映画「イチケイのカラス」スペシャルトークショー
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スペシャルトークショー
講談社「モーニング」で連載された同名コミックを原作に、2021年4月期にフジテレビ系列月曜9時枠にて放送され、平均世帯視聴率12.6%という令和“月9”No.1 の高視聴率を獲得した、連続ドラマ「イチケイのカラス」が映画化。
2月9日、大ヒット中の映画「イチケイのカラス」一夜限りのスペシャルトークショーをフジテレビにて実施し、田中みな実さん、津田健次郎さん、田中亮監督が出席しました。本作の鍵を握るキャストによるぶっちゃけトークで大いに盛り上がった、こちらのイベントの模様を詳しくレポートします。
田中みな実さん
島谷加奈子役
津田健次郎さん
島谷秀彰役
田中 亮監督
田中さん
ちょっとしか出ていないのにこのようなイベントに呼んでいただいて……。今日は楽しんでください。
津田さん
私も、ちょっとしか出ていないのに……(会場:笑)。こんな立派なイベントに呼んでいただきまして光栄です。短い時間ですが、ぜひ楽しんでください。
田中監督
本日は、お越しくださいましてありがとうございます。僕は、一秒も出ておりませんが…。(会場:笑) 僕のファンの方も(こちらの会場には)一人もいないと思いますので、今日はお二人のトークをたくさんお送りして「イチケイのカラス」をさらにもう一度、二度楽しんでいただけるような時間になったら良いなと思っております。
MC
本作では、黒木華さん演じる坂間千鶴が、他職経験制度により弁護士として登場する物語として始まります。そこで多職なお二人をお招きしました。
本作は1月13日に公開して興行収入9億2千万円、観客動員71万人という大ヒットでございます。本日、会場にお越しの皆さんは、その71万人のうちの約100名様です。では、ちょっと聞いてみましょうか? 田中監督のファンだという方、手を挙げてください。…32パーセントぐらいの方が手を挙げてくれましたね。
田中監督
お優しい!
MC
田中監督、お二人からは、「少ししか出ていない」とのお話がありましたが、二人の役どころはとても重要ですよね?
田中監督
そうですね。あまり詳しくは言えませんが、皆さんは本作をご覧になっているので……冒頭から、この二人で始まりますので、このお二人なくして成立しない作品になっています。出番の多い少ないに関わらず、お二人がこうして(イベントに)来てくれたことは大きなことだと思っております。
MC
田中さん、津田さんとは夫婦役ですよね? ただ、共演というのは?
田中さん
一秒もありません。写真だけなんです。
MC
津田さん、その本編で使われている写真の撮影は、お台場でされたそうですね。
津田さん
(撮影場所の方角を示して)そこの階段です。
田中さん
(撮影の日は)暑かったです。子役の子が、眠くなってぐずってしまいましたね。一度、眠りに行かれて、その間に私たちは海を見ながら「あとどれぐらいですかね」「次のお仕事があるんですよね?」といったお話をしていました。
津田さん
しましたね。あとフラッペを食べました。
MC
結構、手間と時間をかけて撮影されたんですね。
津田さん
(家族)三人の姿をバシバシ撮りましたね。
田中さん
何枚も撮りました。結構時間をかけた割には、全然映っていなかった!
津田さん
加奈子の思い出の大事な一枚ですが、あまり使われていなかったですよね。
田中監督
僕は、そのスチール撮影の時にその場にいられなくて……。撮影したものをリモートで送ってもらい、確認をしました。お二人の表情は「良いな」と思ったのですが、やはり子役の子の笑顔がほしかったんです。
田中さん
リモートなので「今ちょっと監督に確認をしています」という確認待ちもありましたね。
津田さん
フラッペ食べて待ちましたね!
MC
津田さん、田中監督はそれほどビッグな監督なんですね。
津田さん
それはそうです!
田中監督
(社内では先輩のMCに対して)先輩、怖いですねー!(会場:笑)
MC
はい、もう一度会場の皆さんに確認しましょう。田中監督のファンだという方? (挙手する数が増える)監督、伝わりましたよ。
田中監督
(笑顔で)増えましたね!
MC
その写真の共演ですが、ご夫婦の愛は、物語の大きな軸になっております。田中さん、ご自身の演技はどうですか? 本作が公開されて反響はありましたか。
田中さん
私はSNSの類をやっていないので、実際にご覧になった皆さんがどう思われているのか、私の元には直接届いてこないんです。私の父が、公開初日に観てくれて、家族のLINEに「なかなか良い演技でした」と評価のメッセージをくれました。
津田さん
なるほど!
MC
お父様は、何かお芝居の関係の方ですか?
