「ゴジラ-1.0」アカデミー賞受賞記念記者会見

2024.03.12
  • イベント

アカデミー賞受賞記念記者会見

日本のみならず世界中を魅了し、衝撃を与え続けてきた「ゴジラ」。その70 周年記念作品であり、日本製作の実写版ゴジラ30 作品目となる最新作「ゴジラ-1.0」が現在大ヒット公開中です。11 月3 日の“ゴジラの日”に封切られた本作は、まさしく“ゴジラ級”の特大ヒットとなり、さらに北米でも邦画実写映画の興行収入記録を塗り替え、世界各地でも大ヒットを記録するなど、ゴジラ旋風が巻き起こっています。
そんな「ゴジラ-1.0」がアメリカ・ハリウッドにて開催された映画界の祭典第96 回アカデミー賞にて視覚効果賞を受賞! 日本映画が本賞を受賞するのは史上初であり、歴史に刻まれる快挙です。
そんな山崎貴監督と、白組スタッフの渋谷紀世子さん、髙橋正紀さん、野島達司さんが帰国後初の公の場となる会見で、授賞式当日の模様や受賞時の気持ちなどを語りました。その模様をレポートします。

監督・脚本・VFX

山崎貴さん

監督・脚本・VFX

VFXディレクター

渋谷紀世子さん

VFXディレクター

3DCGディレクター

髙橋正紀さん

3DCGディレクター

エフェクトアーティスト/コンポジター

野島達司さん

エフェクトアーティスト/コンポジター

大石典子役

浜辺美波さん

大石典子役

■アカデミー賞の映像が流れる。

MC

ご覧いただきました通り、今回のアカデミー賞視覚効果賞受賞を受けて、本作「ゴジラ-1.0」は全国の劇場で凱旋ロングラン上映が始まっており、今後も上映館数をどんどん拡大していきます。すでに公開から昨日までの130日間で観客動員数が397万人、興行収入60.8億円を突破しました。まだまだ「ゴジラ-1.0」の快進撃は続きますが、まずは授賞式から帰国したばかりのこの方たちをお呼びしたいと思います。

山崎監督

今日は集まっていただきありがとうございます。
本当に、どうなることかと思いながら臨んだオスカーでしたが、最高の結果になれて本当に今はほっとしています。今日は短い時間ですが、いろいろ聞いてください。

渋谷さん

私の仕事はVFXディレクターという名前になっていますが、主に監督がプロットを描いたところから撮影まで、いろいろなカットをどう撮っていくかを、VFXを含めて設計するような仕事をしています。

髙橋さん

本作で3DCGディレクターを務めました。僕の役割としては、スタッフ全体の振り分けです。それから、クオリティーコントロールですね。皆さんはご存知だと思いますが、(スタッフの)人数が少ないので、僕もカットシーンをやっています。

野島さん

エフェクトアーティストとコンポジターという両方を担当しました。エフェクトアーティストとしては、今作でいうと海のシミュレーションをして、それをレンダリングしました。また、僕は元々コンポジターっていう2DでCGのレンダリング画像を最終的な納品形態にするという仕上げ作業もやっていたので、自分でシミュレーションからレンダリングからコンポジターの最終仕上げまで全部やりました。

MC

皆様お手元に今回のアカデミー賞で受賞したオスカー像をお持ちになっていますが、まず本作「ゴジラ-1.0」でアカデミー賞視覚効果賞を受賞してオスカー像を手にした時のお気持ちをお伺いできればと思いますけれども、山崎監督いかがでしょうか。

山崎監督

想像をはるかに超える重さでちょっとびっくりしました。緊張していたんですけれど、一瞬それを忘れるぐらいの重さでした。でも本当に「今オスカー像を持っているんだ」と思えてすごくうれしかったです。

