第4回「ゴジラ-1.0」公開記念「山崎貴セレクション ゴジラ上映会」
- イベント
第4回「ゴジラ-1.0」公開記念「山崎貴セレクション ゴジラ上映会」
「ゴジラ」の70周年記念作品「ゴジラ-1.0」の公開を記念して行われた「山崎貴セレクション ゴジラ上映会」の最終回が、10月27日に池袋HUMAXシネマズで開催されました。全四回にわたり山崎監督が自ら厳選した「ゴジラ」過去作を上映し、各作品にゆかりのある人物を招いて、山崎監督とトークショーを実施した同イベント。最終回となったこの日は、大ヒットを記録した「シン・ゴジラ」のモノクロ版、その名も「シン・ゴジラ:オルソ」が初上映され、さらにフィナーレを飾るゲストとして「シン・ゴジラ」の脚本・編集・総監督を務め、今回のモノクロ版企画の提案者でもある庵野秀明監督が登壇しました。二人が「ゴジラ愛」あふれるトークを繰り広げ、何度も会場の爆笑をさらったイベントの模様を詳しくレポートします!
庵野秀明監督
山崎貴監督
■イベントのスタート時間になり、まずは庵野秀明監督が入場。大きな拍手を浴びました。
庵野監督(スペシャルゲストでありつつMCを兼任)
皆さんこんばんは。本日は第四回「ゴジラ-1.0」公開記念「山崎貴セレクション ゴジラ上映会」にお越しいただき、誠にありがとうございます。本日のMCを務めます、庵野秀明と申します。(会場:笑&拍手)
まあ、しばらくは台本を読みます。(会場:笑) (台本を読みながら)2016年に私が脚本、総監督を務めた「シン・ゴジラ」の公開から七年。ついに11月3日、あと一週間で「ゴジラ-1.0」が公開されます。本日は「ゴジラ-1.0」…(台本のセリフ量に困惑しながら)多いな。(会場:笑) 「ゴジラ-1.0」を監督した山崎貴監督が選ぶ過去のゴジラ作品の中から、「シン・ゴジラ:オルソ」の上映を行います。上映に先駆けて、山崎監督と私から「ゴジラ」への思いをじっくりお話できればと思っております。
また本日のイベントは、全国六カ所の劇場で生中継されております。
それでは、「ゴジラ-1.0」の監督、山崎くん、どうぞ。
■庵野監督から呼び込まれ山崎監督がステージに登場。大きな拍手を浴びました。
庵野監督
じゃあ、挨拶を。(会場:笑)
山崎監督
今日はゴジラ上映会の第四回、最終回となります。この上映会の最後に、ついに庵野さんを迎えられて、非常に楽しみにして来ました。今日はよろしくお願いします。(会場:拍手)
庵野監督
続きまして、2016年公開の「シン・ゴジラ」の脚本、総監督を務めました、私、庵野秀明です。本日はよろしくお願いします。(会場:拍手)
(台本の続きについてスタッフに確認しながら)これも僕が読んで良いの? (会場:笑)
じゃあ、後は台本にクロストークと書いてあるので、クロスしてください。
山崎監督
クロスで(笑)。
庵野監督
多分、言っておいた方が良いと思うんですが、何で今日の上映に「シン・ゴジラ」を選んだの?