田中さん
全く関係ないです。(会場:笑) でも、作品全体について「ドラマの中では勧善懲悪だけれども、今回はその辺りが白黒はっきりしていなくて、観た方はどう捉えただろうね」と書いていました。
MC
専門的ですね! お父様はそういう(演技)関係の方?
田中さん
一切関係ないです!(会場:笑)
MC
津田さんは、作品トータルとして、どうご覧になりましたか。
津田さん
プロデューサーさんや監督ともお話をしたんですが、とにかく脚本にものすごく時間をかけたことがヒシヒシと伝わってきました。僕は、この前の完成披露試写会で、「自転車」というワードを残しておいたんですが、自転車にやられましたね。
笑えるところは笑えて、泣けるところは泣ける。それだけではなく大きな社会問題もしっかりとあり、記憶や心に残していくという、本当にバランスが良いエンタメ作品だと思います。
MC
私は、(MCとして)初日舞台挨拶でお手伝いをしました。竹野内(豊)さんたちは、監督の演出に言及されて、楽しんでおられたようでした。田中さんと津田さんは、いかがでしたか。
田中さん
笑いは一切なしです。ですから、完成披露の時に、(共演者の方々のコメントを聞いて)「あ、みんなはこんなに楽しい撮影をしていたんだ!」「監督との楽しい思い出がたくさんあって良いな」と思いました。私の唯一の思い出は、埠頭で(田中監督と)お話をさせてもらったことです。その時に「どうやって泣く感情のスイッチを入れているの?」と聞かれました。
田中監督
最初のテイクから本当に自然に涙を流されていたので、「どういうアプローチでお芝居をする方なのかな」「すごいな」と思ったので、お話をさせてもらいました。一生懸命準備をして、本当に努力の上でやっていらっしゃると知りました。お友だちにも相談されたんですよね?
田中さん
(俳優の)桜井ユキちゃんに「泣くシーンばかりでどうしよう?」と相談しました。そしたらユキちゃんには「大丈夫だよ!監督が演出してくれるから」って言われました。
津田さん
劇中の田中さんからは、「悲しみを背負って何とか生きている」という感じがすごく伝わってきて、素敵だと思いました。
MC
田中さんのことをご存知ない方もいらっしゃるかと思いますが、元々はTBSで僕と同じ仕事(=テレビ局のアナウンサー)をしていたんです。その同業者だった方が、よくお芝居で泣けますね?
田中さん
私はテクニックで泣けるタイプではないので、本当に準備と集中をするんです。でも、集中し過ぎると(身体に)力が入ってしまって、作品を観た時に「ちょっと身体に力が入っていた」と反省しています。「もう一回やりたい!」と思いました。
田中監督
今、ご自身でも「集中」とおっしゃっていましたが、役に向き合う集中力は誰よりも高くて、そこが俳優としての一番の魅力なのかなと撮影を通じて思いました。
MC
会場の皆さんは、最初に観た時に「田中みな実さんだ!」と気づかれましたか?
会場
(「気がついた!」という反応)
MC
あ、気づきましたか。ものすごく弱々しく映っていました。メイクなんかも調整したんですか?
田中さん
最初に軽くファンデーションをつけて眉を描いて、監督にお見せしたら、「もうちょっと薄くなりませんか?」と言われて、「それはスッピンになりますけど?」と答えたら、「そのぐらいで!」ってことでした。
田中監督
衣装合わせでは、「どういう服装で、どういうメイクにするか?」という打ち合わせをするんです。島谷加奈子は、地方でごくごく普通の生活をしていて、悲劇に巻き込まれる主婦の役で、田中みな実さんの普段のイメージとは真逆なので、華が出ると困ると思いました。お会いした時に、華があり過ぎたので「これをどう抑えるか?」が最初の役作りの演出だと思いました。お願いをしたら、そうやってくれました。
MC
本当に別人のようでした。
田中さん
あの時は、気がついたらすごく痩せていたんです。撮影のスケジュールがどんどん先送りになって、私を撮るのは三日後と言われたのが、一週間後になって。ずっと島谷加奈子のテンションを維持しないといけなくて、それで気がつかないうちに痩せていました。
MC
津田さんは、秀彰という役をどう解釈して役作りされたのですか?
津田さん
(秀彰役の)出番はそれほど多くはなかったので、最優先にしたのは「田中監督と現場で作っていくこと」でした。もちろん自分の中でのプランは用意していましたが、現場で変わっていくと思っていました。現場に入って、「まず演じてみて」と言われて、それからいくつか監督からご指示をいただいて…という感じでした。その空間や相手の役者さんと会ってみないと分からないことってあるので…。あまり作り込み過ぎると、そこからはみ出るのが難しくなります。そのために余白を残して、監督のビジョンに応えるのが最優先だと思っています。
MC
その「余白を残す」というのはどういうイメージなんですか?