MC

渋谷さんいかがでしょうか。

渋谷さん

そうですね。(視覚効果賞を)やっぱりもちろん取りたかったんですけれども、取れるかといったら、なかなか自信はそこまでありませんでした。本当にみんなで五分五分と言っていたりしていました。私はもう「言霊の効果があると良いな」と思って、ずっと「取る、取る」っと言い続けていました。本当に取った瞬間は逆にびっくりしちゃって、それだけでめちゃめちゃ盛り上がりました。直前にアカデミーの方から配られたテキーラをみんなで景気づけに飲んだんですが、それもあってちょっとテンションが上がってしまいました。

MC

本当に皆さん四名の方は、昨年からずっとアカデミー賞の授賞式に向けたロビー活動で何回も飛び立たれて、何回も向こうでプレゼンをされてという実績が今回現れたのかなと思っています。

髙橋さん

僕も直前までは「(視覚効果賞を)取れたら良いな」と思っていたんです。でも取れなければ落胆するので、「ノミネートだけでも十分だ」と言い聞かせていました。でも、実際「ゴジラ-1.0」と呼ばれた時は、頭が真っ白というか、何かよく分からなかったですね。

野島さん

「ゴジラ-1.0」と呼ばれる3秒ぐらい前に、子供の時に授業中に急に指をさされて呼ばれる、あれを何となく一瞬感じて、「あ、呼ばれるな」と思いました。この感じは同じなんだなと思いました(笑)。気持ちは一緒ですが、壇上に上がっていく間に何が起こったのかをだんだん頭が理解し始めました。手足がしびれて、シュワルツェネッガーさんを見たら訳が分からなくなりましたが…。その後、山崎監督の英語のスピーチを温かく見守ってくださっている会場の皆さんの顔が本当に忘れられなくて、本当に良い場所だなと感じました。

■マスコミからの質問

【マスコミ1質問】

この度はおめでとうございます。
今は、ほっとした状況の中で、ちょっと気の早い質問かもしれませんが、今回、日本のVFXの到達点を世界に知らしめたことで、名実ともに「世界の貴(たかし)」になったと思います。今後を見据える目標というか野望みたいなものがあれば教えてください。

山崎監督

野望はいっぱいあります。でも、あんまりここで言ってしまうと難しいことになりそうなのであまり言えないですね。でも、日本映画がハリウッドでそれなりの興行成績を挙げられて、ちゃんと賞をもらえたということは、今後の日本映画の作り方が少し変わってくる可能性を秘めていると思いました。それを、ゴジラうんぬんというよりは、日本の作品が、字幕上映で日本人のキャストしか出ていなくても、ハリウッドというか、北米で観られるようになってきているということからも、確実に感じられました。そのことはすごく良いことだし、そこまで見据えた作品作りになれば、製作費ももっと潤沢にしていけると思います。いろんな意味で可能性が広がったということは、すごく良いことだと思っています。
大リーグに野茂選手が行った時に「意外といけたじゃん」ってなった途端にすごくたくさんの人たちが大リーグに挑戦できるようになりました。同じように今回のことをきっかけに、もっとワールドワイドな興行を目指した作品を作っていくことは一つ手としてあると思っています。

マスコミ1

ということは、「映画界のトルネード」という感じでしょうか。授賞式後には「オッペンハイマー」に対するアンサー作品みたいなことを個人的に話されていましたが、そういう作品も含めて、また今後同じアカデミーの会場に戻りたい、今度は監督賞や作品賞をという欲みたいなものはありますか。

山崎監督

そうですね。僕は賞を目指す作品はあまり好きじゃないんです。あまり考えずに作りたいものを徹底的に一生懸命作っていけば、もしかしたらそういう道が開ける可能性はあると思います。でも、あんまり目指さずにやっていきたいなと思っています。

【マスコミ2質問】

おめでとうございました。
山崎監督にお伺いしますが、まさに「世界の貴」についになられました。「世界の貴」になって壇上から見えた風景、世界の映画だけではなくエンターテインメントの世界一決定戦のようなアカデミー賞の壇上から見下ろした世界はどう見えたでしょうか?