山崎監督
「シン・ゴジラ」が好きなんですよ。
庵野監督
ありがとうございます。
山崎監督
「シン・ゴジラ」の関係者しかいない完成披露試写がありましたよね。
庵野監督
新宿のやつですね。
山崎監督
そうそう。「観ますか?」と言われたので、「観たいです」と試写会に行ったら、割と良い席に案内されました。中野(昭慶)さんとか周りが偉い人ばかりで…。
庵野監督
ゴジラ界の…。
山崎監督
結構な人たちがいる中に、全然関係ないのに(良い席に)座らされて「どうしよう」と思っていたんです。
庵野監督
まあ、VIPだからしょうがない。
山崎監督
いやいや(苦笑)。そんな中で「どんな作品が出てくるんだろう」と思って観ていたら、「シン・ゴジラ」が、まあ面白かった。
庵野監督
ありがとうございます。
山崎監督
試写会場を出る時に庵野さんがいたので、「面白かったですよ」とお話したんです。(「シン・ゴジラ」のVFXに参加していた映像制作プロダクション)「白組」は僕が所属している会社なんですが、「白組」の人たちが結構頑張ってやっていたので、「白組が良い仕事をしていたので、誇らしかったです」と言ったら、庵野さんは「だいぶ鍛えましたから」と言っていましたね。(会場:笑)
庵野監督
かなり鍛えました(笑)。
山崎監督
うちの「白組」という会社は、三茶(三軒茶屋)チームと、調布チームに分かれているんです。ちょっとここは、軽いライバル関係にあるんですよ。庵野さんが「シン・ゴジラ」を作るということで、樋口さんや佐藤(敦紀)さん、尾上(克郎)さんなど名だたる人たちがみんな参加するというから、「(『シン・ゴジラ』の制作に参加した)三茶チームはどうなっちゃうんだろう」と思って、見に行ったんです。そうしたらみんな、ボロボロに疲弊していました。(会場:笑)
庵野監督
(ニンマリとした笑顔で)だいぶ鍛えましたからね。
山崎監督
だいぶ鍛えられているという感じがあって、何だかかわいそうになっちゃって(笑)、近くのデパ地下みたいなところで、全員分のケーキを買って「とりあえず甘いもの食え!」って差し入れをしました。
庵野監督
いやいや、ありがとうございます。
山崎監督
そうやって僕がケーキを配るぐらいだったんです。でも、全部終わった後に庵野さんが「今日でチェック全部終わりです」と言って、みんなが「やっと、庵野さん終わりだよ!」となっている中、庵野さんが「本当にありがとうございました!」とみんなに言ったらしいんですよ。それを見たらみんなが急にキュンとなって、「庵野さん、良い人かもしれない」ってなっていました。(会場:笑)
庵野監督
基本、良い人なんですよ。(会場:笑)
山崎監督
知っています(笑)。知ってはいるんだけれど、追い込みがすさまじかったので…。
庵野監督
あの時の合言葉は、「とにかく山崎や調布チームが、泣いて悔しがるようなやつにしてくれ」でした。
山崎監督
ああ…。(大きくうなずきながら)はい、はい。
庵野監督
「三茶チームの実力を見せてくれ」と、ちょっとライバル関係を利用させていただきました(笑)。
山崎監督
いやいやいや(笑)。
庵野監督
それでやる気を出してくれたんです。
山崎監督
本当ですか? どうして社内でそんなことになっているんだ(笑)。
「シン・ゴジラ」は本当に素晴らしかったんですよ。「本当にすごいな。三茶のチームをよくここまで奮い立たせて、すごいものを作ったな」と思っていたら、東宝さんから「そろそろ、次の『ゴジラ』どうですか」と提案されました。「『シン・ゴジラ』の後かよ!」と思いましたよ(苦笑)。
庵野監督
いやあ、よくやったよね。(会場:爆笑) 最初は結構ビビっていたけれど、「ああ、やっぱりやるんだ」と思った。
山崎監督
「ゴジラ-1.0」の撮影の途中で庵野さんが一度、陣中見舞いに来てくれたんですよ。その時に、「いやあ、本当によくやるよね」と言われました(笑)。
庵野監督
本当によくやるよね(笑)。
山崎監督
だって、他に誰もやらないじゃないですか。「シン・ゴジラ」の後にはもう、ぺんぺん草も生えないから、誰もやらないですよ。相当なバカヤロウじゃないとやらないと思ったので…。
庵野監督
(「ゴジラ-1.0」は)良くできていたので、本当に良かったです。これで「ゴジラ」は続くから大丈夫だよ。
山崎監督
今のは「ゴジラ-1.0」の話ですか?
庵野監督
(うなずきながら)そうそう、「-1.0」の話。
山崎監督
ちゃんと「ゴジラ-1.0」の話だと言ってから話さないと(会場:笑)。「庵野秀明も認めた!」という感じの記事にしてもらわないといけないので(笑)。(感想が気になって仕方ないといった感じで)そもそもどうなんですか?