津田さん
決め込み過ぎないという感じでしょうか。監督の指示で、勢いよくか、ずるずるいくのか、どこにでもいけるようにしておきます。(本作での具体的な指示として)結構、細かく丁寧に、「左手で舵を握って、そのまま」とかありましたね。逆に、何が原因でそうなる(本作で秀彰の身に起きること)のかは、すごく大事なところなので、調べては行きました。現場には医療監修のスタッフさんもいらっしゃったので、「こういう時にはどういう呼吸か?」などを細かく教えてもらいました。
田中監督
冒頭のシーンは短いですが、物語の始まりをしっかりと表現しないといけなかったんです。「最後に舵をとりつつ事故を回避して…」ということを表現したかったので、手の動き一つからいろいろと演出しました。
MC
津田さんがおっしゃった「余白」というのは、演出側からすると感じ取れるものでしょうか?
田中監督
そうですね。感じますし、それが頼りです。津田さんのシーンでお話しますと、船のシーンは撮影時間が限られているので、すごくバタバタしていました。それでも、僕が撮り足したい「積荷の検査を自らして、その場を去るシーン」がありました。元々の台本にはなかったものですが、現場で演じてもらいました。(倉庫の)扉を閉めた時の津田さんの悲しげな目が、すごくこのキャラクターの人生や抱えているものを物語っていました。これが「急に言われたことにも対応して演じる」という余白ですし、このキャラクターの映っていない部分を表現する余白だと思います。僕は手応えを感じました。
田中さん
そこを観に、もう一回(映画館に)行っていただきたいですね。
田中監督
そうですね!
MC
田中みな実さんが、元々赤坂にいらした話を蒸し返して申し訳ないですが、キャリアに裏打ちされた演技の余白だとか一緒に現場で作るということを完全に実行されるんですね。
田中さん
「完全に」ではないです。まだ、きちんと演じたのはここ数年なので、まだまだ教わることがたくさんあります。どうしたら良いですかね? 意外と誰も教えてくれないんですよ。
MC
津田さん、そういうものですか? 津田さんはお若い頃に師匠の方からとか?
津田さん
現場に出てしまうとそうですね。その場にいるのはプロなので、演技指導というものはないです。僕には師匠はおりませんが、養成所には入っていました。舞台では演技を教わったという感じではなく、メンタルを叩き込まれた感じでした。テクニカルな部分は逆にあまり……。「(小声で)うるさいな」と思っていたので……。
MC
田中さんがアドバイスをほしいそうなので、津田さんからいただきましょうか。
田中さん
(津田さんに)ください!
津田さん
逆に一周して新鮮で、芝居を始めた頃の気持ちで演じているので、あまりお伝えできることはないんです。今同じ感じなので、恥ずかしいです(笑)。でもきっと、一緒にお仕事をされるスタッフや共演者の方からいろいろもらえるのが一番身になっていく気がします。
MC
今回は共演と言っても写真一枚でしたからね。
津田さん
そうですね。
田中さん
津田さんとは、三作品ご一緒していますが、一度も一緒のシーンがないんです。
津田さん
ここ一年半ぐらい、ご縁はありますけど……。
田中さん
局アナだったので、(テレビ局の)アナウンサーの先輩は、社員を育てる意味でもたくさん教えてくれました。俳優は個人商店といいますか、それぞれ一人で活動しているので、皆さん手の内は明かさないですね。主演でもないのに、「監督!監督」ってぐいぐいいくのも違うような気がして…。どうしたら良いのかヒントをください。
田中監督
僕らの仕事って、その役や作品に対して「こうしてほしい」はあるんですが、お芝居そのものの指導はあまり……。
今回、ご一緒して、田中さんの素晴らしかったところはお伝えできます。法廷のすごく長いシーンで、撮り進めていた時に、ちょっとスタッフが「差し入れをいただきましたー」と流れを変えてしまう時がありました。法廷というのは独特の緊張感があって、それが良いのですが、そこから(撮影を)再開したら、明らかに現場の緊張感が緩んで薄まってしまっていたんです。それで、途中からではなく、すでに撮り終えた最初から撮り直しをしてもらいました。僕は、「一度集中力が途切れたらもう無理かな」と諦めかけていましたが、(田中さんは)同じテンション、いえそれ以上のテンションに持っていってくれました。思ってもみない良いお芝居が出ていました。先ほどもお話したように、「役に対して集中する力」は本当に誰よりも持っている方です。そこは、これからも伸ばしていくと良いかと思います。
田中さん
その方(流れを変えてしまったスタッフ)のせいではなく、私の問題です。法廷のシーンは、本当に独特の緊張感で、傍聴席のエキストラの皆さんも、竹野内さんの言葉に本気で泣いてしまうぐらい「入間みちお教」に入っている感じなんです。それを作り出しているのは、監督をはじめドラマ版からのスタッフさんたちです。私は、ドラマ版からこのシリーズのファンなので、あの場にいられただけで光栄でした。
MC
現場で作るというのは、そういう要素も含めてということですよね?