山崎監督

めちゃめちゃ温かかったですね。僕の、非常に拙い英語のスピーチを、皆さんが「頑張れ」という顔で見てくださっていました。その温かく見守ってくれている空気がしっかりと伝わってきて、本当に心地良かったですね。でも、同時にものすごく焦りました。でも、やっぱり最高峰の人たちが集まっている場所なだけあって、ものすごく素晴らしい場所だと感じました。

マスコミ2

先ほど「ちょっと具体的に言うと叶わない」みたいなことをチラッとおっしゃっていました。山崎監督は「スター・ウォーズ」などの作品を観て、どうしてもアメリカ人しか「スター・ウォーズ」製作の舞台には立てないけれど、活躍することによって、「自分にも『スター・ウォーズ』を作らせてくれないかな」という野心を持たれていたと思います。そして、今回の受賞はスタンリー・キューブリック監督以来(視覚効果賞を監督が受賞したのは「2001年宇宙の旅」のスタンリー・キューブリック以来、55年ぶり史上2人目)で、監督として力があるからこそ取れる55年ぶりの金字塔ですので、声がかかってもおかしくないぐらいの結果を出されたと思います。その辺の可能性はご自身でどうお考えでしょうか?

山崎監督

そんな誘導尋問に乗るものか(笑)!
壇上のスピーチでも言わせてもらいましたが、ハリウッドというか、アメリカに生まれた人にしか与えられなかったチャンスが、ハリウッドはもうちょっと広く受け入れてくれるようになってきたというのは改めて感じました。外国語映画賞のように最初から海外作品向けの賞ではなくて、視覚効果賞というのはすごく聖域だったと思います。その部分を開放してくれたということは、何か懐の深さというか、オープンにしてくれているんだなという印象を受けました。なので、いろんなチャンスがここから芽生えてくると良いなと思います。

マスコミ2

山崎監督は、ずっと「ゴジラ」というタイトルで作品を作りたかったじゃないですか。そのゴジラシリーズで初めてオスカーを取ったお気持ちはいかがですか?

山崎監督

完全にゴジラのおかげですね。ゴジラというキャラクターが本当に大スターだったということを改めて思い知らされました。アメリカの人たちが、いかにゴジラのことを好きかということも思い知らされました。僕らが、あの会場に入って行っても「こいつら何なんだ」という感じなんですが、みんなでゴジラを持って入って行ったので、「ゴジラ!」と皆さんが言ってくれるんですよ。だから、何度も何度も繰り返して言っていますが、「ゴジラに連れて行ってもらったんだ」「ゴジラがワールドワイドなものになっているんだ」と、改めて想像以上に感じて、すごかったですね。だから、「ゴジラのVFX」だったからあの場所に立てたと改めて思っています。

【マスコミ3質問】

この度は受賞おめでとうございます。
ノミネートの瞬間の時から、カメラで追わせていただいておりました。あの時と、今実際オスカーを手にとった時の気持ちで何か変化はありましたか?

山崎監督

人というのは欲深いものだと思いましたね。ノミネートが発表になった瞬間は「もうこれで十分だ」と、完全に満足していたんです。その後一カ月ぐらいロビー活動と言われているいろんなところでQ&Aをやっていると、すごく皆さんから「ゴジラが好きだ」という感じが伝わってきました。すると、「これ、取れるんじゃね」みたいな気持ちがちょっと沸いてきました。オスカーそのものを狙っても良いんじゃないかという空気が出てきながらそれと戦う日々でしたね。多くを望むとだめだった時に大きく失望するので「そこで良いじゃん。十分じゃん」「そんな大きなことを望んではいけない」と思いながらも、あまりにも反応が良かったんです。Q&Aの後に観てくださった方たちがすごく並んで、ミニサイン会みたいなことに毎回なるんですが、その時のリアクションが良くて、「あれ?これもしかしたらあるんじゃないかな」となりました。そんな自分を見て、本当に欲深いなと思いました。でも、取れて良かったです。

マスコミ3

今回、壇上でもゴジラを持ったり、ゴジラのデザインの靴を履かれていましたが、このVFXというポジションで注目されたというところから、可能性がまた一歩進んだのかなと思います。それについてはどう思っていらっしゃいますか? また、ちょっと野島さんにお尋ねしたいんですが、監督に一番物申す…というようなお話も、私どもの取材でありました。実際、その若さで、世界の舞台で自分たちの作品が見てもらえたことに対するお気持ち、ご感想があればお聞かせください。