庵野監督
いろいろね、ツッコミどころは満載なんですよ。(会場:笑)
山崎監督
うるさいわ!(会場:爆笑&拍手)
庵野監督
それは全部横に置いておいて、面白いです。特に皆さん、銀座! 銀座を観てください。銀座は素晴らしいです。あと詳しくは言えないですが、後半に僕がすごく好きなところがあって、あれはキュンとくる。
山崎監督
どこですか。僕にだけ分かるように言ってください。
庵野監督
ここで言うと、ネタバレになるので、後で言う。
山崎監督
そうですよね。まだ観ていない人たちには伝えてはいけないですね。
庵野監督
今日僕がここにいるのは、山崎くんをとにかく応援しなきゃいけないから。多分リクープ(費用の回収)は大丈夫だと思うけれど、リクープして大儲けしてくれないと次につながらないからね。
山崎監督
そうですよね。本丸ですから。「ゴジラ」作品はちゃんとヒットしないと。
庵野監督
国産のやつは、特にね。
山崎監督
だからプレッシャーが…。しかも「シン・ゴジラ」の後でも、ヒットしなきゃいけない。
庵野監督
いや、これは大丈夫だと思う。
山崎監督
やっぱり、「シン・ゴジラ」が“バカヒット”したじゃないですか。
庵野監督
まあ“バカヒット”かどうかというのは、分からないけれど、リクープは恐らく大丈夫だと思います。
山崎監督
東宝の人たちの期待度からして、ちょっとのリクープでは許してくれない感じになっているんですよ。
庵野監督
いや大丈夫。上からちゃんと聞いているから。(会場:笑)
山崎監督
この前、(2014年の映画「GODZILLA ゴジラ」で監督を務めた)ギャレス(・エドワーズ)監督にも「ゴジラ-1.0」を観てもらったんですよ。
庵野監督
良いねえ。
山崎監督
ギャレス監督は、今「ザ・クリエイター(/創造者)」という映画をやっています。
庵野監督
楽しみですね。
山崎監督
もう上映しています(笑)。
庵野監督
もうやっているの? いやあ、もう世の中から遅れているので…(苦笑)。
山崎監督
朝四時に着いて、ホテルで仮眠した後に、日本で最初にやったのが「ゴジラ-1.0」を観るということだったみたいです。観終わった時に、ひれ伏して出て来て、「1億ドルはかかっていないと思いますが、どのくらいの予算ですか」と言われました。「何を言っているんだ、この人」と思った(笑)。「それよりは下です」と答えました。やっぱりこれからは、予算も上げていかないといけないですね。
庵野監督
向こうに比べると何十分の一ですからね。
山崎監督
十分の一ぐらい、二十分の一ぐらいですかね。
庵野監督
二十数分の一ですよね。(会場:笑)
山崎監督
大変ですよね。
庵野監督
それで同じぐらい稼がなきゃいけない。国産のゴジラは、国外のやつよりも稼がないとね。
山崎監督
「シン・ゴジラ」は稼いじゃったから良いじゃないですか。本当に「シン・ゴジラ」は素晴らしかったですよ。この前「オルソ」を観ましたが、いやあ、皆さんはこれから観ることになりますが、ハードルを上げておきますね。怖いです。モノクロになったら、夜とかすごく怖いですよ。
庵野監督
モノクロの良さは、「色がない」ので、明暗だけでやっているから、夜は本当に良い。
山崎監督
逆に、初代にすごく画が似てきて、ゴジラのエッジだけが見えているんです。だから、暗い中でたたずんでいる姿とか本当に怖いので、「これは良いな」と思いました。
庵野監督
「ゴジラ-1.0」もモノクロでやれば、二重に儲かるよ。(会場:笑&拍手) モノクロ、イケると思う。
山崎監督
さらに言うと、昭和が舞台なのでモノクロがめっちゃ似合いますからね。
庵野監督
そっちの方が、モノクロの“シンクロ率”が高い。
山崎監督
確かに(笑)。庵野秀明から“シンクロ率”という言葉をいただきました。(会場:笑)
庵野秀明
ありがとうございます。
山崎監督
良いですよね。そういう、ちょっと言うと面白い言葉がいっぱいあって。(会場:笑)
庵野監督
そういうのをミームって言うらしいですよ。