津田さん
特に法廷シーンは、空気が一番ですからね。「どこまで本物の法廷だと信じられるか?」が大事になってくると思います。
MC
津田さんは声優としても、大変なキャリアをお持ちです。声優の皆さんは、「声で演じるのと一緒です」とおっしゃいますが、津田さんは声の演技と変えていることはありますか?
津田さん
(照れ笑い)僕は、作品によって変えている感覚です。実写にしても舞台にしても日常に近いリアルなものなど内容はさまざまなので、作品と役により変えていければ良いなと思っています。
MC
その変えていくことが、お仕事として面白い魅力でしょうか。
津田さん
うーん…誰も正解を知らない世界なので、沼のように奥深いですから…。先ほども申し上げたように、一周して「芝居が面白いな」と思っているところなので、本当に難しいと思っています。
MC
田中さんはどうですか。その難しさも含めて面白さを感じているのでは?
田中さん
少しずつ「楽しいな」「難しいな」と思っています。先ほど監督が「もう無理かなと諦めかけた」とおっしゃいましたが、私は作り手の方にそう思わせてしまうことが一番嫌なんです。作り手の方を(仕方なく)妥協させるような、失望をされたくないんです。
MC
そのマインドは局アナの時から変わっていないんでしょう?
田中さん
そうなんです! まったく変わっていないです。「求められたことに、ちゃんと応えたい」という気持ちがとても強いです。応えられるように引き出しも増やしていきたいです。最近、特に思うようになりました。
MC
作品の反響としては、「感動した」「泣いた」などあり、さらに「田中さんの泣く姿が美しかった」「津田さんのたった数秒からも伝わる迫真の演技がすごい!」といった声があります。田中監督、津田さんには本当はもっと出演してほしかったんですよね?
田中監督
もちろんです! やっぱり冒頭と途中のシーンですよね。シーンによっては、初めましての状態で、昔からの仲間という雰囲気で演じる場面もあって、現場で交流を深めて役作りの助けになることを探している感じもありました。
MC
「ネタバレ気をつけてください」と言われていたのに、監督めちゃくちゃギリギリのところを話しましたね。
田中さん
でも、会場の皆さんは作品をご覧になっているので、すごく頷いています。
MC
東海テレビの「ちゃーじ」という情報番組で、MCのはるな愛さんが、「田中みな実さんの演技、特に裁判のシーンでの演技が他の役者さんを凌駕する、他の役者さんを揺るがす演技をしていた」と大絶賛していました。
田中監督&田中さん
すごく具体的!
MC
田中さんと親交のある、はるなさんの評価です。
田中さん
贔屓目で観てくれたと思います。
MC
田中さんが写真集を出した時に、はるな愛さんが「あなた、どこまでいくの?」と言ったら、田中さんが「私は、どこまでもいきますよ!」と答えた。そして、「今回の演技、あの子はいったわー!」とおっしゃっています。
田中さん
本当に恥ずかしいです。愛ちゃんが、観てくれて嬉しいです。「どこまでもいく」というのは、適当に話していただけなのに、覚えてくれていて……。これからもどんどん”いきたい”と思います。
MC
引き続き、これからも女優業は極めたいという心境ですか?
田中さん
ここ一、二年ぐらいで、「ちゃんとやりたい!」と思うようになりました。2019年に東海テレビの連続ドラマ(「絶対正義」フジテレビ系列にて放送/主演:山口紗弥加)に、お声がけいただいたのが初めてで、ありがたいことにそこからなんとなく続いてきたんですが…。手応えが全然ないというか、バラエティだとやっていて「よし、ここは使われる!」というのが分かるんですが、演技は「みんなこれで納得しているのかな」とか、監督も「まあ、OK」という感じのことがあるんですよね。本物のOKじゃないと分かるので、そういうのが積み重なると不完全燃焼が続くんです。MC(フジテレビアナウンサー・伊藤利尋)さんもこのお仕事をされていて、(このイベントの仕切りで)今も「僕よくやった!」と美味しいお酒が飲めると思うんですが……。
MC
何で、僕ですか? そんなことはないです(笑)! 大きな失敗はなくここまできてはいますけれど!