山崎監督

ずいぶん前からVFXの視覚効果賞というのは、本当にオスカーの中で聖域中の聖域でした。なぜかというと、ものすごく巨大な予算をかけて、凝りに凝ったVFXがいっぱいある中でのベストという場所だったんです。だから、僕らには挑戦権がなかったんですね。本当に、そこに夢を見ることすら許されない場所だったので、僕ら的にはオスカーを考えることすらタブーというか…。例えば、誰かが「夢は本場のオスカーで視覚効果賞を取ることです」って言っていたら、「それは違うんじゃないか」っていう空気だったんですよ。だから、その聖域を開いてくれたことは、すごくうれしいことです。やっぱりハリウッドという場所の懐の深さ、力強さ、つまり、僕らがそこで賞を取ったからといって、彼らの映画産業は何も揺らぎはしないっていう自信も感じました。
本当に繰り返しになりますが、会場の皆さんの温かい「頑張れ」という感じが本当にうれしかったです。VFXでは、実は僕は一番長いキャリアなので、それをずっとやり続けてきたことで、今この場所があったということは、本当にうれしいことですね。

野島さん

僕は、すごい直感タイプというか…。白組に入社するのも、高校生の時に、朝目が覚めて青空を見ながら「白組に入れるかな」「入れたら良いな」っていうふわっとした思いがあったくらいでした。
今回、ゴジラをやる時も、「ゴジラをやるんだし、何かあるだろうな」くらいにしか思っていませんでした。でも、まさかここまでとは思わなかったです。めちゃめちゃびっくりしました。
物申していたのも、ゴジラがそんな予感を後押ししていたというか、何かあると思ったので、言っておこうみたいな感じで、普段よりも言っちゃっていたかなと思います。

山崎監督

結構「世界が」という言葉はスタッフの間からも出ていましたね。ゴジラ作品だから世界中の人たちが観ることは確かだと思いました。でも、僕にはその視点がちょっと欠けていたので、「すみません」って言っていました。何人かのスタッフから「世界中の人が観るんですよ」って言われて「そうだよね」って思いながらやっていました。まさか、こういうことになるとは思っていなかったです。

マスコミ3

ちなみに監督は、「ほっとした」とか「もう感無量」「興奮した」など一言で表すと何が一番ですか?

山崎監督

ノミネートの時は、ほっとした感じだったんですよ。
ノミネート発表でご取材いただいていた際にはこうやって皆さんがいらっしゃるし、これでしょんぼりした姿を中継されたらたまらないなという気持ちがあったので、その点はほっとしました。でも、今回は燃えましたね。気持ちとしては(受賞は)五分五分ぐらいだったんです。でも、いろんなところで「ゴジラが取る」という下馬評がものすごく高かったんですよ。それが、保障のない空喜びシステムみたいになっているんですよね。会場に行く途中で野島が「59%ですよ」って言っていて、「取れちゃうじゃん」って思ったんですが、「ここでうっかり取る気になるものか!」と、自分の精神をコントロールしていました。でも、まさかターミネーターのシュワルツェネッガーに呼ばれるとは思わなかったので、本当にうれしかったです。

【マスコミ4質問】

先ほどもちょっとお話がありましたが、今回の視覚効果賞候補作品の中で、予算としては一番少なかったと思います。そのハリウッドの巨額の製作費と人手を掛けたものよりも上回った要因はどういうところだと思いますか?
もう一つ、それでもやっぱり及ばない部分があるとしたらどんなところだと思いますか?