「シン・ゴジラ:オルソ」は、元々は上田くんというスタッフと話していて、「モノクロも良いね」と言っていたら、上田くんが面白半分でモノクロのバージョンをパソコンで作って、見せてくれたんです。これがね、自分でも面白かったんですよ。「全然また別の面白さになるんだ」と思いました。そしたら、今回ゴジラ上映会の話が来て、「山崎くんが『シン・ゴジラ』を選んだので、上映します」と言うから、「じゃあ、モノクロにしてみたらどうですか」と東宝さんに言ったんです。どうせやるんだったら、モノクロにして上映した方が話題性もあるし、山崎くんの助けにもなるし。
山崎監督
「モノクロにするんだったら、やっても良いけど」という話じゃないんですね。(会場:笑)
庵野監督
東宝さんにそんなこと言えないよ! 天下の東宝さんだよ。(会場:笑) 僕なんかもう、ピューッと吹けば飛ぶようなものなんだから。(会場:笑) そんなことおいそれと言えないよ。おずおずと「ど、どうですか…?」という感じで出したら、できることになりました。僕は、Blu-rayに焼いて、それを流せば良いんじゃないですかと言ったら、もうDCP(デジタルシネマパッケージ。デジタルシネマで映画を上映する際の標準的な配信形式)になっちゃいました。東京現像所(11月30日に事業が終了する予定)の最後の仕事になっていると思います。ちょっと切ないけれど、「これが最後の仕事」というのは縁があってありがたかったと思っています。東宝さんの粋な計らいです。画の方は、樋口と尾上さんがしっかり見てくれて、本当に全然違うものになっていると思いますので、お楽しみいただければと思います。
山崎監督
これがうまくいけば、流行っちゃうかもしれないですね。
庵野監督
「ゴジラ-1.0」もモノクロにして大丈夫だよ。本当に儲けられるよ。(会場:笑) もう一回作品を観に行ってくれるから。
山崎監督
今回はすごいんですよ。IMAXとかいろいろラージ・フォーマットで上映をするんです。
庵野監督
元々は4Kなの?
山崎監督
2Kですね。最近は、AIでバージョンアップするからものすごくきれいで、全然遜色がないなという感じです。ScreenXの上映までやるんですよ。
庵野監督
すごいね。
山崎監督
ScreenXで椅子が動くというやつ(4DX SCREEN/4DXとScreenXが融合した体感型シアター)があるんですよ。この前それで観たら、もう完全にゴジラ・ザ・ライド(西武ゆうえんちのアトラクション)でしたね。(会場:笑)
庵野監督
それで観る銀座のシーンは楽しいんじゃない?
山崎監督
ドラマのシーンになるとしばらく静かなんですよ。ただ、スペクタクルなシーンになると、動くし、もう部屋中が大騒ぎになっています。
庵野監督
ドラマ部分長いからね。もっと切ったら良かったのに。(会場:笑)
山崎監督
そういうことを言うと、記事に書かれちゃうから(苦笑)。今回は、「庵野秀明、激賞」って載せてもらわないといけないんだから。(会場:笑)
庵野監督
いやもう、褒めてばかりなんで、良いんじゃない?
山崎監督
(褒め言葉をおねだりするように)もうちょいください。(会場:笑)
庵野監督
でも、あまり言うと、やっぱりネタバレになってしまうので…。
山崎監督
そうですよね。あそことか、多分好きだろうなと思っていたところもあるんですよ。
庵野監督
いや、僕の好みは、山崎くんには伝わらないと思う。ものすごく狭いところだから。「そこなの!?」と思うような意外なところがすごく好きです。
山崎監督
それを聞くのが楽しみだな。僕、軍艦とか作っている時に「ちょっと庵野さん、悔しがるんじゃないかな」と思ったんですよ。
庵野監督
いやいや、その辺はね、ぬるい。(会場:大爆笑&拍手)
でも、本作は山崎くんが今までやってきた、いろいろな作品の集大成ですよ。これは素晴らしいと思いました。
山崎監督
ありがとうございます。
庵野監督
今まで培った技術を無駄なく全部持ってきていて、上手だなと思いました。このために今までやってきた…。
山崎監督
(庵野監督の言葉を引き継いで)やってきたかのような!
