。
李監督
井口さんは、吉沢くんの印象に残った瞬間は?
井口さん
僕は、神社の前で悪魔に魂を売るシーンとか、結構恐ろしい顔をするんだなって思いました。普段、友だちの前ではしない顔を…。
そういう「恐ろしいな」っていう表情が散りばめられていて、良い意味でゾッとしましたね。あとは、最初にトラックにはねられた渡辺謙さんが、モリモリ食べているシーンが急にくるじゃないですか。あそこは結構、好きです。「元気だったんだ!」って、思わずクスッと笑いました。横浜流星さんとカレーを食べていて、地味にあそこは好きです。
李監督
すごくうれしいです。「悪魔に魂を売る」みたいなのは、共感もあるんですか?
井口さん
みんな、そうじゃないですか? でも、僕は割と友人とかを大事にしたいタイプなんで…(笑)。
吉沢さん
あれ(笑)?
井口さん
何かを捨ててまでではないですが、僕は、ライブ前に節制しているというか、人と話さなくなるんです。皆さんにも、我慢しているものがあると思いますが、分かりますよね? でも、「魂を売る」とかまでしないです。
李監督
知らず知らずのうちに、ああいう顔をした井口さんがどこかにいるかもしれないですね。
井口さん
いるかもしれないですね。それは作る側なら、身につまされる部分はあるんじゃないですか?
原さん
僕は喜久雄に入り込んでいました。作った曲に「これは喜久雄に」「これは俊介に」とポストイットを貼っていくんです。先に喜久雄の曲が全部できて、途中から俊介の曲に…という感じでした。主題歌はさらにその先だったので、劇中の音楽とは違うんです。
李監督
普段、バンドで活動されているんで、「歌い手さんとして来てくれるだろうか?」という不安もありましたが、やっていただけいて、もう感謝しかないです。
吉沢さん
ありがとうございます!
MC
最後に吉沢さんからメッセージをお願いします。
吉沢さん
まずは、お二人(原さん&井口さん)に今日は来ていただきありがとうございます。本当にこの作品は、出ている役者さんたちのお芝居、カメラワーク、ライティング、音楽と…一つの作品として、総合芸術としてのクオリティの高さも大きな魅力だと思っています。僕は三回観ているんですが、観るたびに思います。
本作は、公開から一カ月半が経った今も、たくさんの方にこうして愛していただいています。これから、もっともっとこの作品が広がっていけばうれしいなと思っていますので、会場の皆さんも、良い作品だと思っていただけたら、周りの方に勧めてください。そして、この作品を我々と共に一緒に盛り上げてくれたらうれしいです。今日はありがとうございました。