髙橋さん

自分たちなりにすごく頑張って良い出来のカットもあるし、もっと頑張りたかったカットもあります。実際アメリカに行った時に他のノミネート作品も観たんですが、そこには素直にVFXをやっている自分としては「やっぱりすごいな」「僕たちができない技術を使っているな」という部分がありました。「やっぱり世界はすごいな」って思いながら観ていました。ただ、プレゼンテーションするための紹介ムービーのようなものを作ったんですが、そこでは、なぜか僕たちの「ゴジラ-1.0」が一番面白いと思いました。
それは、作品とVFXとが相まっていたし、歓声がすごかったので、少しは戦えるかなと、一ファンとしては思っていました。ただ、まだまだ全然アメリカのクオリティはすごいので、これからも頑張っていかなきゃいけないと思っています。

渋谷さん

Bake Off(アカデミー賞「視覚効果賞」のショートリストに残った10作品によるVFXのプレゼンテーションの場)以降に、VFXの10本のショートリストに残った作品の方々とか、その後のノミネートの方々から言われたのは、「始めた頃に、ない知恵を絞って何とか作ろうと、もがいて作っていた頃をすごく思い出した」と言われました。その辺が、皆さんの温かい気持ちや、見守っていただけていたっていうことも含めて、響いたのかなと私は思っています。

野島さん

作品が本当に面白かったのが、一番影響があるのかなと思います。僕らのVFXは、もがいて、いろんな気持ちで作ったので、こんなに堂々として良いとは思えないんです(笑)。ゴジラや山崎さんの話もすべてが良くて、全部のピースがはまって、こうなったんだと思いました。

山崎監督

一つは、少人数・少ない予算というところが、(ノミネートされた)他の作品と違ってかなり特殊なケースだったので、面白がってもらえたんじゃないかと思います。
あとは、ビジュアルエフェクトの部門というのは「VFXが物語にいかに貢献したか」ということを非常に大事にされるみたいなんです。本作ではたぶんVFXが作り出したゴジラの恐怖感とか絶望感がお話に貢献している部分があると思うので、その部分を評価されたのだと思います。
負けているところでいうと、真面目に観ちゃうと心がズタズタになるぐらいに、他の作品が素晴らしいんです。Bake Offの時もオリンピックに来たようなすさまじいクオリティのものが続く中で、僕らの面白ビデオを見せるという感じでした。何かポンコツチームが頑張っているっていう感じが、恐らく皆さんのVFX初期のスター・ウォーズのように感じたんじゃないでしょうか。今聞くと、本当に当時CGが使えなかった時代にいろんなことをやって、何とか作品を成立させようと思ったカットが素晴らしい効果を上げているんですよね。そういう部分が皆さんの琴線に触れたのかなって思うようにしています。

マスコミ4

今後、日本のVFXは十分世界で戦えると思いましたか?

山崎監督

全然思わないです。まだまだというのは改めて感じました。だから、本当にラッキーパンチだと思います。いろんな条件が重なって今回こういう賞をいただきましたが、もぎ取りに行くのにはまだまだいろいろと頑張らなきゃいけないと、改めてその中枢に近づいたからこそ思うすごさがありました。でも、一応戦えて結果は出せたので、これを橋頭堡にまた頑張っていきたいと思います。

【マスコミ5質問】

野島さんにお伺いします。受賞後に山崎監督とはどんな言葉を交わしましたか? また、野島さんから見て受賞後の山崎監督の喜びようはいかほどでしたか? 印象的なお言葉や姿があれば教えていただきたいです。

野島さん

受賞後間もないので、まだそんなに…。
オスカーの重みっていう話だと、精神的な重みと物理的な重みで両腕が筋肉痛になってしまいました。

山崎監督

パーティーの間もずっと持っていないといけないんですが、どんどん重くなってきて、最初は写真でもっと出してくれと言われるんですが、本当に重くて…。そういえば、(野島さん)会話していないな(笑)。

野島さん

たぶん、言うことなくなっちゃったんですよ。オスカーもあるし、もう語ることはないと…。

マスコミ5

受賞後の今、お互いに言葉をかけるとしたらどんな言葉をかけたいですか?