庵野監督
そう言っても過言ではないぐらい、今までに培った技術が全部ここに集約されている。その技術力は素晴らしいです。
山崎監督
結構「シン・ゴジラ」で良い仕事をした人を、調布に連れて来ちゃいました。庵野さんに鍛えられた人に、今回、お願いをするという。
庵野監督
ちゃんとバトン渡しました。本当にVFXは良かったです。
そういえば、何でいつも「VFX」なの? 肩書きにいつも「VFX」って必ず入れているよね。特撮とか、特技とかではなく。
山崎監督
だって僕らはVFXだから、ビジュアル・エフェクツじゃないですか。特撮はインカメラで終わる感じがする。
庵野監督
やっぱり洋画の方が好きなんだ。
山崎監督
洋画が好き(笑)。やっぱり「スター・ウォーズ」「未知との遭遇」なんですよ。
庵野監督
(その点では二人の間に壁があるというジェスチャーをしながら)そこがね、僕は特撮なのでもう完全に違うんだよね。(会場:笑)
山崎監督
分かります。よく存じ上げております(笑)。でも「シン・ゴジラ」はCGじゃ?
庵野監督
でも、あれで目指したのは、特撮。ゴジラに動きがあったら全部ナシにして、CGを使って特撮の映像を再現するということ。
山崎監督
ドラゴンとかを動かす天才的なアニメーターが「庵野さんのゴジラなら」と言って、休暇を取ってわざわざその時期だけ日本に来てくれたんですよ。
庵野監督
やっぱり着ぐるみを再現したかった。首元のこの辺の動きとか、再現とかすごく良かったです。着ぐるみの動きをきれいに再現してくれました。
山崎監督
あの天才が、着ぐるみの動きを再現していたんですね。贅沢だなあ。
庵野監督
すごい贅沢をさせていただきました。彼が表情をつけようとしていたところを「着ぐるみなんで」と止めました。(会場:笑) 「今回はサイボット(目や口元、鼻を動かすといった細かい仕草用の機械仕掛けのもの)はナシなので、この辺は目しか動きません」と言いました。
山崎監督
サイボットは通じました?
庵野監督
分からないです。あまり向こう(ハリウッド)のやつみたいに筋肉が動いて…っていうのはナシにしました。それをやり始めると、もう時間もお金もなかったから、とにかくアニメで言うとリピート(「タイムシート」というセリフのタイミング、カメラワークや特殊効果の指定等が書き込んである指示書で繰り返しの指示をすること)でほとんど済むようにしないと、とても間に合わなかったんです。カット数もCGIを400に抑えてくれと言われたし。
山崎監督
結構、いろいろと言われていたんですね。スーツを着るなとか…、割と素直に聞くわけですね。
庵野監督
聞きますよ。
山崎監督
偉いですね。
庵野監督
(話を)聞かないイメージが、(庵野監督を密着した)ドキュメンタリーとかであるみたいだけどね。(会場:爆笑&拍手) あれはそういうところだけを切り取るので、実際はほとんど聞いているんですよ。
山崎監督
聞いた話によると、もうちょっと柔らかいドキュメンタリーだったものを、庵野さんたちが「もっと過激にしてくれ」と言ったとか。
庵野監督
いえいえ、違います。そもそも映像を僕は観ていないもん。
山崎監督
都市伝説がいろいろと広がるんですね。だから、みんなが構えているところで、「ありがとうございました」とか言うと、「あ、良い人なんだな」ってなっちゃうんですね。
庵野監督
いや、基本良い人だと思う。
山崎監督
ほら、不良がさ、雨の日に犬に傘を差していると「あの人、なんて良い人なんだ!」ってなるみたいな。(会場:笑)
庵野監督
僕は不良じゃないですよ(笑)。
山崎監督
もうそんなもんじゃないですか。(会場:笑) 暴れん坊のイメージがある人から「ありがとうございました」とか言われたら、キュンとするっていう。
庵野監督
デタラメを言わないでほしいなあ。(山崎監督&会場:爆笑) 全然違いますよ。山崎くんの脳内イメージとは全然違うよ。山崎くんだって、現場に行くと「うーん」って顔をしていて、「怖いなあ」と思うもん。(会場:笑)
山崎監督