田中さん
ちゃんと制作の意図に応えられたというのがあるでしょう?
MC
(この会場のスタッフに向かって)そこまで意図はある?
田中さん
ドラマや映画だとそういう風に思えなくて、監督が求めていることを徐々にですが、最近汲み取れるようになってきたんです。だから、それに応える引き出しを増やしていかないといけない。分からないことが何なのかちょっとずつ分かるようになりました。
MC
局アナトークで恐縮ですが、同じ”映像作品を作る”といってもドラマや映画とは全く違うジャンルなんです。なのでおっしゃることに合点がいきました。役者へのOKが本当のOKなのか、長く演じてこられた津田さんが一周回ってまた新鮮とお話しされたことにも納得です。
津田さん
監督のOKでモヤッとすることもありますよね。あれは、役者に向けてだけではなく、スタッフに向けていることもありますか?
田中監督
お芝居だけではなく、照明や音声などいろいろ含めてOKを出さないといけないので、ありますね。あと言えるのは、監督は全体的に褒めるのが下手なのかもしれませんね。僕らは、「作品が出来上がってOK」だと思うので、それまでは不安や少しだけ考えたいというのがあるんです。だから、それらを含ませたOKになることがあると思います。
津田さん
なるほど!
田中さん
他にも気になることがあります。ちゃんと丁寧に説明してくれて、それを元に考えて表現したのが三回目だけれど、スタッフさんに「あぁ、二個前を使おう!」と言っているのを聞くと、「やっぱりダメだったんだ」となります。「求めたものに応えられていない妥協点だったんだな」と思っちゃう。(津田さんに)そう思いますよね?
津田さん
そうね。
田中監督
いろいろなケースがありますね。こちらがお願いした演出が、うまくハマらなくて、演出側の反省ということもあります。
田中さん
いえ、汲み取れなかった私がいけないんです。
津田さん
ストイック!
MC
これからは「田中みな実、パーフェクトOK!」と言わないといけないですね。(会場:大笑い)
田中監督
OKの言い方が難しいですね。
田中さん
今日は、家に帰ったら台本をもう一度取り出して、あのシーンを演じようと思います。
MC
役者さんがそこまでして演じてくれるのは、これ以上ない喜びですよね。
田中監督
嬉しいですね。田中さんの法廷で涙を流すお芝居を見て、僕は最後に編集を変えたところもあります。やっぱり、いただけたもので、作品がより良くなるのは本当にありがたいです。
田中さん
良かったです! ホッとしました。言わせた感がありますが、ありがとうございます。
MC
津田さんは、脚本だとか演出といった作る側にも力を入れたいと考えていると伺いました。
津田さん
脳の使い方も作業もまるで違うので、若い頃は中途半端になるのでやめようと思って封印していました。年を取ったら、「(残りの)時間がない!」と思うようになり、全部やろうと思うようになりました。ジャンルを超えたもの、監督の前で言うのもどうかと思いますが監督業にも興味があるのでぜひやってみたいです。
田中さん
会場の皆さんも「ぜひ観たい!」そうです。
津田さん
ありがとうございます。
MC
ぜひOKの言い方には気をつけていただいて…。
津田さん
(歯切れ良く)OK!
■フォトセッション。トークの流れに続けて取材陣からの「OK」を求めるやりとりありました。
取材陣
パーフェクトな笑顔ください。
MC
OKですか?
取材陣
OKです!
MC
ムービーの代表カメラ、OKですか?
カメラマン
OKです!
MC
最後に一言ずつご挨拶をいただきます。
田中さん
今日は、お忙しい中お越しくださりありがとうございます。本作をご覧になった方々がほとんどだと思いますが、今日のこのトークショーを受けて、もう一度劇場に足を運んでいただければと思います。
津田さん
本作はまだまだ劇場で上映しておりますので、もしまだの方がいらっしゃれば、おすすめいただけるとありがたいです。SNSをやっている方は、トークショーについて書いていただくと、また盛り上がって良いのかなと思います。
田中監督
たくさんの感想をいただけて、スタッフ、キャスト一同、作ってきて良かったと思っています。その中に、「ドラマを観てないけれど本作を観ても大丈夫かな?」という声もありました。「本作だけ観ても楽しめる作りになっています」と、声を大にして言いたいです。ここにお集まりの皆さんも、そう思ってくださるようであればぜひ広めてください。この「イチケイのカラス」の世界が、まだまだたくさん広がっていくように頑張りたいと思います。引き続き、よろしくお願いします。