山崎監督

「これが人生のピークにならないようにね」と言っていました(笑)。
僕らは、何かここで良い曲線を描いていますが、野島はまだ若いので人生の頭の方にピークが来ちゃうと、映画のシナリオ的にもあまりよろしくないので…。

渋谷さん

野島は初パスポート、初海外で、とうとう初オスカーまで取っちゃうという(笑)。

野島さん

初サマータイムもあって、急に一時間なくなるという(笑)。

マスコミ5

野島さんは監督に一言言葉をかけるとしたら、何とかけますか?

野島さん

「天才でいてくれてありがとう」とただそれだけです。

山崎監督

めったにこういうことは言わないんですけれどね(笑)。今日はお祝いなので少し盛っていると思います。

野島さん

いや、本当のことを言いました(笑)。

【マスコミ6質問】

監督と渋谷さんに伺いたいと思います。今回登壇される時に、昨年お亡くなりになった阿部秀司プロデューサーのお写真を持って登壇されたと思います。お二人にとって阿部プロデューサーはどんな存在かをお聞かせください。
また、監督が阿部プロデューサーに見出してもらったというお話があったかと思うのですが、出会いや、「ALWAYS 三丁目の夕日」の時など何かエピソードをお聞かせください。

山崎監督

長くなりますよ(笑)。できるだけ簡潔に話しますと、僕のデビュー作からのプロデューサーです。僕がまだVFXしかやったことがなくて、監督もしたことない時に書いたシナリオをすごく面白がってくれて、「ジュブナイル」というデビュー作を作らせてくれた一番の恩人です。そこそこお金がかかる作品で、僕は脚本を書いていましたが、「監督は誰がやるんだ」という話になった時に「そんなのは山崎がやるに決まっているでしょ」とすごく推してくれたんですね。だから、それがなかったら監督になるとしても、すごく時間がかかったと思うし、なれていなかったかもしれないです。そういう意味では、監督にしてくれた恩人です。それに、ずっと作品を作り続ける中で羅針盤のように方向を示してくれる人です。「ALWAYS 三丁目の夕日」は、正直僕はあまり乗り気ではなかったんですが、「こういうのをやらないと、お前は本当にSF映画だけを作る人になっちゃうぞ」と言われました。僕としてはそれでも全然構わなかったですが、「監督としての幅を広くするためにはこういうこともやらなきゃだめなんだ」と言ってくれました。結果的にはいろんな作品ができる監督になれたと思います。
本当に人生の様々な場所で素晴らしい助言と行動を起こしてくれました。映画の企画って、実際に軌道に乗せるのが本当に大変なんですが、その部分でめちゃくちゃ力を発揮してくれました。僕がずっと作り続けてこられたのも阿部さんがいたからだと思います。去年亡くなってしまったんですが、すごく興行にもこだわる人だったので、ゴジラが大ヒットしている中で亡くなられたのを聞いて、「ギリギリ間に合った」という感じがすごくします。でも、やっぱりオスカーを手にして、ホテルの部屋に戻ってくると「阿部さん、良かったね」と言いたかったなと思いました。「阿部さんと一緒にオスカーを取りに来たかったな」と、きっと来ていたとは思うんですが、いてほしかったなと思います。一緒にいたら、どんなに喜んだだろうと思います。今も「何で僕が生きている間にオスカーを取らなかったんだよ」って怒っていると思います(笑)。

渋谷さん

四半世紀、25年以上一緒だったんです。恩師であり、仕事の仲間であり、友でもあって、ものすごく近い存在でした。時には一緒に戦ってくれたり、ものすごくバトルをすることもありました。そういったことを20何年もやってきました。
「きっと山崎はハリウッドに行くよ」と、かなり早い時期からに阿部さんは言っていました。最初はその話を「またまたぁ」という風に言っていたんです(笑)。それでも言い続けていたので、ハリウッドに進出してオスカーを取れたところを、阿部さんも一緒に見たかったと思います。でも、向こうで「ほらな、取ると思ったよ」と、鼻高々に周りに自慢していると思います。
このレールを引いてくれた阿部さんの力があったからこそ、ここに到達していると思います。持って帰れて本当に良かったと思います。

マスコミ6

今、阿部さんに声をかけるとしたら、どんな言葉をかけたいですか?