またそういうことを言って。(会場:笑) 撮影の途中に来てくれた時に、ちょっと会話が弾まない感じだったので、「『シン・ウルトラマン』に渡しているスタッフが、なかなか帰って来てくれないんですよ。早く終わらせてくださいよ」と言ったんですよ。そうしたら庵野さんが当時の進捗状況に結構マジ怒りしていましたよね。本当ですよね、すみませんでした。(会場:笑)
庵野監督
まったくですよね。
山崎監督
「白組」を代表して、申し訳ありませんでした。
庵野監督
いやいや、山崎くんに謝ってほしいわけじゃない。(会場:笑) 終わった話です。まあ、間に合ったので良かったです。
山崎監督
間に合って良かったです。
そういえば、庵野さんが「ゴジラ-1.0」の現場に来た時は、神木(隆之介)くんや浜辺(美波)さんが、はしゃいじゃって本当に面白かったんですよ。
庵野監督
はしゃいでいましたね。
山崎監督
「珍獣が来た」って。(会場:笑)
庵野監督
またそうやって嘘を言う(笑)。
山崎監督
「レアポケモンが来た!」って、二人ではしゃいでいました。面白かったです。
庵野監督
まあ、人気者なんでね。(会場:笑)
山崎監督
浜辺さんからは「あんちゃん」って呼ばれているらしいですよ。僕は「たかすぃー」って呼ばれているらしいです。
庵野監督
まあ、良いんじゃないですか(笑)。
山崎監督
あの日はちょっと面白かったです。
庵野監督
(撮影現場を)見ていて「何でこっちから撮っているんだろう」って、そればっかりずっと気になっていました。
山崎監督
うるさいわ! (会場:笑)
庵野監督
「どうせ切るのに、ここを何度もやったってしょうがないじゃん」と、そういう風に見ていました。こちら側から撮れば、40分くらいは巻いて撮影が終わるのに。だってどうせ切るでしょう?
山崎監督
そんなこと言われたくないですよ! (ドキュメンタリーで、庵野監督が何度もテイクを繰り返す姿が映し出されていたこともあり)あれだけたくさんの素材を撮って、編集でもう…。(会場:爆笑)
庵野監督
うちは安いカメラでいっぱい撮っているだけですよ。大きいカメラで回している量は一緒ですよ。うちはiPhoneとかそういうのでも撮るから素材がいっぱいになっているだけで、テイク数とかは多分そっちの方が多いよ。(反撃するように熱弁する庵野監督に会場:爆笑)
山崎監督
いやいやいや、絶対そっちの方が多いと思う。(二人の攻防戦に会場:爆笑)
庵野監督
ちなみにアクションは、アクション監督が納得するまでやって、「監督どうですか」と聞かれて、「オッケーです」と言う役でした。
山崎監督
それにしてはドキュメンタリーではいろいろと言っていたじゃないですか。(会場:笑)
庵野監督
いやいや、言っていない。
山崎監督
切り取り?
庵野監督
切り取り。
山崎監督
本当に良くないですよね。切り取られちゃうのは。
庵野監督
(カンペに気づいて)あれ、もうフォトセッションだって。
山崎監督
これからじゃないですか。(会場:笑) 僕がこれから庵野秀明の暗部を炙り出そうとしているのに。
庵野監督
明るいところしかないって! 山崎くんの方が本当は暗いんだから。(会場:笑)
山崎監督
誰もそんなこと思っていないですよ。
庵野監督
いえいえ、半分ぐらいは思っていると思う。今日のスーツの色で分かるでしょう。ちょっとインナーの白で誤魔化している(笑)。
■スタート時は混乱していたフォトセッションも、無事に終了。締めの挨拶に入りました。
庵野監督
ありがとうございました。以上を持ちまして、第四回「ゴジラ-1.0」公開記念「山崎貴セレクション ゴジラ上映会」を終了いたします。中継先の皆さんも、どうもありがとうございました。「ゴジラ-1.0」はあと一週間後の11月3日、初代ゴジラの公開日に公開となります。この後は「シン・ゴジラ:オルソ」の上映が始まりますので、準備が整うまで今しばらくお待ちください。本日はどうもありがとうございました。(会場:拍手)
山崎監督
ありがとうございました。(会場:拍手)