山崎監督

壇上でも言いましたが、「僕たちやったよね」ということを言いたいですね。

渋谷さん

私たちがっていうより、作品に関わっているみんなで取りに行ったっていうのがあったと思います。今回、いろんな作品での経験や、こうしたいとかいろいろ集まって…よく集大成とか言われていますが、そういうのもやっぱり阿部さんが…。

山崎監督

結構ハードルだったんですよ。みんなで「これで良いんじゃないか」ってなると、阿部さんが「これで終わりじゃねえよな」って言って、僕らが頭を抱えることが何度もありました。毎作品そうやって鍛えられてきたので、阿部さんの方を向いて作っていたら、このぐらいになりました。ものすごく最強の味方でもり、最強の敵でもありました。阿部さんの力がなければここまで成しえなかったと思います。

マスコミ6

阿部さんのおかげは大きいですか?

山崎監督

でかいですね。蓄積があってのことですし、阿部さんにはずいぶん悩まされましたからね(笑)。「本当にめんどくせえな」と思いながらやっていたことが、一つ一つ筋肉になっていたんだと改めて思いますね。作っている中盤の時は、阿部さんを倒すことしか考えていないですよ(笑)。阿部さんに「良いじゃんかよ」って言わせることだけを考えている時期が毎回あるんです。阿部さんを乗り越えた時にはお客さんがみんな「すごく良い」と言ってくれるので、一つの指標になってくれていました。だから、阿部さんなしで、これから作品を作っていくことが、今ちょっと不安なんですよね。あんなにうるさいことを言ってくれる人はいないと思っているんで…。でも、今後は野島が一番うるさいやつになるんじゃないかと思っています(笑)。

野島さん

阿部さんは本当に力があるけれど、僕なんて、ただちょっと言っているだけじゃないですか(笑)。

渋谷さん

ちょっとじゃないよね(笑)。

山崎監督

そういうのが効くんだよ、意外と(笑)。一回は意見を退けたりするんですが、「いや、そういうんじゃないから」って言うんですよ。で、夜寝た時に「うわ、野島に言われちゃったよ」っていうのが後でじわじわ効いてきて、翌日直したりするんですよね。新たな阿部さんですよね(笑)。

【マスコミ7質問】

最後の質問ということなので、山崎監督にベタな質問をしたいと思います。8ミリで、SF映画を作っていた中学生の自分に「ゴジラでオスカー取ったぜ」と言ったらどう答えると思います?

山崎監督

どうでしょうね…。
あの頃の僕は、くそ生意気で何でもできると思っていたはずなんです。さすがに「ゴジラを撮ったよ」までは信じる可能性はありますが、「オスカーを取ったんだよ」って言ったら、たぶん「あ、そうっすか」って、頭のおかしいおじさんが来たと思って退けられると思います(笑)。
オスカーを取りたいと思ってずっとやってきたわけではないんですよね。いかに中学生の頃の気持ちをずっと忘れずに、あの時作りたかったものにどれだけ近づけられるかということをずっとやり続けてきた部分があります。友だちと一緒に「スター・ウォーズ」を観て、映画っていうものにメロメロになった中学生の自分には、今はものすごく感謝していますね。あの時燃え上がった炎をどうやって消さないかっていう気持ちで、今までやってきているんで…。くそ生意気な中学生に感謝しなきゃいけないと思っています。

■フォトセッション

MC

ここで、何とこの方が急遽お祝いに駆けつけてくださいました。本作で大石典子を演じられました浜辺美波さんです。

■浜辺美波さんが登壇し、山崎監督へ花束を贈呈。

MC

浜辺さんより一言お祝いの言葉を頂戴できればと思います。

浜辺さん

本当におめでとうございます。私も授賞式を拝見していました。選ばれた時はびっくりして、皆さんが喜んでいる表情と監督の素晴らしいスピーチが本当に…。

山崎監督

うるさいわ! 本当にもう…。(会場:笑)

浜辺さん

壇上で皆さんが一匹ずつゴジラを持っていたのに、ゴジラチームのいつもの温かさをすごく感じて、本当に感動いたしました。本当におめでとうございます。

山崎監督

ありがとうございます。(会場:拍手)

MC

サプライズで浜辺さんに来ていただきました。

山崎監督

びっくりしました。

浜辺さん

え? 想像していなかったですか?

山崎監督

想像はしていなかった。

浜辺さん

あの、質問が一つだけあるんですが、この、金色のゴジラ像を持っていたじゃないですか。途中から蝶ネクタイをつけていましたが、あれはどなたの…。

山崎監督

僕の友だちが作ってくれたやつです。

浜辺さん

えー!

山崎監督

作って送ってくれたんだけれど、どこかで落ちちゃったんだよね。

浜辺さん

え! ウソ!

山崎監督

両面テープで張り付けてあっただけだから、今はないんですよ。でも、めちゃくちゃみんなに喜ばれましたよ。

浜辺さん

あれ、すごくかわいかった。

山崎監督

でも、どこかに入っているかもしれないな…。

浜辺さん

そうなんですね。あれがすごくかわいらしくて良かったです。

MC

浜辺さん、ちょっとオスカー像を持たせてもらったんですよね?

浜辺さん

はい。

MC

持ってみた感じはいかがでしたか?

浜辺さん

思っていたよりすっごく重たいですね! 皆さん軽々しく……あ! 間違えた(笑)。

山崎監督

言葉の使い方がおかしい、おかしい。

浜辺さん

皆さんが軽々と持っているから…(笑)。

山崎監督

もう重たい。この状態(花束を抱えながらオスカー像を持っている)だと本当に重たい。

MC

浜辺さん、今持ってみたらいかがですか?

浜辺さん

でも、落としちゃいそうで…。

■山崎監督が浜辺さんにオスカー像を渡す。

浜辺さん

(重さに)これ、よく片手で持てますね? でも、怖いからもう良いです。

■浜辺さんが山崎監督にオスカー像を返す。

山崎監督

確かにね、ここで割れたらなかなかの大惨事だよね。

浜辺さん

それは…もう無理です。
でも、すごい…。生でオスカー像を見られる日が来るとは思っていなかったです。(山崎監督の足元を見て)あ、今日は(ゴジラのデザインの靴を)履いていないんですね。

MC

東京国際映画祭の時は浜辺さんも履いていましたよね。

浜辺さん

はい。hazama(ゴジラのデザインの靴を制作したブランド)さんの靴を履きました。今回は、皆さんお揃いで履いていたのがかわいかったです。

MC

特注で作ってもらったんですよ。

山崎監督

大至急で作っていただきました。

浜辺さん

そうだったんですね。お揃いの靴で、皆さんでゴジラを持っているのが良かったです(笑)。

MC

改めて、浜辺さん、オスカーを取った「ゴジラ」にご出演されていたわけですが、お気持ちはいかがですか?

浜辺さん

やっぱりうれしいですね。
私はただの演者で、現場にトコトコと行っていただけなので…。撮影したものを皆さんが、本当にすばらしいVFXでゴジラを実際に存在するように作ってくださいました。そんな作品に少しでも携われたことが幸せです。
また劇場にもたくさん人が入っているらしいので、また観に行きたいと思いました。

■フォトセッション

MC

せっかくなので、浜辺さんには金のゴジラを持っていただいて…。

浜辺さん

(金のゴジラを持って)軽いっ!

■途中、オスカー像が重くて腕を休める場面もありました。

MC

最後に山崎監督から本作をご覧いただいた多くの方々に向けてメッセージをいただければと思います。

山崎監督

あまりにもうまく行き過ぎているので、ちょっと怖いですが、スタッフ・キャストの皆さんの努力が、ここまでゴジラというものを押し上げてくれたんだと思います。やっぱりゴジラだからこの場所に来られたっていう思いもすごくあります。
ここを到達点にしないで、ここを出発点として、さらにいろいろなことに挑戦していきたいと思っていますので、皆さんよろしくお願いします。今日はありがとうございました。